15番手からジャンプアップし笑顔の佐藤琢磨「ハードなレースで手の皮もむけるくらいだった」

 NTTインディカー・シリーズ第2戦のセント・ピーターズバーグはコロナの影響により3月7日から4月25日にスケジュール変更された。

 これによりインディカーシリーズは開幕3週連続開催となりタイトなスケジュールを強いられている。

 レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングの佐藤琢磨もアラバマから木曜日にフロリダ州に入り、セント・ピーターズバーグのレースに臨んだ。金曜日はFP1のみ、土曜日はFP2の後にすぐ予選と、走行時間が1セッション少なくなっている。

 過去にはここでポールポジションも獲得したことのある琢磨だが、レイホール・レターマン・ラニガンのチームと琢磨は、金曜のプラクティスからペースが上がらなかった。

 金曜日のFP1が18番手、土曜日のFP2が20番手と厳しいポジション。琢磨は「クルマが遅い。変えたら少しづつ良くなってるけど、まわりも良くなるからポンと順位は上がらないですよね……」と意気消沈。

 しかし琢磨とセッショントップのジョゼフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)とはFP1で0.6572秒、FP2では0.8286秒差でその間に20台近いマシンがひしめき合っている。0.1秒、0.3秒の差で大きく順位が変動する。

 予選はグループ1で臨んだがレッドタイヤでペースこそ上がったものの、グループ8番手でQ1通過ならず。総合でも15番手のグリッドとなった。

「データをよく見ると、スピードトラップの3カ所で、それぞれ0.1秒づつ遅い。コーナーでは頑張ってるんですけど、ストレートで合計0.3秒差がついてしまってる。決勝までに解決できればいいけど……」と悩んでいた琢磨。

 光明が見えてきたのは決勝日朝のウォームアップだった。30分間設けられたセッションの中で、琢磨は2番手のタイムをマーク。前レースのアラバマから通して今季初めてセッショントップ5入りだ。

 ブラック、レッドタイヤ共にスピードのあるところを見せている。前にいるのはポールポジションのコルトン・ハータ(アンドレッティ・オートスポート)のみだった。

 マシンを降りた琢磨は「大きな変更をしたわけではなく金曜、土曜とセッティングを進めて来た延長線上でひとつずつ見直して、ようやくスピードが戻ってきた感じ」

「実際のところグリッド全体の5~6番手くらいまで来たと思います。まだストレートスピードが遅いのは解消されてないけど、このスピードでうまくレースの作戦を考えてレースに臨みたいですね」と言う。

 15番手から琢磨のレースは始まった。アラバマのような多重クラッシュもなく、24台がクリーンなスタートを切った。オープニングラップで琢磨はポジションをふたつ上げ13番手でレースが始まった。

 前方ではトップのハータ、ジャック・ハーベイ(メイヤー・シャンク・レーシング)、ニューガーデン、シモン・パジェノー(チーム・ペンスキー)らが後続を引き離しにかかる。

 18周目、ジミー・ジョンソン(チップ・ガナッシ)のスピンで出たイエローコーションで、琢磨は前のジェイムズ・ヒンチクリフ(アンドレッティ・オートスポート)との差を詰めて、23周目のターン1でインに飛び込みヒンチクリフと接触!

 琢磨はそのままポジションを上げ、ヒンチクリフは右フロントタイヤにパンクチャーを起こしピットに戻ることになった。

 12番手でレースを続けた琢磨は、27周目にはパト・オワード(アロウ・マクラーレンSP)、ライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)も抜いて10番手に。

 その後29周目にリナス・ヴィーケイ(エド・カーペンター・レーシング)を 交わし、さらに前でグラハム・レイホール(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)とアレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)の接触もあって、最初のピットイン38周目には6番手まで浮上していた。

リナス・ヴィーケイを交わす佐藤琢磨
リナス・ヴィーケイを交わす佐藤琢磨

 レース前半はオーバーテイクの多い展開だったが、6番手に上がってからのレース後半はジリジリとした神経戦のようなレース展開になる。

 前を行くスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ)には届くような届かないような距離が続き、後ろから来るディクソンのチームメイト、マーカス・エリクソンはじわじわと差を詰めてくる。

 ディクソン、琢磨、エリクソンの3台は、2度目のピットインを終えても、その順位が変わらず、後はイエローコーションで流れが変わる時を待つしかなかった。

ピット作業でも前に出られずディクソンを追い続ける佐藤琢磨
ピット作業でも前に出られずディクソンを追い続ける佐藤琢磨

 80周目にエド・ジョーンズ(デイル・コイン・レーシング)のスピンでこの日最後のイエローコーションが出され、82周目にグリーンとなったが、琢磨はディクソンを抜くことが出来ず、追い上げて来るエリクソンを抑える防戦一方に。

 レッドタイヤで迫るエリクソンのペースが落ち始め、ミラーを気にしなくても良くなった頃には、ディクソンを追い抜くには不可能なギャップを築かれており、ほぼ勝負は決した。

エリクソンを抑えて走行する佐藤琢磨
エリクソンを抑えて走行する佐藤琢磨

 琢磨は予選15番手から6位まで9ポジション上げてゴール、100周のレースを終えた。ピットに戻ってマシンを降りるとクルーたちと健闘を讃えあった。

「金曜、土曜とスピードが足りなくて、今朝のウォームアップからようやく速さが戻って来て、5~6番手位のクルマと言ったように最後は6位でフィニッシュできました。前の方で接触もあったから、実質的には7~8番手くらいのスピードだったかもしれない」

「でも精一杯走ったし、コース上でも何台も抜いたからチームもみんな喜んでくれました。ハードなレースで手の皮もむけちゃうくらいだったけど、今日はこれは限界。スコットは速かったし、マーカスも追い上げて来たから抑えるの大変だったけど、頑張ってレースしましたよ(笑)」

 レース後はエンジニアのマット・グリーズリーや、どのクルーも笑顔で琢磨を迎えた。
 来週末のテキサスは3連戦の最後だが琢磨は「ハードなレースが続きますけど、テキサスの2戦をしっかり走って5月を迎えたいですね」と締めくくった。

レース後、担当の須藤メカニックとグータッチする佐藤琢磨
レース後、担当の須藤メカニックとグータッチする佐藤琢磨