スーパーGTドライバー勝手にお悩み相談ショッキング Vol.5 片岡龍也さん

 2021年も、ファンのために熱いレースを展開してくれるスーパーGTドライバーたち。SNS等でも散見されますが、所属するチームやメーカーによって差はあれど、多くのドライバーが“繋がり”をもっています。そんなGTドライバーたちの横の繋がりから、お悩みを聞くことでドライバーの知られざる“素の表情”を探りだす新企画をスタートしちゃいました! 今回はARTAの高木真一選手からのお悩みを、GOODSMILE RACING & Team UKYOの片岡龍也選手にぶつけました。

 しばしばSNS等でも見られる、気になる2ショット。「へえ、あのドライバーたち、仲良いんだ」とファンの皆さんも驚くこともあるのでは。そんなGTドライバーの繋がりをたどりつつ、ドライバーたちの“素”を探るリレートークのようなものができないか……? という企画が編集部内で出てきたのが2月。そこで、3月の岡山公式テストで第1回の取材を石浦宏明さんにお願いし、そこから阪口晴南さん新田守男さん、そして高木真一さんに繋がっています。

 高木真一さんの釣りの悩み……ではなく、FIA-F4に参戦する自チームからいかにトップカテゴリーに上がるドライバーを育てられるか……? という悩みに、片岡さんはどう答えてくれたのでしょうか。

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■高木真一さんのお悩みについて

──そんなこんなで、よろしくお願いします! この企画はザックリ言ってしまうと、『笑っていいとも』の『テレフォンショッキング』のように人が繋がっていく企画です。次のお友達に前の人の悩みを聞いてもらい、それを解決していきます。
片岡龍也さん(以下片岡さん):ほうほうほう。

──前回は高木真一さんだったのですが、高木さんの悩みが『FIA-F4で自分が手掛けるBionic Jack Racingの若手ドライバーたちを、どう育てていけば良いのか?』ということでした。特にスーパーGTとF4が併催で忙しいので、そのなかで片岡さんはF4のドライバーたちをどう見ているのか、どう上のカテゴリーに上げるかを聞いてほしいということでした。片岡さんはFIA-F4ではTGR-DCの主任講師を務めていますが、若手ドライバーたちをどう見ているのでしょうか?
片岡さん:結構リアルな質問ですねぇ(笑)。基本的には、コーナーで走りを観察して、なんとなく『この子の走り方は、こういうところに課題があるな』ということを見ます。そして走行から戻ってきたとき、まずコメントからヒアリングをして、見ているイメージと言葉が合っていれば、そのままアドバイスをします。

──ほほう。
片岡さん:そこでの言葉がズレているときは、なんらかの間違いが発生しているので、そのときに初めてデータロガーを出して『君が言っていることはデータには現れていないよ』と伝えます。逆にそう感じるということは、僕の経験から『○○だから、逆にこう感じちゃっているんじゃないの?』ということをアドバイスします。

 そのアドバイスがすぐに伝わるときと伝わらないときがありますが、基本的にはそのサイクルを繰り返しています。実は走りのアドバイスというのは『きっかけを与えるだけ』なんです。僕たちは、もともとFTRS(フォーミュラトヨタ・レーシングスクール)、今はTGR-DC(TGRドライバー・チャレンジ・プログラム)というオーディションがあり、そこでの才能=“原石を磨けば光る”子たちを集めています。なのでベースはあるので、僕たちはきっかけを与える仕事なんですよね。どんな実力かも分からない子を突然育てるということになるとメチャクチャハードルが高いですが、ある程度の基礎のスキルを持っているので、足りないところを補ってあげるんです。

 特にカートから四輪に上がるケースが多いので、そこで悩むであろうところ、クルマの重さや動かすタイミング、あとはセッティングの仕方など、同じような道を最初に通ってきた僕だから分かるところをアドバイスしてあげるというのがメインですね。

