キャデラック XT4は「乗らなきゃ損」なコンパクトSUV! 渡辺慎太郎が試乗して痛感した実力をレポート

キャデラック XT4は「乗らなきゃ損」なコンパクトSUV! 渡辺慎太郎が試乗して痛感した実力をレポート

Cadillac XT4

キャデラック XT4

「左ハンドル」のススメ

過日寄稿したキャデラック CT5と同様にこのXT4も左ハンドル仕様で、もうこれだけでショッピングリストから外してしまう方が少なくないようである。確かに駐車場の発券/支払機やドライブスルーなどは右ハンドルが前提になっていて、日本では左ハンドルだと不便を感じることが多いから、左ハンドルのクルマがすっかり嫌われ者になってしまったのも理解できる。

でも振り返ってみると、80年代の“ガイシャブーム”のときには、「ガイシャ=左ハンドル」みたいな方程式がいつの間にか浸透してしまい、本国では日本と同じ左側通行/右ハンドルのイギリス車ですら、わざわざ左ハンドルを注文していたオーナーが多く見られたほどだった。その頃と比べたら、日本人の意識変化の振れ幅たるや驚くべきものだなあと思う。

キャデラック XT4のフロントビュー

仕事柄、ステアリングの位置なんて構っちゃいられない、というかこちら側には選択権がないもんで、右でも左でも(中央でも)それがクルマである限り運転しなくてはならない。で、左ハンドルのクルマと付き合ってみると悪いことばかりではないことに気が付く。たまにヒヤッとする自転車やバイクのすり抜けはたいていクルマの左側を通る場合が多く、ホイールとタイヤが面一になっているクルマを運転するときに気になる縁石や、無造作にこれでもかってくらい突っ立っている電柱は左側通行だと左側にある。

これら危険物に対して、ドライバーが左側に座っている左ハンドル車だとすぐそばで目視できてギリギリまでクルマを寄せることだって可能だから、意外と使い勝手がいい場面もあるのだ。そして何より、キャデラック XT4は「左ハンドルだから」という理由だけで切り捨ててしまうにはもったいないくらいよく出来ている。

キャデラック XT4のリヤビュー

ライバル勢よりずっとお手頃

これは我々自動車メディアにも責任の一端があるのだけれど、日本におけるアメリカ車の認知度は相変わらず低いと言わざるを得ない。「デカい」「(値段が)高い」なんてイメージもいまだに蔓延しているようだけれど、少なくともXT4にそれは当てはまらない。

XT4のボディサイズは全長4605mm、全幅1875mm、全高1625mm、ホイールベース2775mm。ライバルと目されるSUVはBMWのX3やメルセデス・ベンツ GLCやボルボのXC60だが、XT4の全長/全幅/全高/ホイールベースはそのいずれよりも小さい。それにもかかわらず後席のレッグルームはもっとも広いので、パッケージも優れているのである。無駄に大きいことこそがアメ車の美学とされていた時代を思い起こすと、現代のアメ車はすっかり様変わりしてしまったとあらためて実感する。

日本仕様のXT4はプレミアム(570万円)、スポーツ(640万円)、プラチナム(670万円)の3タイプが用意されている。これをライバルと比較してみると、それぞれの廉価モデルの価格はX3が675万円、GLCが708万円、XC60が639万円なので、XT4のプレミアムならX3やCLCより100万円以上も安いことになる。CT5の原稿にも書いたけれど、いまやアメ車の圧倒的アドバンテージは価格なのだ。

キャデラック XT4のコクピット

キャデラックSUVファミリーの末弟

キャデラックはすでに大きい順にエスカレード、XT6、XT5の3種類のSUVを展開していて、XT4はもっとも小さいボディを持つ。エスカレードは専用のアーキテクチャーを、XT6とXT5は共通の、そしてXT4にはあらたに専用のアーキテクチャーがあてがわれた。XT6/XT5のアーキテクチャーはミドルサイズ以上を想定したもので、そのまま小さくすると必要以上に重量がかさんでしまうというのが新規開発の主な理由のようである。サスペンションはフロントがストラット、リヤがマルチリンクで、スポーツには電子制御式ダンパーが標準装備となる。

駆動形式は4WDで、キャデラックはこのシステムを“ツインクラッチ式AWD”と呼んでいる。ひとつ目の湿式多板クラッチは前後のトルク配分を可変させるもので、100:0から50:50までをドライブモードのスイッチで切り替える。もうひとつのクラッチは後輪左右のトルク配分を可変させるもので、Eデフのような効果をもたらす。デフォルトのツーリングモードは前輪駆動である。

