LEGOが導いた自動車開発。ルノーの革新的な駆動系「E-TECH」ハイブリッドの開発秘話 【動画】

LEGOが導いた自動車開発。ルノーの革新的な駆動系「E-TECH」ハイブリッドの開発秘話 【動画】

2020年から導入された「E-TECH」ハイブリッドパワートレイン

ルノーは、電気自動車の開発・販売において10年以上の実績を持つ。ここにF1をはじめとするモータースポーツからのフィードバック、高いモチベーションを持つ開発陣、テストチームが加わることで、革新的な「E-TECH」ハイブリッドパワートレインの開発に成功した。

E-TECHは軽量かつあらゆるサイズのクルマに対応し、最低でも31マイルのフルEVモードでの航続距離が確保されている。このシステムの導入により、あらゆる車種にハイブリッド技術を搭載することが可能になった。2020年からクリオ、キャプチャー、メガーヌの各モデルに導入。さらに新型クーペSUVの「アルカナ」にも搭載される。

このE-TECHの開発には一風変わったストーリーがある。ハイブリッド・アーキテクチャー・エキスパートであるニコラ・フレモーが組み立てたレゴ(LEGO)から、ある技術が生まれたと言うのだ。

レゴ・テクニックから生まれた、ルノー「E-TECH」ハイブリッドの革新的な駆動系

息子が遊んでいたレゴ・テクニックで駆動系を製作

ニコラ・フレモーは電気モーターをハイブリッドパワートレインのメインコンポーネントとし、EVモードでの発進を可能にしようとしていた。そのためには電気モーターとガソリンエンジンの間に、どのようなトランスミッションを搭載するかが課題となった。

シンプルでコンパクト、軽量であることが求められるなか、彼は画期的な解決策を思いつく。それはモータースポーツで使われるドグクラッチ技術を応用した、ギヤボックスシンクロナイザー付きのクラッチレス・トランスミッションの採用だった。

「息子が家でレゴ・テクニックのセットで遊んでいるのを見て、『なるほど、自分がやりたいことと、そう遠くないな』と思いました。それでレゴのセットを少しずつ買って、組み立てるのに必要なパーツを揃えたんです」

レゴ・テクニックから生まれた、ルノー「E-TECH」ハイブリッドの革新的な駆動系

実際の歯車や軸で組み立てられるレゴ・テクニック

レゴ・テクニックは、モーター、歯車や車軸などのパーツで構成される上級向けシリーズ。実際に作動する本格的なギヤボックスやエンジンなどを組みてることができる。フレモーはクリスマス休暇を利用して、メモに描き出していた革新的なトランスミッションをレゴ・テクニックで製作してみた。

「何をすればいいのか理解するために、まず実際にレゴで組み立ててみようと思いました。息子はちょっと驚いていましたが(笑)、20時間ほどでこのモデルが誕生しました」

レゴ・テクニックは、単に四角いブロックを組み合わせたものではない。フルモーは様々な種類の歯車や軸、トランスミッションリングを組み立て、台座に収めるように試行錯誤を繰り返した。さらにシステム全体をモーターで動かす必要もあった。これにより、エンジンの動作モードによる違いを実際に試すことができる。

様々な動作モードにトライしている過程で、フルモーは従来の理論的な分析では考えられなかった新しい動作モードを発見することができた。これによって革新的な技術面での解決策が発見できた上、レゴで作ったプロタイプにより自分が正しい道を歩んでいると確信できたという。そしてこのレゴ・テクニックで作られた駆動系は、ルノーの歴史において最も低コストで作られた試作モデルである可能性も高い。

「E-TECH」ハイブリッドパワートレインが搭載されたルノー・アルカナ

「レゴで可能ならば、実車でも上手くいく!」

フルモーはレゴ・テクニックで作った駆動系のプロタイプに自信を持っていた。しかしルノー傘下に入ったダキアにおいてシンプルで低コストな技術を熟知していたプロジェクトマネージャーのジェラール・デトゥルベと、リサーチディレクターのレミ・バスティアンに対して、プレゼンテーションを行わなければならない。それは一種の賭けだったと、フルモーは振り返る。

「ルノーは、特に研究開発に関してはいつでも非常にオープンな会社です。でもボスであるジェラールとレミの元に駆動系のプロタイプを持っていたった時、彼らがどんな反応をするのか、想像もつきませんでした」

「彼らはレゴで作られたモデルの周りを歩きまわって、実際に触れていました。そしてそれがオモチャではなく、本物であることを感じたようでした。私はジェラールの言葉が忘れられません。『レゴで作れるのであれば、きっと上手くいくだろう!』と言ってくれたのです」

ボスたちからの許可が出たことで、フルモーたちの開発陣はこのコンセプトをわずか18ヵ月で実車に搭載できるようにしなければならなかった。「開発部門にとってはかなりのチャレンジになりました。制御、機械設計など、あらゆる技術を結集したのです」と、フルモーは笑顔で語った。