クアルタラロに科された安全装備違反ペナルティの理由「失格にすべきだった」とストーナー/MotoGP第7戦カタルーニャGP

 6月6日、スペインのカタロニア・サーキットで開催されたMotoGP第7戦カタルーニャGP MotoGPクラスの決勝レースで、ファビオ・クアルタラロ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)はレーシングスーツを正しく着用せず、必須のチェスト(胸部)プロテクターを装着しなかったことからFIM MotoGPスチュワードパネルから3秒加算のペナルティが科された。レース後には「失格にすべきだ」とライダーまでもが議論を行っていたが、どのような理由でこのペナルティが科されたのだろうか。

 5戦連続でポールポジションスタートを決めたクアルタラロは、順位を入れ替えつつ12周目から2周はトップを奪うが、再度2番手にポジションダウンした。

グリッドに着くファビオ・クアルタラロ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)/2021年MotoGP第7戦カタルーニャGP
グリッドに着くファビオ・クアルタラロ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)/2021年MotoGP第7戦カタルーニャGP

 ラスト4ラップに入ると、クアルタラロが着用しているレーシングスーツのジッパーが開き、3コーナーでは胸部プロテクターを走行中に投げ捨てる様子が見られた。

 それによりクアルタラロのペースが落ち、残り3周には、1コーナーでヨハン・ザルコ(プラマック・レーシング)に交わされた際にアウト側のロングラップ・ペナルティゾーンを走ってコースに復帰。しかし、1-2コーナーのショートカットと判断され、3秒加算のペナルティが科された。

 クアルタラロは、トップから1.815秒差の3番手でフィニッシュしたが、ショートカットにより3秒が加算されて一時は4位となった。

 レース後にクアルタラロは「ジッパーが完全に開いていて、上げようとしたんだ。(風圧で)スカイダイビングのようだった。ストレートエンドのブレーキングが難しかったね」と状況を説明。また、チームが発行したプレスリリースでは「現時点ではまだ、何が起きたのかについて説明することができない。原因を解明中だ」とコメントした。

ツナギのジッパーを途中までしか上げずにレースに挑んだファビオ・クアルタラロ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)/2021年MotoGP第7戦カタルーニャGP
ツナギのジッパーを途中までしか上げずにレースに挑んだファビオ・クアルタラロ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)/2021年MotoGP第7戦カタルーニャGP

 ところが、レースから約4時間が経ったスペイン時間18時にクアルタラロがレーシングスーツを正しく着用せず、必須のチェストプロテクターを装着して走行しなかったことから、レースリザルトに3秒を加算するペナルティが科された。4位となった4.815秒差からさらに3秒が加算され、7.815秒差の6位と2度も順位が降格している。

 では、どのような理由でレーシングギアが正しく着用されていなかったことによるペナルティが科されたのだろうか。FIM世界選手権ロードレースグランプリ技術規則の2.4.5.2にある『ライダーの安全装備』の1には以下のように記されている。

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2.4.5.2ライダーの安全装備

1.各契約ライダーは、各大会最低2セットの如何なる損傷も受けていない安全装備を準備して臨まなければならない。
準備しなければならない安全装備とは以下をいう。
・ヘルメット
・レザースーツ(ワンピース)
・グローブ
・ブーツ
・バックプロテクター
・チェスト(胸部)プロテクター

トラック上で活動する際は、常に装備を装着し、確実に留めていなければならない。

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 レース中にトラック上を走り、レザースーツ、チェストプロテクターを確実に留めていなかったクアルタラロは、この安全装備のレギュレーションを違反したことになる。そして、レース後にはドゥカティとスズキがスチュワードに対して抗議している。

 また、この件について2007年、2011年MotoGP王者のケーシー・ストーナーは「ファビオが意図的にジッパーを下したかどうかに関わらず、あれは黒旗(失格)にすべきだったと思う。このレベルでは、レザー(スーツ)が開いた状態で(速度が)350キロ以上のレースをすることは許されない」とTwitterで言及。元MotoGPライダーでSBK王者のベン・スピーズも「クラッシュを防ぎタイムロスした(ショートカットに)ペナルティを与え、レザー(スーツ)の件で黒旗を与えないのか?」とこの件に疑問を呈した。

2011年シーズンのMotoGPはケーシー・ストーナー(ホンダ)がチャンピオンを獲得
2011年シーズンのMotoGPはケーシー・ストーナー(ホンダ)がチャンピオンを獲得

 では、なぜレースコントロールがレースを続行させ、決勝後にわずか3秒のペナルティで済ませたのだろうか。カタルーニャは高速サーキットではないが、340km/h以上スピードが出るサーキットだ。コースサイドはウォールが近い場所も存在するため、もし転倒していれば大事故になっていたに違いない。

 レースコントロールはレース中に起きたインシデントに対してできるだけ早くフラッグ等でライダーに指示を出す。今回の一件は、オレンジディスク(オレンジボール)フラッグ、またはブラックフラッグ(黒旗)が掲示されてもおかしくはなかったが、まずふたつの旗の意味をおさらいする。

 オレンジディスクフラッグは掲示後に、ライダーをコースから退去させることは可能だが、このフラッグは「“車両”にマシントラブルが発生しており、自身または他のライダーに危険を及ぼす可能性がある」場合に使用されるため、車両ではなくレーシングスーツの装着義務違反では振ることができなかったのだろう。

 また、失格にあたるブラックフラッグは「提示された周回の終了時点でピットに戻らねばならない。また、ペナルティによりこのフラッグが提示された場合、再スタートすることはできない」とある。今回の件は、ジッパーを上げて再スタートすれば済むため、再スタートできないこの旗を振る判断はできなかった可能性がある。

ファビオ・クアルタラロ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)/2021年MotoGP第7戦カタルーニャGP
ファビオ・クアルタラロ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)/2021年MotoGP第7戦カタルーニャGP

 ライダーはレースがスタートすればいち早くゴールすることを目指すもの。もし、クアルタラロがコースサイドにマシンを止めてジッパーを上げていれば安全面では問題なかっただろうが、表彰台争いのなか指示なくレースを放棄するはずがない。レース後にペナルティが科されたため、もちろん責任はチームやライダーにあることになるが、ライダーへの批判はお門違いだ。

 本来はレース中に対処されることが一番良い対応だが、今回はそうはいかなかった。そのためレース後の対応となり3秒のペナルティを科したのだろう。

 レーシングスーツを正しく着用されていないという前例のない一件となった今回のレース。原因の究明、レギュレーションの改訂やペナルティの見直し、同様の件が今後起きた際の判断やレースコントロールの対応がいち早く公示されることを願う。