三菱自動車がラリーアートを復活させた背景とは?【週刊クルマのミライ】

■2020年度決算報告にて目指す姿を再定義。三菱自動車らしさの具現化に欠かせないのがラリーアートの復活

2021年5月11日、三菱自動車が2020年度の決算発表を行ないました。販売台数実績は前年比29%減の80万1千台、当期純損益は3123億円の赤字というものでした。このあたり、新型コロナウイルスの影響があるとはいえ、他社に比べても厳しい数字と言わざる得ないものでした。

新型アウトランダーPHEV
電動化比率50%を目指す三菱自動車。新型アウトランダーPHEVのローンチは2021年内と発表された

とはいえ、コロナ禍という想定外の状況による過去を振り返っても仕方ありません。決算発表で注目すべきは2021年度にどれだけ伸ばすことができるかという見通しと、そのための商品戦略です。

数字でいえば、グローバルでの販売目標台数は95万7千台。これは2020年度日でいえば19%増となっていますが、2019年度が112万7千台だったことを思うと、けっして絶好調という数値ではありません。まだまだコロナ禍から完全に脱却することは難しく、先が読めないという苦悩が感じられる目標値となっているのです。

また、このように目標が抑えめになっている背景には、欧州向けの商品開発凍結するといった事情もあるでしょう。その一方で、アセアンやオセアニア地域に注力するなど、集中と選択を進めている最中なのです。

具体的には、欧州向けはエクリプスクロスPHEVのほかルノーからOEMによってラインナップを構成するとしています。アセアン向けとしては、エクスパンダーやパジェロスポーツといった人気モデルをビッグマイナーチェンジすることで商品力を高めることを計画しているということです。

ラリーアートブランドの復活
かつて三菱自動車のワークス・ブランドとして幅広いモータースポーツ活動を行なったラリーアートが復活する

エクリプスクロスPHEVについてはオーストラリアにも投入予定。北米で発表済みの新型アウトランダーについては、日本向けとしてPHEV仕様をローンチするといった商品ラインナップ強化の計画も発表されました。

さらに日本向けには軽自動車のEVを日産と共同開発して、2022年あたりに投入するというロードマップも公表されています。世界の流れに合わせて電動化を進めることが三菱自動車の大きな方針となっています。

それだけではありません。電動車両を中心にラインナップするというと、走りの大人しいエコカーばかりになると感じてしまうかもしれませんが、三菱自動車のモータースポーツ活動を支えてきた「RALLIART(ラリーアート)」ブランドを復活させることも発表したのです。

プレゼンテーション資料では、アセアン向けのピックアップトラック「トライトン」がカウンターを当ててコーナリングしている様子と、「RALLIART Parts」という2枚の画像が公開されました。

ここから想像できることは、ひとつはアジアンクロスカントリーラリーのようなアセアン・オセアニア地域で人気のあるモータースポーツに積極的にサポートすることです。もしかするとワークスとして参戦することまで想定しているかもしれません。もしくはラリーアートの名を冠したスポーツグレードの展開も予感させます。

そういえばアライアンスを組んでいる日産も、中期経営計画においてスポーツカーをブランディングの軸のひとつにすると発表しています。その中にはNISMOブランドの活用も含まれているはずです。純粋なスポーツカーだけでなく、付加価値の高いグレードとしてNISMOを活用することでブランドイメージ自体を高める効果もあるでしょう。

また、トヨタもGR(GAZOO Racing)ブランドをスポーツカーではないファミリー向けモデルのスポーツコンバージョンとして活用しています。さらにGRパーツという名前でアクセサリーの販売にも力を入れています。

プレゼンテーション資料で「RALLIART Parts」をアピールする画像を大きく載せたことから想像すると、三菱自動車がラリーアートを復活させる狙いは、トヨタがGRパーツを展開していることに近いイメージを受けます。ラリーアート・ブランドの復活は、三菱自動車のブランド価値を高めるひとつの手段というわけです。

とはいえ、ラリーアートが活動を縮小してから10年以上が経っています。そう簡単に、往年のブランド価値を簡単に取り戻せるとは思えません。ラリーアート・ブランド復活の狼煙を上げるには、やはりモータースポーツにおけるワークス活動が必須といえるでしょう。

三菱自動車がパジェロの一大ムーブメントを起こしたのは当時のパリ・ダカール・ラリーでの活躍だったことはいまも語り継がれています。さすがにWRC復帰は現実的ではないとしても、ダカール・ラリーへの参戦はラリーアート復活の象徴として期待したいファンも多いのではないでしょうか。

自動車コラムニスト・山本晋也