WorldRXで2022年導入予定の“RX1e”をアンドレアス・ミケルセンがテスト「まったく別次元」

 WRC世界ラリー選手権のファクトリー契約ドライバーとして活躍し、近年はERCヨーロッパ・ラリー選手権の舞台に活動の場を移しているアンドレアス・ミケルセンが、WorldRX世界ラリークロス選手権で2022年からの導入が予定される電動最高峰“RX1e”のミュールカーをテストドライブした。次世代のトップカテゴリーマシンを初めてテイスティングしたミケルセンは、そのパフォーマンスを「残酷なまでに異次元」と評している。

 また、ひと足早く2021年からWorldRXとの併催が予定されるFIA RX2eチャンピオンシップのワンメイク電動ラリークロス車両“RX2e”も引き続きテストが続けられており、元F1テスターのダニ・クロスや、電動SUVシリーズのエクストリームEに参戦中の美女ラリースト“クリスティーナGZ”ことクリスティーナ・ジャンパオリ・ゾンカらがステアリングを握っている。

 3月26日に改訂版カレンダーが発表され、全7戦の開催が決定していた2021年のWorldRXだが、シリーズプロモーターはこの5月12日にもさらなるスケジュール変更を決断し、6月中旬にノルウェー・ヘルで開幕予定だった初戦をキャンセル。7月23~24日のスペイン・バルセロナ、カタルーニャでの特設サーキットを新たなオープニング・ラウンドに指名し、10月終盤にはノルウェーに代わりポルトガルのモンタリグレ戦を加えて、全7戦の開催を維持する方針を示した。

 従来の最高峰クラス“スーパーカー”から今季“RX1”へと改称されるトップカテゴリーは、この2021年が内燃機関を搭載したマシンによる最後のシーズンとなり、2022年には500kW(約680PS)を発生する世界最速のEVラリークロス車両“RX1e”への移行が計画されている。

 今回テストに用意されたRX1eミュールカーは、シュコダのファビア・ラリー2エボをベースに前後のアクスルにモーターを搭載するツイン・モーター仕様とされ、2個のインバーターと革新的な冷却システムを備えた52.65kWhのバッテリーを採用することで、現行のRXスーパーカーより強大なトルクを発生するという。

 WRCで一時代を築いた、フォルクスワーゲン製のファクトリーマシンを経験する31歳のミケルセンは、その電動モーターによる独特の動力性能を「とにかく残酷、ピュアなまでに残酷な速さ」だと表現した。

「これほどのパワーを持つマシンをドライブしたのは初めてだ。WRカーと比較してもまったく別のレベルにあるね。自分の意図と予測に対して、瞬間的に発生する爆発力は本当に狂ってる。すべてのものが一瞬で近づいてくる感覚だ」と最初のインプレッションを語ったミケルセン。

「音もせずシートに押し付けられる感覚は、まるでスターウォーズの世界だ。これほどパワフルで楽しいと、特別な気分になるね。もちろんファンにとって“ノイズ”は依然として重要な魅力だと思うが、彼らが製作した『スターウォーズの未来』にもまた別の魅力がある。静寂の中で走る経験は本当にクールだったよ」

2020年からERCヘの本格復帰を果たしたアンドレアス・ミケルセン。2021年はレギュラーとしてシリーズを追う計画だ
ワンメイク電動ラリークロス車両“RX2e”をテストした“クリスティーナGZ”ことクリスティーナ・ジャンパオリ・ゾンカ

■元F1テスターも太鼓判「初年度参戦が叶うなら最高だ」とダニ・クロス

 このRX1eに搭載されるバッテリーは、オーストリアのクライゼル・エレクトリック社製で、キット化されたユニット全体は既存のRXスーパーカーの内燃機関をコンバートして搭載することも可能なら、まったく新しいシャシーに組み込むことも許可されている。

 容量52.65kWhのバッテリーはシステム重量300Kgとなり、独自の安全機能を備えつつ重量配分を考慮した特別設計だ。車両全体の総重量は1330kgに規定され、フロントアクスルとリヤアクスルで独立したモーターはカーボンラップし、プリロードオプション付きの高性能トランスミッションとLSDを備える。

 一方、そのRX1eへの入門カテゴリーに位置付けられ、スペースフレームシャーシを中心に構築し、30kWhのバッテリーと2個の独立したモーターによる250kW(約340PS)/510Nmのパワートレインを組み込んだ“ポケットロケット”ことRX2eも、引き続きフランスのシャトールーにあるグラベル路や、スペインのカラファト・サーキットでのテストが続けられている。

 セッションに参加したのはGP2で優勝経験も持つダニ・クロスと、電動オフロード選手権エクストリームEにイスパノ・スイザ・XITEエナジー・チームからエントリーするクリスティーナ・ジャンパオリ・ゾンカ、そしてWorldRX経験者のシリル・レイモンドらだ。

 このRX2eは既存のRX2インターナショナル・シリーズで使用される内燃機関搭載のスーパーカー・ライト車両にとって代わるもので、スペインの電動機構サプライヤーであるQEVテクノロジーズと、スウェーデンの名門ビルダーであるオルスバーグMSEによって開発された。

 すでに開発テスターのオリバー・エリクソンや、WorldRX王者ヨハン・クリストファーソンらの手でマイレージを稼いで来た同モデルに対し、初ドライブの元F1テスターは「完全なるビーストだ!」と、その性能に太鼓判を押している。

「心からドライブを楽しんだよ。こちらの要求にも瞬時に応え、多くの変更可能なパラメータを備える幅の広さもある。個人的にFIA RX2eチャンピオンシップほど最善の選択肢はないし、ここには未来に対する素晴らしい可能性がある。初年度参戦が叶うなら最高だ」と、シリーズ本格挑戦を匂わせたクロス。

 一方、すでに電動オフロード車両に順応するクリスティーナGZも、その軽量ゆえの機敏さに衝撃を受けたと語っている。

「このRX2eラリークロスカーはめちゃめちゃ軽くて速いし、本当に印象的な加速力を味わわせてくれた。それにもうひとつの重要なポイントは、エネルギー回生を担う電子制御ブレーキの質ね。つまり、これって各ドライバーのスタイルに基づいてバランスを調整できるってことで、そこが最高にカッコいいの!」

GP2で優勝経験も持つ、元F1テストドライバーのダニ・クロスは、初年度の参戦に意欲を見せる
電動SUVシリーズの『Extreme E(エクストリームE)』に参戦中のゾンカは、回生ブレーキを高評価