激変する首都圏のインフラを清水草一が追う! GENROQの人気連載「東京大動脈革命」出張掲載

激変する首都圏のインフラを清水草一が追う! GENROQの人気連載「東京大動脈革命」出張掲載

TOKYO大動脈革命RETURNS

「東名高速・大和トンネル拡幅工事」 編

東名高速の渋滞のメッカについて、衝撃の事実が判明した!!

2017年2月号から1年間に渡って掲載した連載「TOKYO大動脈革命」。2020年に開催予定の東京オリンピックに向けて続々と開通する関東の大動脈を追った。だが、オリンピックの延期により当初の開通予定から狂いが生じた区間もあるはずだ。今回は2020年に完成を予定していた「東名高速・大和トンネル拡幅工事」を追った。

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清水隊長の「東名高速・大和トンネル拡幅工事」ここに注目!

1.交通量日本一の区間の重要な工事
2.完成の遅れは橋梁部の難工事にあった
3.「暫定拡幅」手法を採用すべきだ!

清水草一隊長

文体を自由自在に使い分ける変幻自在な自動車評論家。著者『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(講談社ビーシー)でも知られる通り、交通ジャーナリストとしても幅広く活動している。高速マニアの隊長だ。

GENROQ編集部・石川隊員

いつの間にかGENROQ編集部に4年半以上在籍している編集部員。2017年スタートの「TOKYO大動脈革命」連載を担当。今回の短期連載では工事が遅れた箇所の謎に迫りたいと意欲満々。

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全国最悪の渋滞が改善されると心待ちにしているドライバーは数知れないが・・・

「大和トンネル 拡がります」

首都圏のドライバーなら、たいていの人が、その横断幕を見たことがあるだろう。

横浜町田IC〜厚木IC間は、東名高速道路の中でも最も交通量が多い。途中にある大和トンネルは、トンネルと勾配によるダブルの「サグ効果」によって、高速道路として日本一の渋滞ポイントとなっている。

その対策として、大和トンネル付近の付加車線の設置が決まったのは、2015年12月。その結果、冒頭の「大和トンネル 拡がります」の横断幕も張られた。

これで全国最悪の渋滞が多少なりとも改善されると、心待ちにしているドライバーは数知れないはずだが、いったいいつになったら完成するのか、どうにも見えない。

当初は、「2020年東京オリンピックまでの完成」が目標とされていたが、工事の遅れによって、昨年初夏、正式に延期された。その後NEXCO中日本に問い合わせても、「開通時期は未定です」との答えしか返ってこなかった。

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一部の区間で、まったく工事に着手されていない!

そこで4月中旬、拡幅現場を東名に沿って歩いて見たところ、愕然とした。高速を走っているだけだと見過ごしてしまうが、一部の区間で、まったく工事に着手されていないのだ。具体的には、拡幅区間のうち、大和バス停より東京寄りにある3ヵ所(合計約1km)の高架部である。

つまり、「工事が遅れている」のではない。一部で「工事が始まっていない」のだ!

大和トンネルそのものは、外側の側壁を撤去し、新たな側壁を3.85m外側に建設することで、すでにほぼ拡幅が完成している。ここが工事の最難所だろうから、あとは開通を待つだけ・・・と呑気に構えていたが、実はそうではなかった。

これでは、待てど暮らせど、開通がいつになるか、見当もつかない。そこで改めてNEXCO中日本(広報・CS課)に質問をぶつけた。

1.詳細な工事の進捗状況及び、工事の遅れの理由を教えてください。

2.今後の見通しを教えてください。

3.大和バス停より厚木寄りの区間は、ほぼ完成しているように見えます。上り線に関しては、大和バス停までの区間だけでも拡幅実施を先行させ、現在の渋滞を緩和すべきではないかと考えますが、そのような検討はなされていないのでしょうか。

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NEXCO中日本の回答は・・・

それに対して、具体的な回答を得た。以下全文を記そう。

「大和トンネル付近の渋滞対策事業について、具体の完成時期をお知らせできておらず、また、渋滞の発生により、ご迷惑をおかけしており大変申し訳ありません。大和トンネルは現在、上下線ともに片側3車線から4車線に拡幅するトンネル本体の工事が完了し、引き続き設備工事等を進めているところです」

「また、大和トンネル前後の区間においても、土工部の拡幅工事が完了し、引き続き舗装・設備工事を展開しています。現場は、供用中かつ重交通路線である東名高速道路での拡幅工事となります。道路をご利用されるお客さまに極力ご迷惑が掛からないよう、現状の道路路肩を活用するなど、昼間は現状の3車線を確保したうえで、限られた時間、狭小な規制内において鋭意工事を進めてきておりますが、現時点において、完成時期をお知らせできていないところです」

「非常に難しい条件下での工事であり、引き続き安全第一で進めてまいります。当社としましても、完成したところから順次運用を開始してまいりたいと考えています。具体の運用開始時期については、見通しが立ち次第お知らせ致します」

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7月下旬のオリンピック開幕までに、一部完成区間の先行拡幅が実現しそうだ

私が注目したのは、最後の「完成したところから順次運用を開始したい」という部分だ。この回答が届いたのは5月7日。同時期、大和バス停より厚木寄りで、樹脂製ウォールの撤去が始まり、舗装・設備工事の最終段階に入った。

NEXCO中日本は、執筆時点ではまだ開通時期を明らかにしていないが、これならば、7月下旬のオリンピック開幕までに、一部完成区間の先行拡幅が実現しそうだ。

その効果だが、上り線側は、拡幅区間が勾配ピーク付近にまで達するので、それなりの渋滞緩和が見込める。一方下り線は、逆に勾配のピークを過ぎてからの拡幅になるので、効果はわずかだろう。

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4車線化が待ち遠しいが、完成の目処が立っていないのが悲しい!

では、未着手の高架部も拡幅され、すべてが完成するのはいつになるのか? 高架部の拡幅工事についてNEXCO中日本はこう回答した。

「橋梁部分の拡幅工事につきましては、重交通路線かつ住居連担地区において既設の橋梁を拡幅する工事であり、技術的に難易度が高い工事になります。現在は、東名高速道路をご利用されるお客さまと、地域にお住いの方々、極力ご迷惑が掛からないような施工方法を検討しながら、橋梁の詳細な設計を進めているところです」

驚くべきことに、まだ詳細な設計すらできていなかったのだ!

確かに高架部の拡幅は難しい。開通から半世紀以上経っていて、老朽化も進んでいるはずであり、単に路面を外側に張り出すだけでは既存の橋脚の強度が保つまい。しかし、外側に新たな橋脚を建てるとなると、下手すれば完成は10年後になる。ならば、未着手の高架部は、路肩を潰し、1車線の幅を少しづつ狭めてもう1車線ひねり出す「暫定拡幅」の手法を採用すべきではないか。

その場合、新たな橋脚が完成して橋げた部の本格拡幅工事に入る際は、暫定付加車線を閉鎖する必要が生じるが、それまで数年間、現状のまま放置するのは愚の骨頂だ。

NEXCO中日本によれば、4車線化により大和トンネルを先頭にしたサグ渋滞はほぼ解消されるという。とりあえず、間近に迫った一部先行拡幅に期待するしかない!

REPORT/清水草一(Soichi SHIMIZU)
PHOTO/篠原晃一(Koichi SHINOHARA)
ILLUSTRATION/時川真一(Shinichi TOKIKAWA)

掲載雑誌/GENROQ 2021年 7月号