新企画・スーパーGTドライバー勝手にお悩み相談ショッキング Vol.3 新田守男さん

 2021年も、ファンのために熱いレースを展開してくれるスーパーGTドライバーたち。SNS等でも散見されますが、所属するチームやメーカーによって差はあれど、多くのドライバーが“繋がり”をもっています。そんなGTドライバーたちの横の繋がりから、お悩みを聞くことでドライバーの知られざる“素の表情”を探りだす新企画をスタートしちゃいました! 今回は第1スティントの石浦宏明さんから第2スティントの阪口晴南さん、そして阪口さんから紹介された、新田守男選手に取材を敢行しました。

 しばしばSNS等でも見られる、気になる2ショット。「へえ、あのドライバーたち、仲良いんだ」とファンの皆さんも驚くこともあるのでは。そんなGTドライバーの繋がりをたどりつつ、ドライバーたちの“素”を探るリレートークのようなものができないか……? という企画が編集部内で出てきたのが2月。そこで、3月の岡山公式テストで第1回の取材を石浦宏明さんにお願いし、そこから阪口さん、そして新田さんに繋がっています。

 けっこう若者らしい“お悩み”を阪口さんから頂戴し、スーパーGT第1戦岡山の搬入日、チームのトランスポーターの中で影山正彦監督とおくつろぎ中の新田さんに突撃しました。ちなみにちょうどその時、阪口さんがトランポ内におり、「あっ! “あの取材”ですね(笑)。新田さんお願いします!」と嬉しそうに去っていきました。

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■新田さんの回答は『そのままでいいんじゃない?』

新田さん:なに。取材? 僕の?

──そうなんですよ。え〜、事情を説明しますと、オートスポーツwebで『笑っていいとも』の『テレフォンショッキング』的な企画をやりたいという話がありまして……。
新田さん:ふっ(笑)。ネタがないんだね?

──いや、そーいうわけでもないんですけどね(苦笑)。この企画のひとりめが石浦宏明さんで、第1回の石浦さんから、第2回は阪口晴南くんにいきました。その晴南くんに『次の人はどうする?』と聞いたら『新田さんに悩みを聞きたい!』と。
新田さん:なんで(笑)。晴南が?

──そうです。それで今回押しかけたわけです。
新田さん:僕が晴南の悩みに答えるということ?

──そういう取材でございます。晴南くんもああ見えて悩みがあるようですよ。
新田さん:ま、あるだろうね(笑)。

──晴南くんいわく『アスリートにはありがちかもしれないですが、今まで人の気持ちをそこまで深く考えない人間として育ってきてしまいました。ひとりっ子のB型なのでそういうことに疎く、知らないあいだに相手を傷つけているんじゃないか』というお悩みでした。
新田さん:ほうほう。

──なので『どうすれば人を思いやることができますか?』ということを新田さんにぜひ聞きたいとのことです。
新田さん:晴南には……無理じゃないかな(笑)。

──晴南くんは、このK-tunes Racingに加入したとき、新田さんがいろいろと晴南くんのアイデアを聞き入れてくれたりとか、エンジニアに対して晴南くんの発言が至らないときにも、新田さんが間に入ってカバーしてくれたりといろいろしてくれたので、晴南くんも将来後輩ドライバーができたときに『どうすれば新田さんのような人になれるのか?』と言っていました。
新田さん:あぁ〜、なるほどなるほど(笑)。真面目に答えるとしたら『そのままでいいんじゃない』ということだね。

■「もっとわがままになっていい」

──ほほう。そのココロは。
新田さん:僕が若い頃、人に気を遣えていたかといったら、そんなに遣えたようには思わない。(晴南の)立場的に言っても、こんな歳で乗っているオジさんと一緒にパートナーを組むことになったら、『僕に負けているようではトップにはいけない』ということを彼にはよく言ってるのよ。

 晴南だけじゃなくて、いろいろな選手に『僕より速くなかったら、それは上にはいけないでしょ』という自分のなかでの基準で見ているわけ。そういう意味では晴南も自分を出して欲しいし、僕なんかも若い頃は、『自分がプロだと思うのならわがままでいろ』と、それこそ師匠たちに教わったからね。

