生真面目なポルシェ カイエン GTSと官能性を極めたマセラティ レヴァンテ S。最新スーパーSUVの選び方を探る

生真面目なポルシェ カイエン GTSと官能性を極めたマセラティ レヴァンテ S。最新スーパーSUVの選び方を探る

Porsche Cayenne GTS × Maserati Levante S

ポルシェ カイエン GTS × マセラティ レヴァンテ S

雅やかなライバル

ポルシェ カイエンとマセラティ レヴァンテ。ともにスーパーSUVを標榜するライバル関係にある2モデルだ。新たに導入されたカイエン GTSに挑むのはレヴァンテ S。ドイツメーカーとイタリアメーカーのバトルの結果はいかに。

ポルシェ カイエン GTSとマセラティ レヴァンテ Sの走行シーン

両車とも生半可な高級SUVではない。スポーツカーメーカーが造った逸品だ

スポーツカーブランドがクロスオーバーSUVを造る。20世紀には考えもしなかったことが21世紀のスタンダードになりつつある。この新しい価値観を提唱したのはポルシェだった。彼らが2002年に世に問うたカイエンが常識を覆したのだ。

当のポルシェはカイエンをSUVとは呼ばず、新しいスタイルのスポーツカーと呼んでいる。そんな前例に倣えば、レヴァンテもまた、一貫してマセラティが追求してきたGTスポーツカーの末裔なのだということができる。

ポルシェ対マセラティといえば往年のタルガフローリオのようなレースを想像する人もいるだろう。だが今どきのカードはカイエンとレヴァンテによるクロスオーバーSUV対決ということになる。

ポルシェ カイエン GTSのインテリア

ちょっとしたSUVの未来を見ているようなカイエンの佇まい

18年にデビューした3代目のポルシェ カイエン。そのラインナップに昨年加わったグレードが4.0リッターV8エンジンを搭載したGTSだ。このカイエン GTSの対抗馬として用意したモデルは3.0リッターV6エンジン搭載のマセラティ レヴァンテ Sである。

レヴァンテにもV8エンジン搭載のGTSというグレードが存在しているが、今回は試乗可能な個体が見つからなかった。だが4.0リッターツインターボで460psを提示するポルシェと、3.0リッターツインターボから430psを絞り出すマセラティという構図は、各々のブランドフィロソフィーを反映しているとは言えないだろうか? 今回の2台は、個人的にはガチンコ対決に思えたのである。

アルピナの3シリーズを試乗する時はいつも「自分は今セダンの規範をドライブしているんだ」といった改まった気持ちになる。3代目カイエンの試乗もそれに似ていて、ちょっとしたSUVの未来を見ているような気にさせられる。

ポルシェ カイエン GTSのエンジン

カイエン GTSは、いつもと同じようにどこにも弱点のない塊としてあった

今回最初にステアリングを握ったカイエン GTSは、いつもと同じようにどこにも弱点のない塊としてあった。街中をゆっくりと走らせても、首都高でペースを上げても、車体全体のぶ厚さだけがひしひしと伝わってくる。そこにあるのはエンジンの吹け上がりとかダンピングの落ち着きといった各々のギミックではなく、ひとつの生命体のような一体感だ。

カイエン GTSは走りに振ったグレードではあるが、今回の個体はそれに輪をかけてドライブコンシャスなスペックを与えられていた。80km/hで位相が切り替わるリヤアクスルステアリングやロールを制御するポルシェダイナミックシャシーコントロール(PDCC)、3チャンバーのエアサスを含むポルシェアクティブサスペンションマネージメント(PASM)という走りに効くオプションが装備されていたのである。

パワートレインの選択肢としてはさらなる上級グレードが控えているカイエンだが、ことシャシー性能に関してはオプションを追加したGTSでも「偉大なる到達点」と言えるはずだ。実際の試乗でも、クロスオーバーSUVらしい視界の良さはそのままに、スーパースポーツのように路面を掴んで離さない走りにクラスレスの印象を抱いた。

