マクラーレン アルトゥーラは「孤高の次世代スポーツ」! 最新HVモデルのキーポイントを小川フミオが技術者に訊く

マクラーレン アルトゥーラは「孤高の次世代スポーツ」! 最新HVモデルのキーポイントを小川フミオが技術者に訊く

Mclaren Artura

マクラーレン アルトゥーラ

MP4-12C以来の一大プロジェクト

マクラーレン オートモーティブが、新しい技術がふんだんに盛り込まれた新世代のハイブリッドスーパースポーツ「アルトゥーラ」について、「ディープダイブ」と名づけたオンラインインタビューを開催した。

2021年5月、英南部サリー州ウォーキングにあるマクラーレン本社からの中継では、エンジニアからデザイナーまで各分野のエキスパートが登場。「新しいセグメントを開拓する」という意気込みのアルトゥーラについて詳細を教えてくれたのだった。

マクラーレン「アルトゥーラ」のフロントビュー

「アルトゥーラの開発には、4年強を費やしました。アルトゥーラの開発は、MP4-12C(2011年)以来最大のエンジニアリングプロジェクトです。オールニューのモデルであり、プラットフォーム、パワートレイン、サスペンションのすべてが刷新されています」

そう語ったのは、同社のスポーツシリーズ(540Cや600LT スパイダー)のチーフエンジニアを務めてきた、ヘッド・オブ・ビークルデベロップメントのジェフ・グローズ氏。

「P1(2013年に正式発表された3.8リッターV8ハイブリッドのスポーツカー)で経験を積んだハイブリッド技術をさらにアップデートしたもので、パワートレインのコンパクト化と、軽量化を狙って開発しました」

マクラーレン「アルトゥーラ」のリヤビュー

HVのために生まれた軽量シャシーを採用

マクラーレンが2021年4月18日に発表したアルトゥーラについては、読者の方はよくご存知だろう。それを承知で、あえてさっと内容のおさらいをしておこう。

アルトゥーラはマクラーレンが設定したシリーズのなかでは、「スーパーカー」のカテゴリーに属するモデル。ほかには720Sシリーズや765LTが同じカテゴリーに属している。

ハイブリッドのために開発された「マクラーレン・カーボン・ライトウェイト・アーキテクチャー」なる専用シャシーを持ち、やはり新開発の2993ccV型6気筒エンジンをミッドシップする。

マクラーレン「アルトゥーラ」のV6エンジン

F1の知識と量産技術のマリアージュ

このドライサンプ式潤油方式のエンジンについて書くべきことは多い。ひとつはバンク角を異例の120度まで拡げたこと。それによって全高を下げるとともに、バンクのあいだにターボチャージャーを置いて効率を上げている。

もうひとつは小型化。新V6エンジンは、シリンダーの内径を従来のV8ユニット(M840T V8)より9mm小さくすることで、ユニットの全長を27mm縮めている。小さくすることで軽量化も促し、V8の210kgに対して、160kgを実現した。

高効率を追究したこの新パワートレインについて、マクラーレンでプロダクトマネージメントを担当するトム・テイラー氏は「軽量かつコンパクトであり、かつ、熱伝導率にもすぐれたこのエンジンは、F1の技術者も抱えるマクラーレングループだから実現できたもの」とする。F1レベルの専門知識と量産技術のマリアージュ、というのがテイラー氏の表現だ。

カーボンモノコック構造

電気だけでも最長30km走行可能

ハイブリッドシステムは、8速ツインクラッチ変速機のあいだに7.4kWhの駆動用バッテリーを用いる電気モーター(同軸型フラックスEモーター)を搭載。システム出力は500kW(680ps)/7500rpm、また最大トルクは720Nm/2250rpmに達している。

ボディはモノコック構造で、「当初から次世代電動化マクラーレンを想定して開発された」とマクラーレンでは説明する。バッテリーの搭載位置を含めて、軽量化と低重心化による操縦安定性の実現が目指されているのだ。

ドライブモードは4種類から選べる。電気モーターだけの「Eモード」は航続距離30kmのEV走行。「コンフォートモード」は40km/hまでモーターで走行し、それより速度が上がるとエンジンが始動するハイブリッド走行だ。

マクラーレン アルトゥーラの俯瞰目ビュー

状況に応じて変化する加速“感”

「スポーツモード」と「トラック(サーキット)モード」では、モーターが加速時とシフトアップ時のトルクの落ち込みをカバーするように働く。またパワートレイン以外でも、電子制御により左右の駆動輪のトルク伝達を最適化するとメーカーが謳う新採用の「Eデフ」と、サスペンションシステムのダンパーのセッティングが変わる。

