ベントレーの新たなフラッグシップ、フライングスパー。ブランドの頂点を担う資質を見る 【Playback GENROQ 2020】

ベントレーの新たなフラッグシップ、フライングスパー。ブランドの頂点を担う資質を見る 【Playback GENROQ 2020】

Bentley Flying Spur

ベントレー フライングスパー

フラッグシップの覚悟

コンチネンタルGTが生まれ変わり、新しいフライングスパーを待ちかねていた人も多いだろう。長く、広く、低くなったスタイル、豪華でエレガントなインテリア、そして数々の新機構を搭載し、名実ともにブランドを代表する存在になっての登場である。

ベントレー フライングスパーのサイドビュー

「その佇まいは従来モデルより威風堂々とし、車格も上がっているように感じる」

2005年に登場したフライングスパーは、当初「コンチネンタルGTの4ドア版」と呼ばれたりした。もちろんそれは概ね事実ではあったが、フォルクスワーゲン傘下で開発されたベントレー・サルーンを揶揄する意味も込められていたのかもしれない。13年には2代目へとチェンジし、今回上陸を果たした最新モデルは3代目となる。

大小異径の丸形ヘッドライトなど、デザインは従来のイメージを保っているが、その佇まいは従来モデルより威風堂々としており、車格もぐんと上がっているように感じる。コンチネンタルGTと同様に130mm延長されたホイールベースによって短くなったフロントオーバーハング、大胆なプレスラインの入ったサイドパネル、そして約20mm長く、4mm低くなったボディなどの効果で、全体の雰囲気は先代よりもはるかに躍動的になった。しかし新型フライングスパーから感じる変化は、それら目に見えるものだけではなく、内側から湧き出してくるようなものだ。

ベントレー フライングスパーのフロントセクション

「新時代のフラッグシップサルーンを造る。そんな開発陣の思いが結実した作品だ」

ご存知の通り、ベントレー・サルーンはフライングスパーの他にフラッグシップであるミュルザンヌがあった。あった、と表現するのはすでにミュルザンヌは生産終了が発表されているからだが、そのミュルザンヌの後継モデルは今のところ予定はないという。つまり、今後はこのフライングスパーがベントレーのフラッグシップサルーンとなる。もちろん、開発陣はそのことを承知の上で、3代目フライングスパーを造ったのは確実だ。コンチネンタルGTの4ドア版ではない、新時代のベントレーのフラッグシップサルーンとはどうあるべきか。そのような思いでデザイナーは線を引き、エンジニアは設計を行ったのだろう。

見た目だけでなく、内側から湧き出るような威風堂々たる雰囲気は、そのようなベントレーの想いが結実した作品だからだ。クロームの縦桟のグリルは最終モデルのミュルザンヌと共通の意匠であり、またエクステリアでは、先代まではなかったフライングBのマスコット(新デザイン)がボンネット先端に据えられている。これも従来はミュルザンヌにのみ与えられていたもので、このあたりからも新型フライングスパーが新たなフラッグシップとなったことが感じられる。ちなみにこのマスコットはドアのロック/アンロックに連動して昇降するようになっており、オプションでイルミネーションを点灯させることも可能だ。

ベントレー フライングスパーのインテリア

「サルーンボディゆえに視界が優れ、4WSの効果で扱いやすい」

インパネの基本的なデザインはコンチネンタルGTと共通だが、センターコンソールのエアコン吹き出し口は専用のデザイン。またローテーションディスプレイは、全面ウッドパネルの状態で走行できるようになった。コンチネンタルGTは走行中はモニター画面か3連メーターの二択なので、これも落ち着いた雰囲気を好む人には歓迎されるだろう。

しっとりとした感触のシートに腰を降ろし始動ボタンを押すと、スターターモーターのかすかな連続音とともにW12エンジンは目覚める。アイドリング時の振動はまったくと言えるほど感じられず、Dレンジにシフトして走り始めても、その静粛性と無振動にはあきれるばかりだ。全長5325mmの巨体だが、乗り出してしまえば意外なほどの扱いやすさに驚く。サルーンボディゆえに視界が優れていること、そして4WSの効果も大きい。先代に比べると最小回転半径は50cm以上も小さくなっているというから、街中での取り回しは格段に向上しているのだ。

ベントレー フライングスパーの走行シーン

「新時代のフラッグシップを担う資質は十分」

3195mmという長いホイールベースはゆったりとした挙動を生み、高速道路ではビシッとした直進性を見せ、クルーザーのように疾走する。エアサスペンションは大きなストロークを使って路面からの入力をしなやかにいなすが、奥のところはしっかりと受け止めてくれるので、高速コーナーでも意外に不安感はなく、かなりスポーティな走りも可能だ。

コンチネンタルGTより250kgほど重いボディながらパワーとトルクは十分で、特に1350rpmから発する900Nmのトルクは地底からふつふつと沸き上がるマグマのよう。80km/hでも100km/hでも、エンジン回転は1200rpmで、そこからアクセルを踏み込むと、1mm刻みで必要なトルクが湧き上がってくる、という印象だ。コンフォートモードとベントレーモードでは480Nmのトルクがフロントに配分され、長く、広く配置された4つのタイヤががっちりと路面を掴む。まさに大船に乗った気分だ。

数々の運転支援システムやアップルカープレイも備わるなど、装備面でも大幅な進化を果たし、新時代のフラッグシップを担う資質は十分にあると見ていいだろう。ミュルザンヌのような圧倒される浮世離れ感は、やや薄まってしまったが。

REPORT/永田元輔(Gensuke NAGATA)
PHOTO/平野 陽(Akio HIRANO)

【SPECIFICATIONS】

ベントレー フライングスパー

ボディサイズ:全長5325 全幅1990 全高1490mm
ホイールベース:3195mm
車両重量:2540kg
エンジン:W型12気筒DOHCツインターボ
総排気量:5950cc
最高出力:467kW(635ps)/6000rpm
最大トルク:900Nm(91.8kgm)/1350-4500rpm
トランスミッション:8速DCT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前265/40ZR21 後305/35ZR21
最高速度:333km/h
0-100km/h加速:3.8秒
車両本体価格:2667万4000円

※GENROQ 2020年 5月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。