──そのコーチングはいつ頃から携わっているんでしたっけ?
片岡さん:けっこう前からですよ。FIA-F4の2年目(2016年)からですね。

──長いですねぇ。もうそんなになりますか。スーパーGTのときは、F4は木曜〜金曜に走行しているわけじゃないですか。その2日間で走行を見て、土曜〜日曜は何をしているんですか?
片岡さん:土日もフツーに、F4がコースインする1時間前にはサーキットにいて、いろいろと話をして、レースのときもF4のスタッフたちと一緒にサインガードで観ます。自分のスーパーGTの走行時間が迫っていなければ表彰式まで観ますが、だいたい1レースめの後に自分の走行が始まるので、すぐにピットに戻って自分のレースをします。F4が特に問題なければ、場合によっては自分のスーパーGTの予選が終わってからピットに行ったり行かなかったりという感じです。

 ただ、問題が起きたときにはF4のピットにも行きますし、ときに若い選手がミスをして他のチームを巻き込んでしまったときには、スーパーGTの予選やレースが終わった後、その選手と一緒に謝りに行ったりします。そういう感じなので、ほとんどF4の方に時間を割いていますね。

──(予選後ピットに取材に行っても捕まらないワケだ……)
片岡さん:どちらかというと、スーパーGTはチームの体制ができあがっていて、谷口(信輝)さんとのコンビも長いので、逆に言うと『コレとコレとコレ』ということをやってしまえば、あとはいつもの流れなんです。だからスーパーGTの朝も谷口さんとはいつも別行動ですからね。

──なるほど。そういう意味で高木さんは、F4だけではなくスーパーGTでもチームメイトの若手を見ないといけない。その部分の違いもあるかもですね。
片岡さん:たぶんスーパーGTにとられる時間の割合が全然違うんじゃないですかねぇ。僕はほぼF4に時間を使っていますからね。

──高木さんは『Bionic Jack Racingから、今後GT300やGT500、それこそスーパーフォーミュラにも行けるようになるといいな』という希望があるらしいです。一方で片岡さんはTGR-DCで、いまやスーパーフォーミュラで活躍する若手たちを育て上げてきたわけじゃないですか。そのコツなどはあるんですか?。
片岡さん:それも話が戻りますが、『磨けばそこに到達できるであろう』という原石を最初にピックアップしているわけです。だから逆を言うと『そこに行ったらいいね』ではなく『行ってもらわないと困る』プロジェクトなんです。

 なので、例えばGT300に出てきて、僕と同じレースに出ても、僕くらいはさっさと踏み台にしてGT500に行ってくれないとダメなんです。そういう意味では僕たちの場合は、原石を見つける能力、そしてそれをどう磨くか考え、『ちゃんと輝いたときにはトップカテゴリーまで行く』というのが使命としてやっていました。

──その点では、片岡さんはレーシングカートのヤマハSLレースからの若手発掘プロジェクト『YAMAHA Formula Blue』から携わっているわけじゃないですか。それも大きい?
片岡さん:そこはあまり関係ないですかね。逆に言うとヤマハでは最初に目指すべきものと姿勢を伝えておけるので、彼らも早い段階から心構えや準備ができるというだけですね。

グリッドで荒川麟(TGR-DC RS トムススピリットF4)にアドバイスする片岡龍也講師
グリッドで荒川麟(TGR-DC RS トムススピリットF4)にアドバイスする片岡龍也講師
FIA-F4第2戦を制した野中誠太(TGR-DC RS トムススピリットF4)と片岡龍也講師
FIA-F4第2戦を制した野中誠太(TGR-DC RS トムススピリットF4)と片岡龍也講師

■片岡さん、最近お悩みありますか?

