「最終コーナーでガス欠かと思った」平川。かつてない不振に陥った坪井、山下【第1戦富士予選あと読み】

「最終コーナーで立ち上がって、速度が上がらなくなって『またガス欠か!?』と思ってしまいました」と話すのは、スーパーフォーミュラ第1戦富士の予選で7番手となった平川亮(carenex TEAM IMPUL)。

「また」の部分はもちろん、昨年のスーパーGT最終戦のガス欠のことを指しているが、そのシーンを冗談で話すくらい、そして7番手にも関わらず、今年の平川は逞しくなったと言える。

 実際には予選Q3の最終コーナー立ち上がりで、シフトトラブルがあったという。「原因はまだわかりませんが、4速から5速にすぐには入らなくて、結構タイムロスしてしまいました」と平川。

 開幕前のテストでは何度もトップタイムをマークして常に上位に入っていたことから、予選7番手で少しは落ち込んでいるかと思いきや、冒頭の冗談を話す様子からも、平川にネガティブな雰囲気はまったく感じられない。その背景には現在、平川が新しい目的を持ってスーパーフォーミュラに臨んでいることと関係している。

 今年の平川はクルマのセットアップ、開発能力アップを意識して、担当の大駅俊臣エンジニアとさまざまな新しいトライを続けている。その一環として今回、平川のクルマのセットアップは他のマシンに比べて極端にリヤウイングが薄い、いわゆるストレートスピード重視のロードラッグ仕様を試しているのだ。

 当然、デメリットとしてダウンフォースが厳しくなり、実際、練習走行ではコカコーラコーナーで膨らんでしまったり、今回の予選でもセクター2、セクター3でライバルにコンマ1〜2秒ずつ遅れを取ってしまっている。それでも、このセットアップの先に平川は何かの手応えを感じている。

「気温が上がるとダウンフォースが足りない感じがあって、でも、そのセットアップを狙って持ってきていたので変えるつもりもありませんでした。思ったよりも今週、温かくなって、温かくなってくると厳しいかなと。それでもベストは尽くせたと思いますし、トラブルさえなければトヨタ勢最上位の4~5番手には行けたのかなと思います。ホンダ勢はもっとリヤウイングを立てているのにストレート速度が同じくらいで、ちょっと悲しいですが……」と平川。

 昨年、タイトルを逃して悔しい思いをした平川の新しいトライがどのように実を結ぶのか。日曜の決勝は雨の予報もあるが、クルマだけでなく、メンタル面でもひと皮レベルアップしたように見える平川のパフォーマンスを是非、ドライで見たいところだ。

 もうひとり、平川と同じように今年注目されていた坪井翔(P.MU/CERUMO・INGING)も、まさかの予選10番手と低迷してしまった。昨年の最終戦富士を制し、今年さらなる活躍が注目されていただけに、その悔しさもひとしおだ。

「今日の走り出しからクルマのフィーリングがイマイチで、いいところがないくらいでした。(阪口)晴南選手(フリー走行7番手)のデータがあったので参考にさせてもらったのですけど、うまく合わないというか。2台で全然違う感じがしました。練習走行の90分ではまとめきれずに予選に向かったので、正直、厳しい状況は覚悟していました」と、走り初めを振り返る坪井。

 その予選ではチームメイトのルーキー阪口が5番手を獲得する一方、坪井は予選Q2進出が精一杯の10番手という状況になってしまった。

「予選Q1も案の定、全然ダメで、練習走行のときよりよくなかったんですけど、自分でもよくQ1通ったなという感じです(苦笑)。そこからQ2に向けて変えて、少しは進歩したんですけど、Q3に行けるとか上位に行けるような次元の走りではなかった。テストの時ともクルマのフィーリングは全然違いました。コンディションが原因なのか、そのあたりの原因をきちんと見つけないと今後辛くなる。晴南選手は速く走れているので、何が違うのかきちんと分析したい。その原因はまったく理解不能な感じで、スーパーフォーミュラの難しさに直面した感じがしています」と坪井。

 今年のスーパーフォーミュラはテストからその傾向が見えていたが、P.MU/CERUMO・INGINGしかり、そして王者山本尚貴(予選16番手)と大湯都史樹(予選2番手)のTCS NAKAJIMA RACINGしかり、チームメイトで大きな差が出る状況が目に付く。これまでは比較的、タイムシートに同じチームの2台の順位が並ぶシーンが見られたが、チーム内での大きな差には、単にドライバーの実力以外の要素があるように思われる。

 その現在のスーパーフォーミュラの難しさにもっとも直面しているチームのひとつがKONDO RACINGか。2019年スーパーGTチャンピオンで昨年も開幕戦で2位に挙がった実力者、山下健太が今回、まさかの予選最下位という、目を疑うような低迷に喘いでいる。

「いろいろセットアップも変えてやり尽くしたのですけど、クルマのフィーリングは全然よくならないですし、グリップもない。苦しいながら阿部(和也)エンジニアといろいろセットを変えてコンマ2~3秒とか良くなっているのですけど、上位からは1秒7~8とか遅い状況ですので、根本的に何か原因があると思うんですけど、何を変えてもダメな感じです」と、これまでにない落胆ぶりを見せる山下。

「今日の予選もアタックで自分が失敗して、コカコーラコーナーで4輪脱輪してしまい、もう1周アタックしました。その失敗がなければQ1は通れたと思うんですけど、それでもQ2でビリは間違いない状況でした。ずっとこの位置が続いているので、スーパーフォーミュラ5年目になりますが本当によく分からなくて、辛いです」

 そう話す山下の表情は重い。

 平川はともかく、坪井、山下をはじめ、スーパーフォーミュラのパフォーマンスに悩むドライバーが今年は特に多い。

 だが、思い返せばこの日予選で圧倒的な速さでポールポジションを獲得した野尻智紀(TEAM MUGEN)も2019年のSUGOでは自らのミスでスピンをして自分を責め、昨年チャンピオンの山本尚貴も2017年にはチームメイトのピエール・ガスリーに予選で敗れ続け、苦しいシーズンを過ごした。ふたりとも、トップフォーミュラに上がった後も数々の失敗や不振を乗り越えて強くなった。

 今回の予選で悔しい思いをしたドライバーたちも、まだ開幕戦。諦めずにトライし続けた先には必ず次のチャンスが巡ってくるに違いない。

2021スーパーフォーミュラ第1戦富士 坪井翔(P.MU/CERUMO・INGING)
2021スーパーフォーミュラ第1戦富士 坪井翔(P.MU/CERUMO・INGING)
2021スーパーフォーミュラ第1戦富士 山下健太(KONDO RACING)
2021スーパーフォーミュラ第1戦富士 山下健太(KONDO RACING)