英国車の真髄は「SVO」にあり! レンジローバーとジャガーのスペシャルモデルを一気試乗 【Playback GENROQ 2017】

英国車の真髄は「SVO」にあり! レンジローバーとジャガーのスペシャルモデルを一気試乗 【Playback GENROQ 2017】

JAGUAR F-TYPE COUPE SVR × RANGE ROVER SV AUTOBIOGRAPHY LONG WHEELBASE × RANGE ROVER SPORT SVR

ジャガー Fタイプ クーペ SVR × レンジローバー SV オートバイオグラフィー ロングホイールベース × レンジローバースポーツ SVR

SVOの世界観

ジャガー・ランドローバーの特殊車両製作部門「SVO」の存在は驚くほど知られていない。だが近年好調のジャガー・ランドローバーにあって、潜在能力をさらに引き出しているのは事実。そのクルマ造りには、そもそもブリティッシュ・カーメーカーの血脈が受け継がれているのか? ジャガーとランドローバーとそれぞれに設定されたSVOの代表作に試乗して、その魅力の源泉を探った。

ジャガー Fタイプ クーペ SVRの走行シーン

「硬派で贅沢な世界観はまさに──特別なジェントルマンズ・クラブ」

近頃は何かと差しさわりもあるようだが、何らかの趣旨に賛同し、互いに認め合ったごく限られた男たちのみが入会を許された女人禁制のジェントルマンズ・クラブは今も存在する。高い良識と自制心を備えながらも、同じ意識を持つきわめて限定された男の集まりである。真に特別なジャガーとランドローバーを生み出すSVO(スペシャル・ヴィークル・オペレーションズ)はまさしくそんなクラブのようなものかもしれない。

英国は言わずと知れた“メイド・トゥ・オーダー”の本場である。そのうえロンドンの通りにはかつて男の子たちが憧れ夢見たもののすべてが並んでいると言ってもいい。スーツはもちろん、シャツや靴などの装身具、喫煙具、文具、フライフィッシングなど趣味の道具まで、普段は強面の紳士が顔を綻ばせながら駆け込む店が揃っているのだ。

もっと英国らしく言うなら“ビスポーク”だが(オーダーメイドは和製英語)、顧客個人個人の要望に合わせた特別仕立ての誂え品は自動車の世界でもトレンドだ。より特別なモデルを求めるカスタマーの声に応えるように、今や世界中の名門ブランドはすべてそのような特注プログラムを展開している。

ジャガー Fタイプ クーペ SVRのエンジン

「Fタイプ SVRは最高速度322km/hを豪語するジャガー史上最強最速のモデル」

「SVO」という略語はちょっとアメリカ的で、実際我々世代はフォードのSVOを思い出すが(現在はSVTという)、ジャガー・ランドローバーのものは2014年からスタートし、昨年夏には2000万ポンド(約28億円)を投資してSVO専用の新しいテクニカルセンターを建設、さらにパーソナライゼーション・プログラムを推進する構えである。

そもそもビスポークの本家たる英国の高級車メーカーはロールス・ロイスやベントレーをはじめ、昔から特別な顧客のための担当部門を持っていた。ジャガー・ランドローバーは今も王室御用達のロイヤルワラントを三つ保持(女王夫妻と皇太子)しているぐらいだから、当たり前だが王室担当者も存在する。特注品はお手の物なのである。

「SVO」のエンブレムが付いたFタイプ SVRは、ジャガー自慢のオールアルミボディを持つ正統派のFRスポーツクーペ/コンバーチブルのFタイプの頂点に位置するモデルである。Fタイプ Rと同じくスーパーチャージャー付き5.0リッターV8ユニットを搭載するが、最高出力/トルクは423kW(575ps)と700Nm(71.4kgm)まで引き上げられており、0-100km/h加速は3.7秒、最高速度322km/hを豪語するジャガー史上最強最速のモデルであるという。

ジャガー Fタイプ クーペ SVRのインテリア

「そのとんでもない能力を正しく扱うことができる人にだけ許された猛獣である」

Fタイプは身体にぴったりフィットするジャケットのような軽快感と目の詰まった絨毯の上を歩くように柔らかく、だがその奥にはしっかりとしたコシがある乗り心地、さらにいかにもFRらしいリニアなコントロール性が特徴だが、Fタイプ SVRは明確に硬派かつ武闘派のジャガーである。ステアリングレスポンスも一層鋭く、リニアというよりはとにかく俊敏性を優先したことが分かるし、その分路面のアンジュレーションにはややナーバスにもなっている。

スロットルを全開にすると、電子制御AWDらしく瞬時にドンと動き出し、ドライバー自身が強烈なGでクラクラするほどの情け容赦ない加速が襲う。エンジン音はドロドロというアメリカンV8に近い低音を発するRよりもドライでハスキーであり、スロットル・オフ時のパリパリというアフターファイアに似た排気音はまるでレーシングカーのようだ。非常に刺激的だが、そのとんでもない能力を正しく扱うことができる人にだけ許された猛獣である。

レンジローバー SV オートバイオグラフィー ロングホイールベースの走行シーン

「柔らかな肌触りのトロリとしたアルカリ温泉に浸かっているような乗り心地」

パフォーマンスを追求したのがFタイプ SVRなら、特別仕立てでラグジュアリーを極めたのがレンジローバー SV オートバイオグラフィー LWBである。柔らかな肌触りのトロリとしたアルカリ温泉に浸かっているような乗り心地の気持ち良さは、レンジローバーならではの美点で、これだけで他のモデルと一緒にSUVと呼びたくないぐらいである。レンジローバーはSUVという名称が生まれるずっと前からラグジュアリーな4×4だったのである。