──なるほど。なんとなく高木さんのお悩みに答えているのか分かりませんが、上記の活動に加えて、スーパー耐久でROOKIE Racingを含め6台(※)をプロデュースして、スーパーGTではドライバー、スーパーフォーミュラでもNTT Communications ROOKIEの監督をしたりと、非常に忙しい片岡さんですが、最近は時間の使い方というのはどうなんですか?
※ORC ROOKIE Racing GR SUPRA/ORC ROOKIE Corolla H2 concept/KTMS GR YARIS/TKRI 松永建設 AMG GT4/林テレンプ SHADERACING GR SUPRA GT4/林テレンプ SHADERACING 86の6台
片岡さん:時間は……なんですかね。慣れてきちゃったから、むしろこれがライフスタイル。逆に、たまに3日くらいヒマで家にいると何をしていいか分からなくなっちゃいます(笑)。

──気持ちはよく分かります(笑)。
片岡さん:まだ子どもが小さいので、妻には悪いのですが、仕事をしている方がやり慣れたことじゃないですか。家に帰って育児を手伝う方が不慣れなことをするので、その難しさは逆にあるかなという感じですね。

──片岡さんは最近は趣味とかあるんですか?
片岡さん:僕の趣味は一貫してゴルフです。

──ほう。ゴルフは行けているのですか?
片岡さん:けっこう無理矢理ゴルフは行っています。ナイターも行きますし、とにかくすき間の時間があれば、多少寝る時間が削られても行きますね。なんにしてもやりたいことはやるので(笑)。

──スケジュール管理なども自分でやっているんですよね。
片岡さん:そうです。経理から何から全部自分です。今年はまだいいですけどね。昨年は契約書なども作っていました。それはある程度のベースをもとに作っていましたが、それでもちゃんとしていないといけないので、弁護士を紹介してもらって、いちおう内容をチェックしてもらったりしていました。最近はなんだか社会人になってきたなと思いますよ。

──ようやく社会人ですか(笑)。
片岡さん:ようやく(笑)。今までアンダーステアとオーバーステアだけで生きてきましたけど、そこにイチ社会人としての意識がついてきたなと。

──そんなこんなでですね、このコーナーは次の人に悩みを伝えるのですが、最近片岡さんは悩みなどありますか?
片岡さん:悩みねぇ。なんでしょうね……。たしかに忙しいと言えば忙しいですよ。自分の時間をとりにくいけど、それでも世の中のサラリーマンの皆さんに比べたら、ゴルフに行けていれば十分だよと言われちゃうかなと思います。

……今のいちばんの悩みは『ルーティン化したトレーニングができない』ということですかね。もともとそこまでガッツリトレーニングをする方ではないんですけど、それでもたまにジムに行って走ったり泳いだりしていた方が、単純に体の調子がいいじゃないですか。そういう時間がとれないです。それがいちばんの悩みかな。

 あとはコロナですね。結局僕はジムもコロナで行かなくなって、それで忙しくて、じゃあ外を走ろうかと思ったら雨が降っていたりする。

──ジョギングあるあるですな(笑)。
片岡さん:それが、タイミングを外すとやらなくなってしまう。……という感じで体を動かす時間がとれないですね。例えばゴルフとかなら、『行く』と決めて行っちゃうからいいんですけど、なかなか体を動かすために時間を作るのが難しい。だからといって月に一度だけジムに行っても意味がないじゃないですか。

──完全に自己満足の話ですね。
片岡さん:そう(笑)。でも『じゃあ一度くらい行ってもしょうがないか』となると、もっと行かなくなってしまう。もともと忙しいところにコロナが加わり悩ましいです。そういう意味では、僕は夜に飲みに行くのも好きなのに、それもできなくなっている。大好きなカラオケができないというストレスと、ジムに行って体を動かすことも難しいという、そういうのがストレスですね。