「私たちが“アコーディオン”と呼んでいるソフトウェアも搭載しています」。前出プロダクトマネジャーのトム・テイラー氏は言う。

「たとえば加速時のエンジンマッピングを車両が選びます。例をあげると、下のギヤから強めの加速をしたいときと、5速巡航時からの加速とでは異なる最適のスロットルマッピングを選ぶようにしました」

ピレリの「サイバータイヤ」採用も、印象的なニュースだ。「ブルートゥースを使ったセンサーをタイヤ内壁に装着したことによって、タイヤ空気圧と内気温度の測定精度を大幅に引き上げました」とテイラー氏。「タイヤ表面温度の推定精度も上がり、センサーからの情報は、30秒ごとにアップデート」されるとは、車両開発を統括するジェフ・グロース氏。

マクラーレン「アルトゥーラ」のホイール

クルマ周りの空気の流れが“語る”形態

スタイリングは、広いノーズ、前進したキャビン、それにハイテールというマクラーレン車に共通のプロポーションを持つ。一方、リヤのカウルはスーパーフォーミング技術を用いての一体成型となり、軽量化と接合部をなくしたことによる空力の改善を実現している。

「私たちのミッションは、クルマまわりのエアフローが生み出すストーリーを形態に語らせることです」。オンラインで登場したデザインディレクターのロブ・メルビル氏は「すべてに意味があるというマクラーレンのデザイン哲学(のひとつ)の具現化」と説明してくれた。

マクラーレン「アルトゥーラ」のコクピット

インテリアは、従来以上にドライバーを中心に設計されたダッシュボードが新しい。8インチHDタッチスクリーンの新インフォテインメントシステムや、運転支援システム(ADAS)も導入された。加えて、独自の調節機能をもった「クラブスポーツシート」が採用されている。

クラブスポーツシートは、前後に動かすときは直線の並行レールではなく、半円状の軌跡をひとつの支点で動く。マクラーレンではそれによって、サイサポート、バックレスト、シート髙をワンモーションで調節できるのがメリットとしている。かつてルノーが1980年代に実用化した「モノトレースシート」と似た構造だろうか。

マクラーレン「アルトゥーラ」のフロントビュー

ボディからタイヤまで騒音対策も徹底

ハイブリッド化による騒音低減、それと同時にパワートレインの騒音低下にともなう各所の遮音対策が広範囲にほどこされたのも、アルトゥーラの特徴にあげられている。

MCLA(マクラーレン・カーボン・ライトウェイト・アーキテクチャー)の剛性、エンジンの液封マウント、リヤサスペンションシステムのレイアウト、騒音源である駆動チェーンをコクピット側でなく後端部に移したこと、と多岐にわたる。

「ただし無音化をめざしたわけではありません。レゾネーターを利用して、V6エンジンの気持ちよいサウンドを作り出しています」。P16(マクラーレンの「スーパーカー」セグメント)プラットフォームディレクターを務めるフィル・モックフォード氏はつけ足すのだった。

マクラーレン「アルトゥーラ」のリヤビュー

「競合と同じものは作りたくない」

アルトゥーラをどんなひとたちに売りたいか。そう訊ねられてPRディレクターのピアース・スコット氏は「新しい技術をまっさきに評価してくれる層と、ペトロールヘッド(クルマ好き)」と答えてくれた。「私たちは競合とおなじものは作りたくなかった、ということをわかってくれるひとたちがターゲットです」とも。

ちなみに日本での価格は2965万円からで、納車が開始されるのは2021年末から、とマクラーレンオートモーティブの日本法人ではしている。

REPORT/小川フミオ(Fumio OGAWA)

【SPECIFICATIONS】

マクラーレン アルトゥーラ

ボディサイズ:全長4539 全幅1913 全高1193mm

ホイールベース:2640mm

車両重量:1395kg(乾燥)/1498kg(DIN=液体+90%の燃料)

エンジン:V型6気筒DOHCツインターボ

総排気量:2993cc

エンジン最高出力:430kW(585ps)/7500rpm

エンジン最大トルク:585Nm/2250-7000rpm

モーター最高出力:95ps

モーター最大トルク:225Nm

システム最高出力:680ps

システム最大トルク:720Nm

トランスミッション:8速DCT

駆動方式:RWD

サスペンション形式:前ダブルウィッシュボーン 後アッパーウィッシュボーン+ロワーマルチリンク

ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク

タイヤサイズ:前235/35ZR19 後295/35ZR20

最高速度:330km/h

0-100km/h加速:3.0秒