「ハイパーカー/LMP1と、LMP2との間にはもっとギャップが必要」とアルピーヌ

 ノンハイブリッドLMP1マシン『アルピーヌA480』で2021年のWEC世界耐久選手権ハイパーカークラスに参戦するアルピーヌ・エンデュランス・チームのフィリップ・シノー代表によれば、ハイパーカークラスとLMP2クラスのラップタイム差を拡大するために、いくらかの“微調整”が必要になるという。

 規則移行年の特例措置により、レベリオン・レーシングが使用していたレベリオンR13をベースに『アルピーヌA480』を仕立てて最高峰クラスへと参戦するアルピーヌは、これまでのところ唯一となるテストをスペインのモーターランド・アラゴンで2月に実施している。

 このセッションには、WECのLMP2クラスにエントリーするリシャール・ミル・レーシングのオレカ07・ギブソンも参加していた。この車両も、シノーが率いるシグナテックによってオペレートされるものだ。

 3月16日にA480の正式発表を済ませた後、シノーはSportscar365に対し、WECのハイパーカークラスにおけるBoP(性能調整)において、A480がパワーの抑制と重量の増加を受けることを「予想した」と語っている。

 ハイパーカークラスを戦うル・マン・ハイパーカー(LMH)は、これまでのLMP1マシンよりル・マンにおいて1周約15秒遅くなることが予測されるため、BoPのプロセスがトップカテゴリーに導入される。

 ふたつのプロトタイプクラスの間の適正なラップタイム差を設けるため、LMP2クラスでは40馬力の削減もなされたが、両カテゴリーのマシンはトラック上でのポテンシャルが接近していることをシノーは示唆している。

「とくにLMP2においては、難しいことになるだろう」とシノーは語っている。

「我々はリシャール・ミル・レーシングのLMP2マシンも走らせたので、LMP2クラスとハイパーカー/LMP1との違いについて、明確な見解がある」

「LMP2とトップクラスの間のギャップについて、ACOとFIAは微調整を施す必要があると思う」

「2つの異なるカテゴリーに2台のマシンがあることは我々の持つ利点のひとつであり、私の目標はこのことについてFIAとACOに明確な見解と客観的な情報を提供することだった。この件については、まだ微調整が必要だ」

 シノーはLMP1とLMP2のラップタイムの違いについてはコメントしなかったが、マージンが「充分ではない」ことを示唆している。

2月にモーターランド・アラゴンで行なわれたテストの様子
2月にモーターランド・アラゴンで行なわれたテストの様子

■テストには満足。ポイントは「開発できない」タイヤ

 そのような状況ではあるが、ニコラ・ラピエール/アンドレ・ネグラオ/マシュー・バキシビエールが参加したA480最初のテストに、チームは大いに満足していると言う。

「初日は雨が降ったが、その後の2日はドライコンディションだった」とシノー。

「多くの周回をこなし、クルマの信頼性を確認した。エアロやトラクションコントロールなど、すべてのディテールを確認するため、実利的な方法でテストを行なった」

「重量とパワーのレベルというふたつの主な指標について、プログラムを計画している。空力を除けば、LMP2のパフォーマンスレベルとの違いは大きいものではない」

 シノーは、これまでにアルピーヌが行なったテストは、完全なパフォーマンスを導くためではなく、「知識のため」のものであったと説明する。

 しかし彼はまた、アルピーヌのLMP1、トヨタのGR010ハイブリッド、グリッケンハウスのSCG 007 LMH間における、接戦につながるハイパーカークラスのBoPプロセスへ向けた自信も表明している。

「正直にいえば、それは本当に難しいものだ。我々にとっても、それは簡単なことではない。パフォーマンスのバランスを取るための、魔法の解決策はない。我々はFIAやACOと情報をうまく共有しているので、自信を持っている」

「それは常に公正な方法で行なわれる。BoPを公正な方法により管理していると証明することは、FIAのすべての人にとって利益となる。(将来LMHやLMDhでの参入を予定している)ポルシェ、アウディ、フェラーリなどといったメーカーとの契約を万全なものとするためにもね」

「BoPの精神には自信を持っているため、ACOとFIAと我々の間では現時点で何の隠し事もない。おそらく私はナイーブだが、それは誰にとっても共通の関心事だ」

 シノーはまた、アラゴンでのテストによって、昨シーズンのミシュランのスリックタイヤが、速度が落とされ、重量が増えるであろうLMP1マシンとどのように相互作用するのかについて、チームが充分に理解できるようになった、と付け加える。

 ミシュランはLMH車両用には新しいタイヤを開発したが、LMP1用のタイヤは2019/20シーズンの仕様から変更することを許されていない。

「これは本当に重要なポイントだ」とシノー。

「タイヤの性能をマネージする方法は、昨年のLMP1とは異なる。しかし我々は良い妥協点とバランスを見出し、タイヤにより多くの荷重をかけるという目標を達成した。最終的には、我々は効率的で性能の安定したタイヤを手にしている」

「このタイプのタイヤの場合、複数スティントを成立させるのは実に簡単だ。ル・マンにおいて、おそらく5スティントは無理だろうが、3スティントか4スティントは(タイヤ交換せずに)走れると思う」

 走行初日に雨が降ったものの、シノーはウエットタイヤに関するデータを欠いていることを認めている。だが、開幕前にまだチャンスはあるかもしれない。WECの開幕が1カ月ほど先延ばしになったことが、アルピーヌにより多くのプライベートLMP1テストを実施するための余裕を与えているからだ。

2月にモーターランド・アラゴンで行なわれたテストの様子
2月にモーターランド・アラゴンで行なわれたテストの様子