キャデラック XT4のエンジンコンパートメント

エンジンは2.0リッターの直列4気筒ターボで、230ps/350Nmのパワースペックを持つ。ターボはふたつの流路を有するツインスクロール式で、ターボラグのないスムーズな吹け上がりが特徴だが、4気筒エンジンでは珍しい気筒休止機構も備えている。最大トルクは1500rpmから発生するので、発進時から想像以上にパワフルな加速感が味わえる。

ちなみにXT4はエンジン横置きのレイアウトだが、CT5はこのエンジンを縦置きにして使っている。縦でも横でもいけるフレキシブルなユニットなのだ。組み合わされるトランスミッションはGM製の9速ATのみ。エンジンとの相性は抜群によく、通常はシフトショックのないマイルドな変速だが、スポーツモードにするとキレとダイレクト感が味わえるなかなかよく出来たATである。

キャデラック XT4のキャビン

コンパクトSUVにも高級車の魂を

今回は試乗会でプラチナムを試したが時間が短かったので、のちにスポーツも借り出した。若いデザイナーを中心にまとめたというXT4のスタイリングは、全体的にソリッドかつ適度に筋肉質という印象で、同時に現行のキャデラックのデザイン言語を踏襲したキャデラックにしか見えないスタイリングである。一方でインテリアは奇をてらわないオーソドックスな雰囲気で、急速にタッチパネルに乗っ取られはじめた最近のクルマと比べるとスイッチが多く映ってしまうが、場所やレイアウトは機能性が重視されているので、使い勝手に不満はまったくない。

スタートボタンを押すと前のほうでチョクヨンの元気な声が一瞬聞こえるものの、走り出すとそれがほとんど気にならなくなる。つまり走行時の静粛性は望外に高い。XT4は通常の吸音/遮音材に加えて、ラミネートガラスやプレミアムカーペット、アクティブノイズキャンセラーといったノイズ対策が徹底的に施されている。こういうところに、キャデラックの高級車ブランドとしての志の高さが窺える。インテリアの静的質感は全体的に高いが、巨大なシフトレバーやロータリー式スイッチの動的質感は改善の余地が残されているかもしれない。

キャデラック XT4のリヤビュー

イヤなところがひとつもない

XT4の乗り味はひと言でいえば“スッキリ”である。エンジンの吹け上がりとそれにシンクロするパワーデリバリーや、ステアリングフィールとクルマの挙動がいずれもレスポンスよく、無駄な動きや間もないからだ。リヤの可変式トルクデバイスのおかげもあって回頭性はすこぶるいいし、だからといってステアリングゲインをいたずらにあげたスポーティ仕様になっていないのもさらにいい。あくまでもステアリングの動きに対して従順に向きを変えてくれる上質なハンドリングである。

この時感じるのはボディの剛性感の高さ。シャシーと上屋のボディがしっかりひとつになった塊感が伝わってくる。もうひとつ印象的だったのは、ブレーキペダルの剛性感。踏力が適正で踏み応えがあり、十分すぎるほどの制動力を細かくコントロールできるようになっていた。

総じてXT4は、走る/曲がる/止まるでイヤなところがひとつもなかった。あとで借り出した「スポーツ」には電子制御式ダンパーが付いていたけれど、それが装備されない「プラチナム」と乗り心地に大きな違いは見られなかったので、やはり素性のいいボディとシャシーを持っているのだろう。スポーツでは約700kmのロングドライブを試したが、実はグランドツアラーとしての性格も持ち合わせていることが分かった。高速の直進安定性は文句なく、アクティブクルーズコントロールやレーンキープアシストの所作も自然で、疲労も少なく想像以上に快適だった、

これでもまだ、「左ハンドルだから」というだけでXT4に興味を持ってもらえないだろうか。

REPORT/渡辺慎太郎(Shintaro WATANABE)

PHOTO/北畠主税(Chikara KITABATAKE)、GM

【SPECIFICATIONS】

キャデラック XT4 プラチナム

ボディサイズ:全長4605 全幅1875 全高1625mm

ホイールベース:2775mm

車両重量:1780kg

エンジン:直列4気筒DOHCターボ

総排気量:1997cc

ボア×ストローク:83.0×92.3mm

最高出力:169kW(230ps)/5000rpm

最大トルク:350Nm/1500-4000rpm

トランスミッション:9速AT

サスペンション:前マクファーソンストラット 後マルチリンク

ブレーキ:前後ディスク

駆動方式:4WD

タイヤサイズ:前後245/45R20

車両価格:670万円(テスト車=689万2500円)

【問い合わせ】

GMジャパン・カスタマーセンター

TEL 0120-711-276