 ただわがままでいる代わりに、ちゃんとその『わがままを成績に結びつける』ということ。要するに、優勝してしまえば自分のやってきたことがなんでも許されるという訳ではないけれど、レースの世界というのは『勝てばいい』の。おかしな話だけどね(笑)。

 そういう点では自分を出したり、自分が思っていることを僕たちが単に吸い上げたり、否定するのではなく、晴南ができる範囲でやらせてあげるほうが良いと思うんだよね。だからそれを実行しているだけ。そういう意味で、“今”はそのままでいいんじゃないかと思う。

──“今”は?
新田さん:今はね。だけど晴南に後輩ができたり、例えば今もGT500でドライブしているわけでしょ? そのときにも、平川(亮)に負けないように一生懸命やらないといけない。いろいろな手を使って自分の速さをアピールしなければいけない。

 あいつはちょっとズル賢いから、細かい言葉や、シートを変えたいなど言って、自分が有利になるようなことを言うかもしれない(笑)。けれど、それを受け入れてもらう存在になるということ自体が、彼を認めてもらっている証拠になる。だから僕はそのままでいいんじゃないかなと思う。

 今の37号車の環境で、晴南がいかに平川に追いついて、いかに平川を追い抜けるかということ。わがままだからできるんじゃなくて、わがままが通用するスキルを持つこと。そこで頑張ってもらって、今はあんまりレースの世界で『自分は他人の気持ちが分からない』という風には、モータースポーツの場では思わなくていいんじゃないかな。

──なるほど。
新田さん:今後晴南が頑張ってAドライバーになって、自分をサポートしてくれる、もしくは自分と一緒に勝つためのパートナーが現れたとき、今までのキャリアで下と言ったら変だけど、仮にキャリアが晴南より低いドライバーが入ったときに、きっと自分がやってきたことを相手に対しても考えるようになると思う。それが自然にできるようになってきたとき、晴南がいろいろな意味で本物になれるんじゃないかと思うよ。

 シングルシーターだったら相手のことを全然考えなくてもいいじゃない。ただ、スーパーGTだとふたりで乗ることになるし、スーパー耐久や、例えばこれからル・マン24時間とか長距離レースにもし出ることになったら、いろいろなドライバーがいるなかで一緒に戦わないといけない。

 なので、上手にそういったバランスを自分のなかで見ながら、要するに自分が評価される立場、自分の目で自分を見るのではなく、まわりから見られたときにどう感じるか、ということをうまくバランスさせれば、今はわがままでもいいんじゃない? と思う。

スーパーGT第1戦岡山ではKeePer TOM'S GR Supraを駆り、ポールポジションを獲得した阪口晴南
スーパーGT第1戦岡山ではKeePer TOM’S GR Supraを駆り、ポールポジションを獲得した阪口晴南

■恋愛すればいいんだよ!

──貴重なお言葉ありがとうございます! あと晴南くんは、友だちに対しても『他人の気持ちが分からない』ところがあるんじゃないかと怯えていました。
新田さん:プライベートはね、結構そういうところあるよね(笑)。

──ありますか。
新田さん:まぁ、プライベートに関してはもっと考えたほうがいいかも(笑)。プライベートで勝ち負けはないから、もう少し人の気持ちを考えて動いてもいいかなぁ、と思うね。でも、言うほど人の気持ちが分からないような子ではないとも思うよ。言い方は悪いけど、愛嬌がある。あとは、単にちょっと人見知りするんだよね。晴南の性格を知った人からすれば、その愛嬌が彼の良さだったりする。でも、それが成り立つのは22歳くらいまでかな。

──あと1年じゃないですか(笑)。
新田さん:その1年の間に、プライベートの部分ではもう少し大人になるというかね。まあ、恋愛をしてみてもいいんじゃない?

──あ〜、それは大事ですね!
新田さん:恋愛をして、痛い目にあえばいいんじゃない?(笑)

──たしかに! そうしないと人の気持ちは分からないですよね。
新田さん:でしょ? 僕は痛い目にあってる側だから、そんなことを言える立場ではないけど(笑)、たぶんそのあたりなんだよね。

──なるほど。ちなみに晴南くんの代わりにK-tunes RC F GT3に乗る平良響選手はどんなタイプですか?(と平良選手が横にいたので振ってみました)
新田さん:これはねぇ……。『ザ・沖縄』ですよ(笑)。あのね、沖縄の人をそこまでよく知っているわけじゃないけど、もう時間が沖縄ね。なんというか、時の流れが我々とは違う感じがする。だから僕は好き。でも人見知りが結構あるのかも。

──そうですかね?
平良さん:いや〜……たぶん(人見知りは)ないですね。
新田さん:ないの!?