──(実はそのカラオケ聞いたことがあるのですが、かなりの美声です)その悩み、誰に相談しますか?
片岡さん:でもコレ、誰も解決できなさそうですよね(笑)。

──体のコンディションという意味では、年齢的なものは大丈夫なんですか?
片岡さん:年齢で言うと、今のところまだ体のほうは感じないですけど、目は最近少しきはじめたかなと思います。夜に屋内の明るい場所から、真っ暗なクルマに乗り換えてからの5分くらい、クルマに乗るとメーターが昔は感じなかった見にくさがあるんです。目のアジャスト能力がちょっと落ちてきているのかなと思います。

 たぶん長い目で見たときにレーシングドライバーが引退するのは、今のスーパーGTだったら体力よりもやっぱり目がいちばんの原因になるんじゃないかと思います。そういう意味で『目のケアの仕方』を教えてもらったほうがいいのかな。じゃあ誰になるかな。

スーパー耐久、スーパーフォーミュラではROOKIE Racingの監督を務める片岡龍也
スーパー耐久、スーパーフォーミュラではROOKIE Racingの監督を務める片岡龍也
スーパー耐久では片岡龍也プロデュースのチームはピットが並んでいる。
スーパー耐久では片岡龍也プロデュースのチームはピットが並んでいる。

■“お友だち”は同い年のあのドライバーに

──誰に聞いてみたいですかね。詳しそうな人じゃなくてもいい気がします。同年代とか。
片岡さん:同年代か〜。そうなってくると面白そうな人で言うと、マー(柳田真孝)とかが面白いのかな。

──そうなりますよね〜(ふたりは同い年。スーパー耐久で同チームだったこともあります)。
片岡さん:あとは年齢という絡みでいうと、将来設計図ですかね。僕なんかはこのままずっとコーチングや監督をしながら、この世界にずっとずっといるんだろうなと思うけど、柳田さんのようにハンコックタイヤをたくさん売ったり(編注:スーパー耐久のワンメイク供給に携わっています)、セントラル20(※)があったり。まぁ立派な二世帯住宅も持っていますしね(笑)。
※東京都調布市のフェアレディZ専門チューニングショップ。柳田真孝のお父様、“Zの柳田”こと柳田春人さんが興した。

 僕はなんというか『身ひとつ』の生き方というか、モータスポーツへの関わり方だけど、柳田真孝というとお父さんもいるし、セントラル20という店もあるから『どうするの?』という感じで『お店は継ぐんですか?』と聞いてみたい。

──たしかにそれは聞いてみたい。では次回はマーさんということで。
片岡さん:マーに繋いで、主に、あと何年現役ができるか分からないなかで、どうやって現役を長引かせて、そして正直どんなかたちでメシを食っていくのかということを聞きたいですね。

──なんか割とマジメな相談コーナーになりましたな。
片岡さん:そうじゃないと面白くないですからね。これで『ゴルフの飛距離が伸びないんだけど!』という話をしても、内輪では面白いかもしれないけれど、読者のみなさんは面白くないと思うので。

──そして柳田さんは、それはそれで悩んでいそう。
片岡さん:ですよね。逆にマーが僕の質問を受けて、そのことで『やっぱり悩んでいるんです』といって、また誰かに聞くみたいな(笑)。

──結局人生相談が延々と続いてくみたいな。
片岡さん:でも実際面白いですよ。レーシングドライバーのセカンドキャリアはどうなっていくんだろうという。ほとんどの人が消えていく世界ですからね。そういう意味では、マーの次はカズキング(星野一樹)なのかな。同じようにショップをやっているドライバーを親に持つというね。昔みたいにホイールが売れる時代ではないから、悩みも多いだろうし(笑)。

* * * * *

そんなこんなで、次回は柳田真孝さんに繋がりました。実はもう取材済みなのですが、片岡さんの予想をアタマに入れつつ、お楽しみに!

スーパーGT GT300クラスでグッドスマイル 初音ミク AMGをドライブする片岡龍也
スーパーGT GT300クラスでグッドスマイル 初音ミク AMGをドライブする片岡龍也
グッドスマイル 初音ミク AMG
グッドスマイル 初音ミク AMG
柳田真孝
柳田真孝