最新ジャーマンプレミアムサルーンを比較試乗! 新型SクラスはBMW 7シリーズとアウディ A8を圧倒するか?

最新ジャーマンプレミアムサルーンを比較試乗! 新型SクラスはBMW 7シリーズとアウディ A8を圧倒するか?

Mercedes-Benz S 400 d 4MATIC × Audi A8 60 TFSI quattro × BMW 745e

メルセデス・ベンツ S 400 d 4マティック × アウディ A8 60 TFSI クワトロ × BMW 745e

一頭地抜け出せ!

現実的オーナーカーとしては最大級のボディサイズを持つこのセグメントは、強力なライバルがひしめく激戦区だ。中でもBMW7シリーズ、アウディA8はSクラスの牙城を崩すべく、その性能に磨きをかけている。新しくなったSクラスは、彼らの攻撃をどのように迎え撃つのか。ドイツ御三家の新たな勢力図に注目したい。

メルセデス・ベンツ S 400 d 4マティックの走行シーン

「進化を続けるプレミアムサルーンだが大切なのはそれぞれの世界観ではないか」

IT技術の目覚ましい進化により、驚くべきスピードで新機能が追加されているプレミアムサルーンの世界。しかし、本当に大切なのは「そこで表現されている世界観」にあるのではないか。プレミアムサルーンであれば、この点がなおさら重要であることは言うまでもない。

メルセデス・ベンツ、BMW、アウディのドイツ・プレミアム御三家のフラッグシップサルーンに君臨する3台にも最新技術が満載されているが、ここでは敢えて「それぞれの世界観」に着目しながら、Sクラスとライバルたちのキャラクターを解き明かしていきたい。

まずはSクラス。試乗したのはS 400 d 4マティックである。

全体的なプロポーションはゴードン・ワーグナー流で尻下がりのエレガントなもの。最新のデザイン言語に従ったボディサイドはプレスラインが控えめで、前後の造形からも“ワーグナー色”が減った。端正で落ち着いているともいえるし、やや個性が薄れたともいえるだろう。

メルセデス・ベンツ S 400 d 4マティックのインテリア

「Sクラスの操作に困ったとき、大きな助けになってくれるのがMBUX」

インテリアは伝統的な高級車の内装と最先端のデジタルテクノロジーが激しくせめぎ合っている。おそらく、デジタル世代にとっては扱い易くて親しみやすく、それ以上のシニア世代には「どこを操作したらいいかわからない」という混乱を招くものかもしれない。もっとも、苦手意識を持つ世代も勇気を持って触ってみれば意外に簡単に操作できたということもありうる。要は「わからなくても、とにかく触ってみる」というスマホ感覚が大切なのだ。

Sクラスの操作に困ったとき、大きな助けになってくれるのがMBUXだ。この音声認識を中心とするユーザーインターフェイスは、自由な発話でもAIがその意味を自動的にくみ取ってくれるところに最大の価値がある。実は私もナビゲーションシステムの目的地設定モードから地図モードに変更する方法がわからなかったとき、「ハイ、メルセデス! 地図を表示して」と指示して事なきを得たことがあった。

メルセデス・ベンツ S 400 d 4マティックのリヤシート

「ただひたすら静かで滑らかなディーゼルエンジンの圧倒的な静粛性」

走り始めてからの最大の驚きは圧倒的な静粛性の高さにあった。もはやディーゼルでも始動時に身震いすることもなければ、加速時にノック音に似たノイズを発することもない。ただひたすら静かで滑らか。しかもスロットルレスポンスが自然で、トルク特性は徹頭徹尾フラットだから、ますますガソリンかディーゼルかがわからなくなってくる。

乗り心地はしなやかで快適。シーンによってはちょっとダンピング不足に感じることもあるが、そんなときはスポーツモードに切り替えればボディはフラットに保たれる。さらにスポーツ+に切り替えればワインディングロードでも不満のないハンドリングを示した。

メルセデス・ベンツ S 400 d 4マティックとBMW 745eの走行シーン

「745eでコーナーを攻める作業には、どこか心浮き立つものがある」

続いて試乗したのはBMW 745e。こちらは直6ガソリンエンジンをベースにしたPHVだが、S 400 dとの価格差はおよそ100万円で好敵手といえる。

745eのサスペンションはまるでSクラスを標的にしたかのようで、驚くほど快適志向が強い。Sクラスと違って標準のハイブリッドモードでもフラット感が物足りなくなることはないが、ワインディングロードで深いバンプを強行突破するとボトミングのような症状を示した。

BMW 745eのインテリア

「7シリーズはドライバーの細やかな操作にも的確に反応し自分で操っている実感が強い」

それでも、745eでコーナーを攻める作業には、どこか心浮き立つものがある。ペース自体はSクラスと大差ないのだが、7シリーズはドライバーの細やかな操作にも的確に反応してくれて、自分で操っている実感が強い。豊かなステアリングフィールもこの傾向に拍車をかけていた。

そこで「もしや?」と思って車検証を調べたところ、前後重量バランスは49対51で7シリーズがもっとも50対50に近く、Sクラスは54対46でこれに次いだ。そして後述するA8は唯一V8を積んでいることもあって56対44と苦戦。もちろん、この数字だけですべてが決まるわけではないが、ひとつの指標として記憶しておくといいだろう。

メルセデス・ベンツ S 400 d 4マティックとアウディ A8 60 TFSI クワトロの走行シーン

「変幻自在なサスペンションでコーナリング中は足まわりを意外なほどハードにできるA8」

残るA8は60 TFSI クワトロというモデルをチョイスした。価格は2台よりもおよそ250万〜350万円高い1552万円となる。

A8の乗り心地は不思議だ。バネ下はしなやかに路面に追随しているのに、ボディは完璧にフラットな姿勢に保たれるのだ。これはS8にも搭載されているAIアクティブサスペンションの効果といえる。

