目指すは新車GR010ハイブリッドのデビューウイン。トヨタ、WEC新時代の開幕戦スパに挑む

 WEC世界耐久選手権の新しい時代が2021年からスタートする。その幕開けは5月1日の今季第1戦スパ・フランコルシャン6時間レースだ。このレースで“ハイパーカー”時代を戦う新車『トヨタGR010ハイブリッド』をデビューさせるTOYOTA GAZOO Racingは、ディフェンディングチャンピオンとしてシリーズの王者防衛とル・マン4連覇、そして開幕戦でのデビューウインに挑戦する。

 グループC、それに続くLMPの後継カテゴリーとして誕生し昨シーズンまでスポーツカーレースの頂点に君臨し続けたLMP1に代わり、今シーズンのWECはル・マン・ハイパーカー(LMH)という新規定の下にハイパーカークラスが設けられ、新たな時代を迎えることになった。

 そんなWECにはトヨタとスクーデリア・キャメロン・グリッケンハウスが2021年最初のマニュファクチャラーとして参戦し、今季に限りLMP1カーを走らせるアルピーヌが3社目のライバルとして参加し、同じクラスを戦っていく。なお、2023年以降にはこれにプジョーとフェラーリが加わり、かつてのライバルであるアウディとポルシェも相互参戦が可能なLMDhカーを用いて参加する可能性がある。

 シリーズ2連覇、ル・マン24時間レース3連覇中のトヨタは、LMHをトップクラスとするこの新時代に向けて新型マシンを開発。今年1月、トヨタGR010ハイブリッドと名付けられた、まったく新しいハイパーカーを発表した。

 その名のとおりハイブリッドシステムを搭載するGR010ハイブリッドだが、最大1000馬力を発揮した先代のLMP1カー『トヨタTS050ハイブリッド』とは多くの部分で異なる。

 例えば、前輪を駆動するのモーターのアシストは120km/h以上でしか利用できず、最高出力も3.5リットルV6ツインターボエンジンと合わせて680PSに制限されているのだ。その一方で燃料消費の制限が撤廃されており、最高速度がこれに影響されることがなくなった。

 この他、車両サイズの大型化や162kgの重量増などにともないドライバーたちは、これまでとは異なる操作を要求されることになる。トヨタGR010ハイブリッドをシェアするドライバーラインアップは昨シーズンから変わらず。世界選手権タイトルを獲得したマイク・コンウェイ/小林可夢偉/ホセ-マリア・ロペスがチャンピオンカーの7号車に、ル・マン3連覇中の8号車にはセバスチャン・ブエミ/中嶋一貴/ブレンドレン・ハートレーが乗り込む。

■新車のデビュー戦の前に「狙いどおりのすべてのテスト項目を完了できた」

「ハイパーカーによる耐久レースのエキサイティングな新時代が始まりました。ル・マンでは多くのトップチームと競い合うことになります。ファンの皆さまはそれを心待ちにしていると思いますし、我々も同じ気持ちです」と語るのは、村田久武TOYOTA GAZOO Racing WECチーム代表。

「TOYOTA GAZOO Racingが、この新時代のスターティンググリッドに立てることを誇りに思います。我々のWECプロジェクトの第一段階を締めくくったTS050ハイブリッドでは、レーシングハイブリッド技術の向上に徹底的に取り組み、お客様のための“もっといいクルマづくり”に繋げてきました」

「ここからは第二段階に入り、将来、もっとエキサイティングなスポーツカーをお客様にお届けできるよう、レーシングハイブリッド技術の限界をさらに押し上げ、ふたたび“ワンチーム”で戦っていきます」

トヨタTS050ハイブリッドに代わってWECの最高峰クラスに投入されるトヨタGR010ハイブリッド
トヨタTS050ハイブリッドに代わってWECの最高峰クラスに投入されるトヨタGR010ハイブリッド

 チームのテクニカル・ディレクターを務めるパスカル・バセロンは、トヨタGR010ハイブリッドについて「TS050ハイブリッドと比較すると、車重やパフォーマンスのパラメータに大きな違いがあり、新たに必要となるシステムもまったく異なるため、エンジニア、ドライバーの双方ともに短期間で多くのことを学ぶ必要があった」と述べた。

