【レースフォーカス】予選でM.マルケスが採った“後追い作戦”が物語る現状/MotoGP第6戦イタリアGP

 MotoGP第6戦イタリアGPの予選Q1で、マルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)が採った“作戦”は、マーベリック・ビニャーレス(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)の後ろについて走ることだった。そうしてマルケスはQ2への進出を果たした。そこから見えるマルケスの現状を追っていこう。
 
 イタリアGPの予選では、マルケスとビニャーレスがQ1に挑むことになった。それまでのタイムから、順当に考えればビニャーレスのQ2進出はほぼ間違いないだろうと思われたのだが。
 
 マルケスはビニャーレスの背後について走行した。マルケスが自分の後ろについていると気付いたビニャーレスは、ピットレーンに入り、何度も振り返ってゼスチャーを送るが、結局のところマルケスに後追いを諦めさせることはできなかった。そうして、Q1の終盤にマルケスはビニャーレスの後ろで1番手のタイムを記録してQ2進出を決め、ビニャーレスは3番手に終わりQ1を突破できず、13番グリッドが確定したのだった。
 
 マルケスとしては、自分の状態、状況のなかでできうるベストな“作戦”がビニャーレスについて走ることだった、と言う。
 
「今朝、僕の調子は悪くなかったのだけど、午後にはどういうわけか体の状態、バイクなどすべての感じがあまりよくなかった。チームに言ったんだ。『バイクを感じていない。何も感じない。だから、誰かの後ろにつく必要がある』ってね。リストをチェックしたら、最速のライダーはビニャーレスだった。だから彼の後ろについた。それしか方法がなかったんだ」

 しかし、予選後には「(ビニャーレスに)謝ったよ。あの行為はフェアではないとわかっていたから。僕が彼に言ったのは、怒るのは当然だ、ということ」とマルケス。「過去に僕にもそういうことがあったから、マーベリックの気持ちはわかる。だから謝った」
 
 一方のビニャーレスは予選後、「それについてのコメントは何もない。ただ、僕が速くなかった。それだけだ」とだけ語った。
 
 そしてマルケスは11番手から決勝レースをスタートし、2周目の3コーナーでブラッド・ビンダー(レッドブル・KTM・ファクトリーレーシング)と接触して転倒リタイアに終わった。レース後に「転倒したのが僕だけでよかった。僕のミスだった」と語っている。
 
 さて、いったん予選でのマルケスの行為に話を戻したい。あの“作戦”は、確かにフェアなやり方ではなかったかもしれないが、一方で、そうしなければならないマルケスの現状を表している、ともとらえられる。イタリアGPのセッションが始まる前日の木曜日、マルケスはこう明かしていた。
 
「ヘレス(スペインGP)の後、もう一度レース参戦をストップするか、ということをドクターと話して、よく考えた。でも、ドクターはMotoGPバイクに乗るレースの生活に復帰するのがいいと言ったんだ。(MotoGPとは)違うバイクに乗ることはできても、最終的にはレーサーに乗る必要があるんだ」

 そして、体の状態についても語っていた。マルケスが2020年のスペインGPで負ったけがは右上腕骨の骨折だが、今は状態が肩にもかかわっている。右肩は2019年11月に手術を受けた。神経にダメージがあったために、まだそれが完治していない箇所だった。
 
「今、まだ回復の最中だ。肩はものすごく悪いわけじゃない。確かに、正常に機能していないところはある。そして、レースウイークの間に、痛みが増えるのかを理解しようとしている。家でもそうだ。リラックスしているだけなのに、いつも痛みがある。でも、ドクターは腕を骨折したあとこれは通常のことだと言っていた。肩やひじに影響する、と。今回の場合、肩にそれがきているんだ。それが自分の走りを邪魔している。でも、この先にどう状況をよくするかを考えようとしている」

 こうした状態は、マルケスの走りに影響していた。5月25日に600ccのバイクを走らせ、自身がバイクに乗ったときのポジションを確認したという。
 
「MotoGPバイクでは、うまくポジションがとれない。ベストなポジションを理解するために、この(600ccの)バイクを選んだ。でも、今、僕はいいポジションで走れないってことがすぐにわかったよ。いい体勢で走ろうとすると、肩の痛みがひどくなるから」
 
 マルケスは初日を終えて「肩がより安定しているのは確かで、先月はもっと(動きに)制限があった」と100パーセントに向かっている途中であるとも語った。
 
「ただ今は、我慢すること。できる走りをする」

 ちなみに予選後には、肩だけではなく首といった肩まわりの筋肉にも痛みが出ていた、とも言う。現状として、右腕は筋力を含めて左腕と同じ状態ではなく、その負荷が肩やその周辺に出ているのだろう。
  
 昨年に復帰を急いだ結果、怪我を長引かせた教訓がある。マルケスは今、体調の範囲でできる最大の努力を尽くしながら、堅実に進んでいる。