──私は割とすんなり取材の時に話せましたよ。
平良さん:新田さんにだけかもしれないです(笑)。
新田さん:……だって“ド無視”されますよ。
平良さん:しないですよ……ね!?
新田さん:挨拶とかは苦手なタイプだね。
平良さん:あっ、はい……。
新田さん:だけど、晴南とは全然キャラが違うね。若い子たちは大なり小なりライバル視しているから、それもあるかもしれない。けど、やっぱり響は完全に沖縄人だね。

10Cピット 96 K-tunes Racing 新田守男/平良響 レーシングスーツ:グループエム
K-tunes Racing
新田守男/平良響

■気になる次のバトンは誰に……?

──話は変わりましてですね。新田さんは最近悩みなどございますか?
新田さん:僕はね〜。まったく悩みがないんですよ。悩みをもたないようにしてる。

──なるほど。そうなるとですね、この企画が終わってしまいまして(笑)。
新田さん:最終回だ!

──いやいやご勘弁を(笑)。そんなこんなで、次はこんな悩みを聞いてみたいというお友達を紹介していただきたいな〜と思っているんですが。
新田さん:たくさん悩みがある人は知ってるけど、その人でいい?

──……いいですよ(この口調、もしやあの人では……)。
新田さん:高木真一しかいないでしょ!

(一同爆笑)

──やっぱりそうなりますよね(笑)。でも高木さんはあまり悩んでいる感じがしないんですが。
新田さん:あれはね、結構悩んでいると思う。

──そうなんですか。単にレースか釣りばかり嗜んでいる方ではないと。
新田さん:ああ見えてね。僕は悩みがないというか、悩みを人にあまり出さないし、出せないというのが悩み。

──ではそれをちょっと真一さんにぶつけてみましょう。
新田さん:僕は悩みを結構自分のなかで全部処理しちゃうタイプ。それはたしかに直したいんだけどね。だからといって僕の悩みをオニイ(影山監督)に伝えたとして、優しく支えてくれる気がしない(笑)。たぶん悩みと捉えてくれないと思う。
影山監督:そうかぁ? 何年付き合ってると思ってるのよ。22〜23歳のときから付き合ってるのに?
新田さん:その間にたくさん悩みがあったんだけどな〜。
影山監督:えっ!? 悩みなんかあった? 俺が気がついてないだけ?
新田さん:そう! 本人についての悩みもあったのに、それも気づいてもらえない!
影山監督:俺が原因の悩みもあったの? マジか(笑)。

──なるほど。いい繋がりができました。
新田さん:最後に、さっきの晴南の話に戻っちゃうけど、変な話、言い方は悪いけど、もっともっとわがままになっていいよ。『人の気持ちが……』とは話がズレているのかもしれないけれど、例えばレースの環境においては、もっと自分のわがままを通せるようになるくらいの選手に晴南がなれたら良いんじゃないかな。

──そういう環境を作るのも一流のドライバーですよね。
新田さん:そう。でもそれにはやっぱり実力が伴っていないとダメなわけで、その実力に見合った『あいつがこう言うなら仕方ないよな』という、そういうドライバーになってもらったらカッコいいんじゃないかな。

 やっぱり日本の歴代のトップドライバーの人たち、僕たちの大先輩の人たちは、みんなそういう感じのイメージじゃない。やっぱり憧れる存在だし、晴南はそういう存在になっていいだろうし。あとはプライベートの部分だけじゃないですか? 仕事とプライベートでは『違う人』になったほうが良いという結論で! プライベートは人の気持ちはちゃんと考えて(笑)。……ってこんな取材で良かったのかな?

──バッチリでございます。今日はありがとうございました〜!

17Bピット 55 ARTA 高木真一/佐藤蓮 レーシングスーツ:スパルコ
55 ARTA
高木真一/佐藤蓮

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 というわけで、次回は高木真一選手に繋がりましたので、取材を申し込んでおきます。次回もお楽しみに!