「2020年10月にポール・リカールでGR010ハイブリッドを初めて走らせて以来、集中的なテストプログラムをこなし、クルマのキャラクターと新たなミシュランタイヤについて着実に学んできた」

「テストにおいてはよくあることだが、時には順調にいかないこともあったが、最終的には目標としていた走行距離をこなすことができ、デビュー戦の前に狙いどおりすべてのテスト項目を完了できた」

■小林可夢偉「予想外の驚きもあるかもしれません」

 WEC第1戦スパ・フランコルシャン6時間に向けたTOYOTA GAZOO Racing WECチームドライバーのプレビューコメントは以下のとおりだ。

■7号車トヨタGR010ハイブリッド

●小林可夢偉
「今の難しい世界状況のなかで、またレースができることをとてもうれしく思います」

「決して理想的な環境ではありませんでしたが、チームは素晴らしい仕事でGR010ハイブリッドの改良を進め、デビュー戦への準備を整えてくれました。我々はテストの中でクルマについて多くを学びました。新型車両投入時にはよくあることですが、予想外の驚きもあるかもしれません」

「これから実際のレースを戦い、コース上のトラフィックや、ハイパーカークラスの強力なライバルとの中で新型GR010ハイブリッドがどれだけ戦えるのか、その挑戦を楽しみにしています。

●マイク・コンウェイ
「新しいシーズン、そして新たなハイパーカーの時代が始まることにワクワクしている。最高のチームメイトである可夢偉とホセ、そして素晴らしいチームに恵まれ、タイトル防衛という目標に向けて準備は万端だ」

「GR010ハイブリッドではすでに多くのテストをこなしてきているが、最高の性能を引き出すためにはさらにやるべきことがあり、改良を続けていかなくてはならない。スパはそのためにも重要なステップであり、レースがとても楽しみだよ」

●ホセ-マリア・ロペス
「マイク、可夢偉とともにワールドチャンピオンを獲得した昨シーズン最終戦のバーレーンからずいぶん長い時間が経ったように感じる。もちろんその時も最高の気分だったが、ふたたびレースを戦い、タイトル防衛、そして今度こそル・マンで勝つために戦う時がきた」

「このような困難な状況下にもかかわらず、チームはハードワークでこのスパに向けてGR010ハイブリッドの準備をしてくれた」

「まったく新しい車両を開発するという挑戦は常に素晴らしい体験だが、まだその途上だ。我々はスパで力強いパフォーマンスを示し、さらに改良していくため努力を続けていく」

耐久テストを行うトヨタGR010ハイブリッド 2021年4月ポール・リカール
耐久テストを行うトヨタGR010ハイブリッド 2021年4月ポール・リカール

■8号車トヨタGR010ハイブリッド

●中嶋一貴
「GR010ハイブリッドでの初めてのレースへ向け、スパに向かうのが楽しみです」

「この冬はなかなか大変でした。特に僕個人は、幾つかのテストを日本でのレース活動のために休む必要があり、そしてようやく参加できたアラゴンのテストは雪で走れませんでした」

「このような状況で、すべてが順調ではありませんでしたが、チームは懸命な作業でハイパーカー時代の開幕戦へ向け、GR010ハイブリッドを準備してくれました。チームの誰もがこの新たな挑戦を楽しみにしており、もちろん簡単ではないでしょうが、成功すると信じています」

●セバスチャン・ブエミ
「長い冬季オフシーズンの準備期間を経て、ついにスパでのプロローグとデビュー戦を迎えられるのはとてもうれしいよ」

「新型のGR010ハイブリッドとハイパーカーによる耐久レース新世代を、ファンのみんなもとても楽しみにしていると思う」

「今年初めから複数回のテストをこなしてきたが、最初はクルマについて知ることから始め、ル・マンへ向けたセットアップの調整ができるまでにいたった。デビュー戦への準備は万全で、一刻も早くハイパーカーカテゴリーでライバルと戦いたい」

●ブレンドン・ハートレー
「新たなハイパーカー時代の最初のレースに向けての広範囲で大規模なテストプログラムを終え、充分な準備ができたと感じている。我々チームだけでなく、ファンのみんなの間でも、どんなレースになるのか、どれだけ接近したレースになるのかといった期待が高まっていることだろう」

「誰もが素晴らしいサーキットであるスパで、ハイパーカーによる最初のレースを戦うことを楽しみにしているんだ」