想像もしていなかったロズベルグのF1引退。メルセデスのストラテジストは「非常にショックだった」と振り返る

 メルセデスF1のチーフストラテジストを務めるジェイムズ・ボウルズは、ニコ・ロズベルグが突然のF1引退を決断した理由について、4年以上経っても見当がつかないままだと語った。

 2016年のF1最終戦アブダビGPで、チームメイトだったルイス・ハミルトンとの決戦を制して世界タイトルを手にしたロズベルグだったが、そのわずか数日後、永遠にヘルメットを脱ぐと発表したことによって、モータースポーツの世界に激震が走った。

 最新のF1ポッドキャスト番組『Beyond the Grid』にメルセデスの同僚たちと出演したボウルズは、その後も優勝回数を重ねて、ひいては2017年のタイトル獲得さえも狙うだろうと思っていたロズベルグの決断に面食らったと明かし、メルセデスF1のチーム代表であるトト・ウォルフからこの情報を伝えられた“奇妙な瞬間”を振り返った。

「トトにオフィスへ呼ばれたとき、我々には何の用件だかまったく分からなかった」とボウルズは語った。

「もしもそこでトトに『私がこれから何を言うと思うか、5つ挙げてみろ』と言われたとしても、ニコの引退などリストに入るわけがなかった」

「あれはとにかく奇妙な瞬間だった。いまだに、なぜ彼が契約解除を申し出ようと決めたのか、その答えを見つけることは非常に難しい。なぜなら、仮に彼がもうルイスを打ち破って王者になれないとしても、良いマシンに乗れていたし、優勝ならできたかもしれないし、素晴らしい成績を挙げているチームの一員でいられたはずだからだ」

「ただ、そこには非常に個人的な事情があったのだろう。彼はもう望んでいたものを手に入れていたわけだしね。それでも、その知らせは非常に大きなショックだった」

ニコ・ロズベルグ(メルセデス)
2016年F1第21戦アブダビGP ニコ・ロズベルグ(メルセデス)

 周囲から何年にもわたってグリッド復帰を勧められても、ロズベルグは道を変えることをせず、レーシングドライバーとしての日々に終止符を打つとした自身の決断を貫いてきた。2016年の世界王者は、それ以降「環境問題を重視する」企業家として、電気モビリティ領域を中心としたサスティナブル技術に投資してきた。

 とはいえ、ロズベルグの競争心はいまも旺盛だ。最近では、電動SUVによる新たなオフロード選手権『エクストリームE』に、自身が創設したロズベルグ・エクストリーム・レーシング(RXR)で参戦し、サウジアラビアで行われた初戦で勝利を収めた。

 引退当時、ロズベルグは2016年のF1最終戦に先立ってその意志を固めていたものの、ある時点で自分にその決断を実行に移す勇気があるのかと迷ってしまったと語っていた。

「日曜日の決勝レースをひかえて何よりもはっきりしていたのは、今日はここで勝利する、これが自分にとって最後のレースだ、だからこれを満喫しようという思いだった」とロズベルグは説明した。

「そう思うと、大きなプレッシャーも少し和らいだんだ。それはとても良いことだった。だけど、シグナルが消灯した瞬間にその気持ちも消え失せた。なにしろ、あれは自分の人生でもっとも強烈でクレージーでタフなレースだったのだからね」

「あとは、月曜日に引退へ向けたプロセスをたどれば良いだけだった。でもやはりその勇気を出すまでには少し時間がかかった」

「子どもの頃の夢はかなえたし、これからまた1年間、同じようなコミットメントを続けるつもりはなかった。4位だとかそういった順位に興味はないからね。僕はファイターだし、勝ちたいんだ」

2016年F1最終戦アブダビGP
2016年F1最終戦アブダビGP 初タイトルを獲得したニコ・ロズベルグと妻のビビアンさん