ニュースター誕生! パロウが移籍後初戦を制す。琢磨は苦しいレースに【詳報】インディカー開幕戦決勝レポート

 インディカーシリーズに新しいスターが誕生した。スペイン出身の24歳、アレックス・パロウ(チップ・ガナッシ・レーシング)だ。

 昨年、デイル・コイン・レーシング・ウィズ・チーム・ゴウでルーキーシーズンを過ごした彼は、フェリックス・ローセンクヴィストの抜けたガナッシのシートに抜擢され、そのチームでの移籍後最初のレース、2021年シーズン開幕戦のホンダ・インディ・グランプリ・オブ・アラバマで自身初優勝を飾った。

 清々しい青空の下、コースのある地域が定めるパンデミック下で集めて良い最多の観客数=2万人を前に全長2.3マイルのコースを90周するレースは繰り広げられ、日本のスーパーフォーミュラで戦っていたスペイン人ドライバーがウイナーとなった。

 もちろん彼にとってのインディカー初勝利だった。しかも、ウィル・パワー(チーム・ペンスキー)とスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)という現在シリーズに君臨している強者ふたりを後方に従えての堂々たる優勝だった。

一時は10秒の差をつけてトップを快走したアレックス・パロウ
一時は10秒の差をつけてトップを快走したアレックス・パロウ

 デビューから数えて15戦目。とても早い初勝利となった。ホンダが1994年にインディカー初優勝をアンドレ・リベイロのドライビングで記録した時のことが思い出された。

 ニューハンプシャーの表彰台でリベイロの左右に並んだのは、当時のアメリカを代表する二人のドライバーたち、マイケル・アンドレッティとアル・アンサーJr.だったのだ。

 今日、スペイン出身の24歳がキャリア初勝利を挙げて表彰台に立った時、彼の左右には歴代2位のポールポジション獲得数と歴代5位タイの優勝回数を誇るパワーと、タイトル獲得が歴代2位の6回、優勝回数が歴代3番目で、通算50勝のディクソンが並んだのだった。

「信じられない。神様!」とゴール時に叫んだパロウ。

「素晴らしいチームには、とても速いマシンがある。昨年弱点となっていた予選でのパフォーマンスをトップレベルにできていた。ファスト6にガナッシから3人のドライバーが入っていたんだ。それはオフの間のチームの頑張りによるものだよ」

「そして、レースウィークエンドを通してクルー全員が最高の仕事をしてくれていた。関係者みんなに感謝したい。今朝起きた時、自分に勝つチャンスがあることを改めて感じた。そして本当に勝つことができた。ホンダ・エンジンも最高だった。もうこれ以上望むものはないっていう体制だ」とパロウは初勝利に感激していた。

チャンピオンふたりの間で優勝トロフィーを掲げるアレックス・パロウ
チャンピオンふたりの間で優勝トロフィーを掲げるアレックス・パロウ

 ガナッシ勢はレース序盤にフルコースコーションが出たことで作戦を柔軟に変え、2ストップ作戦でゴールを目指し、勝利と3位フィニッシュという素晴らしい結果に繋げた。

 それに対してポールシッターだったパト・オーワード(アロウ・マクラーレンSP)と、予選2番手だったアレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)はレース前に決めていた3ストップで戦い抜きき、4位と9位という結果に終わった。

 オーワードの速さも目覚ましく、もし今回のレースがガチンコのスピード対決となっていたら、勝ったのは彼だったかもしれなかった。

ポールからスタートしレースをリードしたパト・オワード
ポールからスタートしレースをリードしたパト・オワード

 パロウはレース終盤、リードラップ最後尾のコナー・デイリー(エド・カーペンター・レーシグ)に追いつき、彼をパスできなかったためにパワー以下の接近を許してしまう。

 しかし、ここで冷静さを失わず、最終ラップで大きく差を縮めて来たパワーに0.4016秒差での勝利を手に入れた。スピードを備えているだけでなく、若手とは思えない燃費の良い走りができることがパロウの強さだ。

 5、6、7位でゴールしたのは中団以降のグリッドからスタートしたセバスチャン・ブルデー(AJ・フォイト・エンタープライゼス)、リナス・ヴィーケイ(エド・カーペンター・レーシング)、グレアム・レイホール(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)。

 彼らは1周目にジョセフ・ニューガーデンが引き起こした多重アクシデントでマシンにダメージを受ける不運に見舞われながら、イエロー中にピットに入って給油とタイヤ交換。これが福と転じて、残り周回数を2ストップで走り切ると、全行程2ストップの面々と結果的に同じ作戦で戦ったことになって、上位にポジションを保ったままゴールを迎えることができたのだった。

 F1で9シーズンも戦ったロマン・グロージャン(デイル・コイン・レーシング・ウィズ・RWR)は予選7番手、決勝10位という見事な結果をデビュー戦で残した。

終盤はいいペースを見せ13位で終えた佐藤琢磨
終盤はいいペースを見せ13位で終えた佐藤琢磨

 佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)は予選19番手から13位でのゴールを達成した。

 テレメトリー故障で燃費の詳細を把握できなかったため、2ストップではなく3ストップで戦わざるを得なくなった琢磨は苦戦を強いられた。レース序盤からはシモン・パジェノーと戦い、レース終盤はスコット・マクラフランとバトルしていた。

「レースの朝のウォームアップで得られた情報から決勝のマシンセッティングを決定。それは今週末で最も良いハンドリングを実現していました。それは良かったと思います。しかし、まだ絶対的なスピードが足りていません」

「今回は競争力のあるスピードを獲得できていなかったので、その理由が何なのかを解明し、次のストリートレースでは力強い戦いを繰り広げたいと思っています」と琢磨はレース後にコメントしている。