SVOが手掛けているからには大容量のエアサスペンションで滑らかに走るだけでなく、必要な場合は巨象のように猛然と駆けることもできる。スーパーチャージド5.0リッターV8は405kW(550ps)と680Nm(69.4kgm)を発生、オールアルミ製とはいえ車重2620kgにも達するボディをわずか5.4秒で100km/hまで加速させるという。標準型より200mm長い3120mmのホイールベース、全長約5.2m×全幅約2mの巨体にもかかわらずまったく平然と、むしろ上品に、だが猛然とダッシュするのだから恐れ入る。巨大な22インチタイヤが適切にコントロールされている証だろう。

レンジローバー SV オートバイオグラフィー ロングホイールベースのリヤシート

「クラシックホテルのような室内を演出する一方で、本格4WDとしての性能も抜群」

3000万円近い価格も仕方ないなと納得させる本物のアルミトリムの冷たい肌触りとしっとりとしたレザー、艶やかなウッドパネルがクラシックホテルの室内のような落ち着きを演出する一方で、本格4WDとしての性能ももちろん抜群だ。たとえば渡河水深は普通の人の腰の高さぐらいの900mmもある。やるやらないは別として、いざとなったらそこまでできる能力があるということがこの種のクルマには欠かせない。今はセンサーが備わるが、昔からレンジローバーはボンネットの高さまでの水深なら渡れると言われており、実際にそのぐらいの深さの川を渡ったことは何度かある。

一度、走るスピードがちょっと速すぎて勢いで水がボンネットの上にかかり、ランドローバーのスタッフから注意されたことがある(無論何事も起きなかったが)。ただし、彼らは無暗に踏み込むわけではないことを念のため付け加えておこう。たとえ水が浅くても、川底の状況が見えないときは自分の足で水に浸かってまず確認するのをためらわない。本当のオフロードはそういうものである。

レンジローバースポーツ SVRの走行シーン

「万能の4WD性能に究極のスポーツ性を加えたのがレンジローバースポーツ SVR」

ラグジュアリーではなく万能の4WD性能に究極のスポーツ性を加えたのがレンジローバースポーツ SVRだ。エンジンはSV オートバイオグラフィーと同じ550ps仕様のスーパーチャージドV8だが、こちらはよりコンパクトで軽量(2410kg)であるおかげでパフォーマンスはさらに目覚ましく、0-100km/h加速は4.7秒、最高速度は260km/hに達するという。ヤンチャなルックスをさらに上回る高性能である。

サラリたおやかなレンジローバー SV オートバイオグラフィーに比べると、SVRはすべてにおいて重厚、はっきり力を込めて操作することを求められる。そもそもSUVには似つかわしくないバケットシートに座っただけでそれなりの覚悟を求められる雰囲気が漂う。もちろんこちらも機能面での配慮は抜かりなく、例えばリバースカメラの横にはウォッシャーノズルが備わっている。汚れることを前提にしているのである。

レンジローバースポーツ SVRのフロントシート

「試乗で計測した7~8km/Lの実燃費は大きな進化(!?)だ」

嬉しい誤算はSV オートバイオグラフィー、SVRともに伊豆半島を巡った500kmほどの行程で7〜8km/Lほどの燃費を記録したことだ。今どきその程度? と言うなかれ、かつてのレンジローバーは街中でも高速でも5km/Lぐらいだったはずだから、これは大きな進歩なのである。

REPORT/高平高輝(Koki TAKAHIRA)
PHOTO/篠原晃一(Koichi SHINOHARA)

【SPECIFICATIONS】

ジャガー Fタイプ クーペ SVR

ボディサイズ:全長4475 全幅1925 全高1315mm
ホイールベース:2620mm
車両重量:1840kg
エンジン:V型8気筒DOHCスーパーチャージャー
総排気量:4999cc
圧縮比:9.5
最高出力:423kW(575ps)/6500rpm
最大トルク:700Nm(71.4kgm)/3500rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ(リム幅):前265/35ZR20(9J) 後305/30ZR20(11J)
最高速度:322km/h
0-100km/h加速:3.7秒
環境性能(JC08)
燃料消費率:8.1km/L
車両本体価格:1815万円

レンジローバー SV オートバイオグラフィー ロングホイールベース

ボディサイズ:全長5205 全幅1985 全高1865mm
ホイールベース:3120mm
車両重量:2620kg
エンジン:V型8気筒DOHCスーパーチャージャー
総排気量:4999cc
圧縮比:9.5
最高出力:405kW(550ps)/6500rpm
最大トルク:680Nm(69.3kgm)/3500rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前マクファーソンストラット 後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ(リム幅):前後275/40R22(9.5J)
最高速度:250km/h
0-100km/h加速:5.4秒
環境性能(JC08)
燃料消費率:6.7km/L
車両本体価格:2944万円

レンジローバースポーツ SVR

ボディサイズ:全長4880 全幅1985 全高1800mm
ホイールベース:2920mm
車両重量:2410kg
エンジン:V型8気筒DOHCスーパーチャージャー
総排気量:4999cc
圧縮比:9.5
最高出力:405kW(550ps)/6500rpm
最大トルク:680Nm(69.3kgm)/3500rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ(リム幅):前後275/45R21(9.5J)
最高速度:260km/h
0-100km/h加速:4.7秒
環境性能(JC08)
燃料消費率:7.3km/L
車両本体価格:1648万円

※GENROQ 2017年 5月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。