この変幻自在なサスペンションの恩恵で、コーナリング中は足まわりを意外なほどハードな設定にできるのがA8のもうひとつの特徴。これがクイックなステアリングと相まって3台中もっとも機敏な反応を示した。クワトロ=フルタイム4WDの恩恵でスタビリティもすこぶる高いが、そういった感触がどこか人工的に思えるのも事実。ボディというよりも足まわりの剛性感がやや物足りなく感じられるのもA8の弱点だ。

アウディ A8 60 TFSI クワトロのフロントスタイルのインテリア

「7シリーズとA8は先代の延長線上にあるがSクラスは大きく方向性を改めたようだ」

では、3台の世界観とはどのようなものだったのか?

いちばんデジタル化が進んでいるのはSクラスだ。多くの液晶ディスプレイに囲まれ、音声認識でクルマとコミュニケーションしていると、自分がいかにも先進的なクルマに乗っているような感覚を味わえる。

ただし、シャシー性能や動力性能といった面に目を向けると、Sクラスには伝統的なメルセデス・ベンツの価値観が色濃く残っている。つまり、快適性や安全性を最優先する思想だ。そうしたメルセデスが長年培ってきた価値観をベースに、先進的なテクノロジーを散りばめたところに新型Sクラス最大の特徴はある。

7シリーズにはこれみよがしなところがなく、フラッグシップサルーンらしい落ち着いたたたずまいを見せる。その走りにも派手なところがないが、注意深く観察すればBMWらしいこだわりが随所から感じられる。その意味でいえば通好みなプレミアムサルーンだ。

走りの面で最も先進的なのはA8だ。しかも、そうした先進性を隠そうとしていないところも2台とは大きく異なる。つまり、味付けは濃いめ。クルマ好き、テクノロジー好きに支持されそうな仕上がりだ。

率直にいって、7シリーズとA8は先代の延長線上にあるが、メルセデスは大きく方向性を改め、ターゲットの年齢層をぐっと下げたように思える。これが吉と出るか、凶と出るかで、フラッグシップサルーンの新たな勢力図が決まることだろう。

メルセデス・ベンツ S 400 d 4マティックとアウディ A8 60 TFSI クワトロとBMW 745eのリヤスタイル

「総合評価は、後席居住性と先進性でSクラスが他をリード」

Sクラスと7シリーズのADASは甲乙付けがたいが、7シリーズはハンズオフ機能を有していることで10点とした。A8のエンジンはレスポンスが鋭く、高回転域でのドラマ性が強いことを積極的に評価。ハンドリングについては、7シリーズはステアリングフィール、A8はステアリングレスポンスで、それぞれ評価した。

見かけ上の数値は横並びとなった乗り心地だが、そのキャラクターは本文で述べたように大きく異なる。それぞれに完成度は高いものの、Sクラスはフラット感不足、7シリーズはボトミング、A8は剛性不足が弱点。先進性はヒューマンインターフェイスから感じられる印象をベースに評価。後席居住性はレッグルームとヘッドルームで判断した。

【各モデル10点満点での評価】

Mercedes-Benz S 400 d 4MATIC

エンジン:8
ハンドリング:6
乗り心地:8
ADAS:9
先進性:10
後席居住性:9

BMW 745e

エンジン:8
ハンドリング:9
乗り心地:8
ADAS:10
先進性:7
後席居住性:7

Audi A8 60 TFSI quattro

エンジン:9
ハンドリング:8
乗り心地:8
ADAS:7
先進性:9
後席居住性:8

REPORT/大谷達也(Tatsuya OTANI)
PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)

MAGAZINE/GENROQ 2021年5月号

【SPECIFICATIONS】

メルセデス・ベンツ S 400 d 4マティック

ボディサイズ:全長5180 全幅1920 全高1505mm
ホイールベース:3105mm
車両重量:2090kg
エンジンタイプ:直列6気筒DOHCディーゼルターボ
総排気量:2924cc
最高出力:243kW(330ps)/3600-4200rpm
最大トルク:700Nm(71.4kgm)/1200-3200rpm
トランスミッション:9速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前後255/50R18
JC08モード燃費:14.3km/L
車両本体価格:1293万円

アウディ A8 60 TFSI クワトロ

ボディサイズ:全長5170 全幅1945 全高1470mm
ホイールベース:3000mm
車両重量:2110kg
エンジンタイプ:V型8気筒DOHCターボ
総排気量:3996cc
最高出力:338kW(460ps)/5500rpm
最大トルク:660Nm(67.3kgm)/1800-4500rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前後ウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前後265/40R20
JC08モード燃費:8.7km/L
車両本体価格:1581万円

BMW 745e ラグジュアリー エディション ジョイ+

ボディサイズ:全長5125 全幅1900 全高1480mm
ホイールベース:3070mm
車両重量:2090kg
エンジンタイプ:直列6気筒DOHCターボ
総排気量:2997cc
最高出力:210kW(286ps)/5000rpm
最大トルク:450Nm(45.9kgm)/1500-3500rpm
モーター最高出力:83kW(113ps)/3170rpm
モーター最大トルク:265Nm(27.0kgm)/1500
システムトータル最高出力:290kW(394ps)
システムトータル最大トルク:600Nm(61.2kgm)
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前後ウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前後265/40R20
JC08モード燃費:11.7km/L
車両本体価格:1171万円

【問い合わせ】
メルセデス・コール
TEL 0120-190-610

BMWカスタマー・インタラクション・センター
TEL 0120-269-437

アウディ コミュニケーションセンター
TEL 0120-598-106