マセラティ レヴァンテ Sのインテリア

期待値をはるかに上回るクロスオーバーSUV、レヴァンテ S

レヴァンテに乗るのは久しぶりだった。デビューしたての頃にベーシックグレードに乗り、その後は18年に追加された最強モデル、トロフェオに数回試乗している。

初期モデルはシャシーの煮詰めが甘い感じがして、AWDシステムの捌きにもちぐはぐなところが散見された。このためフェラーリ謹製のF160エンジンの気持ちよさに触れる領域まで到達できなかった記憶がある。

一方のレヴァンテ トロフェオは、ハイオクガスよりもはるかに過激な液体が爆ぜているようなフェラーリV8ユニットの個性がクルマ全体の印象を覆っていた感があり、シャシー側の記憶がない。

今回はどうか? これが期待値をはるかに上回るクロスオーバーSUVだったのである。印象の8割を支配するのはやはりエンジンだった。回せば回すほど音色が高く澄んでいき、7000rpmのレブリミットに当てた瞬間にサチュレートする。「官能的なクロスオーバーSUV」という表現があるとすれば、それはレヴァンテのためのものだ。

マセラティ レヴァンテ Sのエンジン

「レヴァンテ Sはちょうどいい塩梅。乗り心地とスポーツ性能を両立させている」

しかもレヴァンテ Sはちょうどいい塩梅なのだ。というのも、V6ターボエンジンの刺激はトロフェオのそれよりも2気筒分ほど控えめなのだが、その穴を埋めるように年次改良が進んだシャシーが主張する。スロットルと後輪が直結しているような感覚で、ステアリングフィールもすっきりとしている。またストローク感が豊かで路面とのタッチがしっとりしているエアサスが、乗り心地とスポーツ性能を両立させている。

黄色いボディカラーがよく似合い、丸みを帯びたインテリアの意匠も艶めかしいレヴァンテ S。それと比べると、カイエン GTSは生真面目で男性的で少しも笑わない衛兵のように思えてくる。堅実なファミリーカーとして買うのであれば損はないが、クルマ好きの琴線に触れるようなチャームもあまり多くないのである。

ポルシェ カイエン GTSとマセラティ レヴァンテ Sのリヤスタイル

王道を行くカイエン GTSとドライバーを夢中にさせるレヴァンテ S

今回は都心での試乗だったが、レヴァンテ Sはぜひともワインディングで吠えさせたい1台だと感じた。一方カイエン GTSで遊び尽くそうと思うなら、サーキットに持ち込んで真剣にラップライムを追求する方が手っ取り早い。何しろシャシーに余裕があり過ぎて、ハンパなスピードでは無表情なままなのである。

王道を行くカイエン GTSとドライバーを夢中にさせるレヴァンテ S。スポーツカーブランドの本気がSUVシーンを熱くしているのだ。

REPORT/吉田拓生(Takuo YOSHIDA)
PHOTO/田村 翔(Sho TAMURA)

掲載誌/GENROQ 2021年 6月号

【SPECIFICATIONS】

ポルシェ カイエン GTS

ボディサイズ:全長4929 全幅1983 全高1676mm
ホイールベース:2895mm
車両重量:2145kg
エンジンタイプ:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:3996cc
最高出力:338kW(460ps)/6000-6500rpm
最大トルク:620Nm(63.2kgm)/1800-4500rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前285/40ZR21 後315/35ZR21
燃料消費率:15.3〜14.7L/100km
車両本体価格:1682万円

マセラティ レヴァンテ S

ボディサイズ:全長5000 全幅1985 全高1680mm
ホイールベース:3005mm
車両重量:2109kg
エンジンタイプ:V型6気筒DOHCツインターボ
総排気量:2979cc
最高出力:316kW(430ps)/5750rpm
最大トルク:580Nm(54.0kgm)/2000-4750rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前265/50ZR19 後295/45ZR19
燃料消費率:11.8〜12.2L/100km
車両本体価格:1360万円

【問い合わせ】
ポルシェ コンタクト
TEL 0120-846-911

マセラティコールセンター
TEL 0120-965-120