アストンマーティン初のSUV「DBX」のプリプロダクションモデル試乗! 最後発の強みが見せた完成度【Playback GENROQ 2020】

アストンマーティン初のSUV「DBX」のプリプロダクションモデル試乗! 最後発の強みが見せた完成度【Playback GENROQ 2020】

Aston Martin DBX

アストンマーティン DBX

稀代の名馬となるか?

アストンマーティン初となるスーパーSUV、DBX。ワインディングやハイウェイでも完璧な走りを披露する
アストンマーティン渾身作のステアリングをついに握る日が来た。

アストンマーティン DBXの走行シーン

「一般的なSUVとは別物のシャシーは、まるで本格派スポーツカーのようだ」

アストンマーティン初のSUVであるDBXの開発を指揮したのは同社チーフエンジニアのマット・ベッカーだ。ロータスでスポーツカー造りの実績を残した後、5年前にアストンマーティンに移籍したベッカーにとって、SUVを手掛けるのは今回が初めてだった。「したがって、まずは自分たちの性能目標を設定するために様々なライバル車をテストしました」とベッカー。実際、開発チームはニュルブルクリンクのノルトシュライフェや付近のオフロードコースなどで旧型ポルシェ・カイエンターボ、BMW X6M、レンジローバースポーツSVRなどに試乗。その性能やメカニズムを徹底的に解析したという。

この結果、SUVにはスポーツカーやグランドツアラーとは比べものにならないほど多種多様な性能が必要とされることを学んだベッカーらは、オールラウンダーな性格を持つカイエンターボを当面のベンチマークとしてピックアップ。これと、後にデビューするランボルギーニ・ウルスのスポーティなハンドリングの中間に位置するシャシーを目標としてDBXの開発は始まった。

アストンマーティン DBXの走行シーン

「滑らかなエキゾーストノイズを発するように点火順序を改めた最新仕様のV8」

その基本となるボディ構造はDB11で登場したボンデッド・アルミニウム工法を採用。ただし、トランスアクスル方式を採用する他のアストンマーティンと違い、エンジンの直後にギヤボックスを搭載するDBXのためにプラットフォームは専用設計された。ベッカーは語る。「エンジン搭載位置をできるだけキャビン寄りの低い位置に設定しました。こうすることでZ軸回りの回転モーメントを小さくするとともに、エンジンのキャビンへの侵食を最小限に留めて余裕ある居住スペースを実現しました」。 実際、身長2m近い長身が運転席と後席に腰掛けても、前席のシートバックに膝がぶつからない後席のニールームを確保したという。ラゲッジスペースも632リットルの大容量を誇る。

エンジンはヴァンテージなどと基本的に同じメルセデスAMG製の4.0リッターV8ツインターボ。ただし、滑らかなエキゾーストノイズを発するように点火順序を改めた最新仕様で、最高出力は550ps、最大トルクは700Nmに達する。これと組み合わされるギヤボックスはメルセデス・ベンツ製の9Gトロニック、つまりトルコン式9速ATを用いる。DCTにしなかったのはトレーラーなどを牽引する状況を考慮したためだ。

アストンマーティン DBXの走行シーン

「オマーンでの試乗が許されたのはPT1と呼ばれるプリプロダクションモデル」

電子制御式油圧多板クラッチ方式のトルク配分機構や前後アクスルなどもメルセデスから供給される。電子式可変制御はこれだけに留まらず、3チャンバー式エアサスペンション、48V系アクティブアンチロールバーなども装備。SUVに求められるオールラウンダーな性格を目指したという。

ただし、4WSだけは「リヤのスタビリティを向上させるには効果があるが、フロントの操舵と干渉してステアリング操作が一発で決まらないことがあるため、敢えて採用しなかった」とベッカーは言明した。

今回、オマーンでの試乗が許されたのはPT1と呼ばれるプリプロダクションモデル。ハードウェアの仕様は今春デビューする製品版と基本的に変わらないが、ソフトウェアに関しては現在もバージョンアップしている最中という。「オマーンにきて2週間が過ぎましたが、この間もエアサスペンションのプログラムを進化させることで乗り心地を改善しました。また、パワーステアリングとスロットル系のソフトウェアは最新仕様ではないので、その点は考慮して試乗してください」 ベッカーは車両の状態をそう説明した。

とはいえ、そんな状態でもDBXの優れたポテンシャルは十分に確認できた。まず、ボディや足まわりの剛性感が素晴らしい。おかげでステアリング操作に対してあいまいな反応を示すことがなく、レスポンスも良好。かといって過敏な反応を示すわけではなく、操舵に対してはあくまでもリニアな反応を示してくれる。しかもフロントの接地状態がステアリングを通じて表情豊かに伝えられるため、ドライバーは自信を持ってドライブできる。足まわりのあいまいさに目をつぶらなくてはならない一般的なSUVとは別次元の、極めて洗練されたシャシーだ。

アストンマーティン DBXの走行シーン

「快適な乗り心地と極めて正確なハンドリングを両立させている点こそ、DBX最大の美点」

今回は本格的なワインディングロードを走る機会はなかったものの、高速道路や固く引き締まったジャリ道を走った範囲でいえば、リヤのグリップレベルは高く、スタビリティは良好だった。たとえばオフロードでのコーナリング中にわざとブレーキを使って前荷重にしてもリヤタイヤはしっかりと路面を捉えて放さないため、一定のラインをトレースするのは容易。実に安心感の高いハンドリングといえる。

それでいて乗り心地は快適で、路面からのゴツゴツしたショックはタイヤとサスペンションで巧みに吸収されていた。フラット感も文句なし。そして、こうした快適な乗り心地と極めて正確なハンドリングを両立させている点こそ、DBX最大の美点と評価すべきだろう。

試乗車は泥にまみれ、ボディにはいくつものステッカーが貼り付けられていたが、アストンマーティンらしい優雅なデザインがSUVのプロポーションに昇華されている様は実に印象的。また、スニークプレビューで実車と対面したときよりも、太陽の光の下で見たほうがフロントセクションに力強さがみなぎっていて魅力的だった。春ごろに完成する製品版に試乗するのが今から楽しみで仕方ない。

REPORT/大谷達也(Tatsuya OTANI)
PHOTO/Aston Martin Lagonda

【SPECIFICATIONS】

アストンマーティン DBX

ボディサイズ:全長5039 全幅1998 全高1680mm
ホイールベース:3060mm
車両重量:2245kg
エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:3982cc
最高出力:405kW(550ps)/6500rpm
最大トルク:700Nm(71.4kgm)/2200-5000rpm
トランスミッション:9速AT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前285/40YR22 後325/35YR22
最高速度:291km/h
0-100km/h加速:4.5秒
環境性能(EU複合モード):14.32L/100km(目標値)
車両本体価格:2295万8000円

※GENROQ 2020年 3月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。