明暗分かれた大物ルーキーたちのインディカー開幕戦。グロージャンは対応能力の高さをみせる

 バーバー・モータースポーツパークで開幕した2021年のNTTインディカー・シリーズ。2019、2020年とルーキー当たり年だったが、2021年は異色のドライバー3人がルーキーとして参戦する。

 ニュージーランド出身の27歳のスコット・マクラフランは、オーストラリアV8スーパーカーでDJRチーム・ペンスキーから出場して3年連続チャンピオンになり、インディカーにチーム・ペンスキーから出場するチャンスを与えられた。

 3人いるルーキーだが、ルーキーらしいルーキーはこのマクラフランだけだ。

 もうひとつの強豪であるチップ・ガナッシ・レーシングが走らせるルーキーは、NASCARの最高峰シリーズで7回もチャンピオンになっているジミー・ジョンソンだ。

 ストックカーを引退した彼は、今季少年時代に憧れたインディカーに挑戦する。45歳で初オープンホイール。ちょっと心配になるが、ロード、ストリートコースのみの出場で、まずは様子を見る。

 ストックカードライバーならオーバルの方が馴染みが深いが、“インディカーでのオーバルレースは危険過ぎる”と家族に反対をされているという話。JJが本当に走りたいのはインディ500のはずだが……。

 JJの参戦が決まるや、カーバナという新進の中古車販売会社がスポンサーに名乗り出た。チームにとってはありがたい話で、4カー体制への拡大は、この資金があってこそ実現された。

 ストックカー・チャンピオンがインディカーで走るということで、アメリカでの注目度は非常に高い。

「ジミーのレースを観に来た」というファンもいたようだ。なお、彼のマシンをオーバルではトニー・カナーンが走らせる。

 そして3人目はF1から来たロマン・グロージャン。彼を起用するのはデイル・コイン・レーシング・ウィズRWRだ。

 F1で9年も走っていた35歳のベテランがインディカーにチャレンジして来るのは珍しい。フランス人ドライバーが3人目(セバスチャン・ブルデーとシモン・パジェノーがすでにいる)というのも驚きだ。

 グロージャンもジョンソンと同じで、ロード/ストリートのみに出場する。昨秋にF1で大事故を経験したばかりということで、オーバルも走る気満々だった彼が、参戦初年度はとりあえずはやめておく話になった。家族に心配させ過ぎてはいけない……ということで。彼のマシンにオーバルではピエトロ・フィッティパルディが乗る。

 この3人の中で、開幕戦のバーバー・モータースポーツパークで最も奮闘していたのがグロージャンだった。

 一度オフの間にテストで走っているとはいえ、予選の順位がイキナリの7番手。ソフトコンパウンドのレッドタイヤはテストでの使用が許されていないため、グロージャンは予選日に初めてレッドを履いて走ったが、ファイナル進出まであと一歩という見事なパフォーマンスを見せた。

パワステが装備されていないインディカー・マシンでも高いパフォーマンスを発揮したグロージャン
パワステが装備されていないインディカー・マシンでも高いパフォーマンスを発揮したグロージャン

 Q2で6番手だったアレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)とグロジャンの差は僅かに0.0690秒しかなかった。F1での豊富な経験が活かされているようだ。担当エンジニアがフランス人なのもプラスに働いているだろう。

 90周で争われた決勝は序盤に長いイエローコーションが出て、2ストップ作戦が可能となり、3ストップ作戦を選んだ面々は不利に陥った。

 グロージャンを走らせるデイル・コイン・レーシング・ウィズRWRは作戦力に定評がある。今回を見ても、新品のレッドタイヤ装着でのスタートは正解で、グロジャンがそのタイヤで30周以上のロングランをこなし、ブラックタイヤでの中盤、後半へと繋げた。

 グロジャンはアメリカでのレースを楽しんでいるようで、ピットではいつも笑顔を見せている。

 彼はレース後、「最高の1日になった。初めてのインディカーレースでトップ10入りを果たせた。トップ4と長時間に渡って戦うこともできた。ベストを尽くし、とても多くを学んだ」

「次戦のセント・ピーターズバーグでも頑張って、さらにレベルを上げたい。ローリングスタートにもっと慣れる必要がある」と話していた。次戦は彼にとってのインディカーでの初ストリートレースとなる。

 マクラフランは昨年の最終戦として開催されたセント・ピーターズバーグでのストリートレースに出場している。

 デビュー戦の結果は予選11番手、決勝22位というものだった。今回は初のロードコースだったが、予選12番手、決勝14位というリザルト。

 まだ存在感を示すことができていないが、今回はチームが3ストップ作戦を選んでしまったことも活躍できなかった原因だった。第2戦は一度レースをしているコースなので、違った戦いぶりを見せてくれそうだ。

名門ペンスキーでインディカーを学ぶスコット・マクラフラン
名門ペンスキーでインディカーを学ぶスコット・マクラフラン

 デビュー戦をもっとも苦しんだのはジョンソン。

 2回のプラクティスでは両方とも最下位の24位だったが、予選は21番手だった。それは23、24番手がクラッシュやコースオフで赤旗を出したジェイムズ・ヒンチクリフ(アンドレッティ・スタインブレナー・オートスポート)とフェリックス・ローゼンクヴィスト(アロウ・マクラーレンSP)だったからだ。

 ジョンソンが上回ることができたのは、インディカー2年目のダルトン・ケレット(AJ・フォイト・エンタープライゼス)だけだった。ジョンソンの予選タイムはポールポジションと1.1775秒の差があった。

 ストックカーでは同じレースで2種類のタイヤを使うことがないので、ジョンソンはハイパワーのオープンホイールに慣れることに加え、タイヤの使い方もマスターしていかねばならない。

 レースでもジョンソンは非常に苦しい戦いを余儀なくされていた。

 レース序盤に他車にパスされた直後に単独スピン。タービュランスの影響を受けてのことで、その後は走りが慎重になり過ぎてしまった。さらには、上位で争う人々に迷惑をかけないように……とレース終盤にはラインを譲りまくってさらにスピードダウンしていた。

 そんなジョンソンだったが、シーズン後半戦で彼が戦闘力をアップさせて来る可能性は十分にある。

 何より彼にはガナッシのマシンがあり、優秀なクルーがいて、データも豊富だ。チームメイトは3人もいる。

 その上、彼にはインディカーで4回チャンピオンになっているダリオ・フランキッティというコーチについている。第2戦セント・ピーターズバーグでは、生まれて初めてのストリートレースということで、またジョンソンは苦労をするのだろうが……、7度のNASCAR王者がどう成長をしていくのかも今季楽しみなところだ。

45歳のジミー・ジョンソン。今後の成長はいかに?
45歳のジミー・ジョンソン。今後の成長はいかに?