走行性能の概説:エンジンと変速機、車両諸元が性能を測る目安【バイク用語辞典:走行性能編】

■走行性能線図とエンジン性能線図をみれば、ほとんどの動力性能が理解できる

●クルマと最も異なる性能は、転倒リスクがあるブレーキ性能と旋回性能

バイクの性能として代表的なのは、動力性能や燃費性能、排ガス性能、ブレーキ性能、旋回性能などです。この中でクルマと大きく異なるのは、転倒リスクがあるブレーキ性能と、車体を傾けて曲がる旋回性能です。

バイクの走行性能全般について、概説します。

●走行性能曲線図とエンジン性能曲線図

昔のカタログには、走行性能曲線図とエンジン性能曲線図が表示されてましたが、最近走行性能曲線図はほとんど表示されなくなりました。

走行性能曲線
走行性能曲線

走行性能曲線図は、横軸車速でバイクが走行するときに受ける走行抵抗、各変速ギヤでの駆動力の大きさの車速による変化とその時のエンジン回転数を示します。この性能曲線図の内容を理解すれば、そのバイクの動力性能を読み取ることができます。

エンジン性能曲線
エンジン性能曲線

エンジン性能曲線図とは、最高出力と最大トルクの数値とともに、横軸をエンジン回転数としたスロットル全開時の出力とトルク、燃料消費率の3つの特性を示したグラフです。

●動力性能とは

バイクの動力性能とは、直進路を走行する加速性や登坂性能であり、そのバイクの走りを特徴づける重要なファクターです。これらを定量的に評価するのが加速性能試験や登坂走行試験、最高速試験です。

・加速性能

加速性能には、発進加速性能と追い抜き加速性能の2種類があります。加速性能は全開加速する際の一定距離を走行するのに要する時間、あるいは一定時間の走行距離で表します。

・登坂性能

問題なく登ることができる坂路の勾配、最大登坂能力を測定します。

・最高速度

平坦路の往復両方向で測定区間の始点で最高速度に達するように走行し、これを3回実施して平均値を求め、測定距離と所要時間から最高速度を求めます。

●走行抵抗

走行抵抗
走行抵抗

バイクでは、エンジンの出力が変速機などを介してタイヤを回転させる駆動力となって走行します。一方、走行を妨げるマイナスの力が走行抵抗で、これには転がり抵抗と空気抵抗、登坂抵抗の3つがあります。

車両が一定速度で走行するときに必要な駆動力Fdは、走行抵抗と釣り合っており、次式で表されます。

Fd = Ur・Wt・ g 【転がり抵抗】+ (1/2)・R・Cd・A・V2【空気抵抗】 + g・Wt・sinθ【登坂抵抗】
(Ur:タイヤの転がり抵抗係数、Wt:(人+車)質量、g:重力加速度、R:空気の密度、Cd:空気抵抗係数、A:前面投影面積、V:車速、θ:登坂勾配)

●燃費性能と排ガス性能

カタログに表示される燃費性能には、定地燃費とWMTCモード燃費があります。

C/Dモード試験
C/Dモード試験

定地燃費は一定速度での燃費消費量で、km/Lで表します。一方WMTCモード燃費は実際の路上での走行を模擬したモード運転の燃費であり、モード運転中には加速や減速、停止があります。

燃費試験は、シャシーダイナモ上で行います。また、WMTCモードでは燃費と同時に排ガス(CO、HC、NOx)も測定します。それぞれの排ガス成分には規制値が決められ、規制値以下であることが法規で定められています。

●ブレーキ性能の基本

基本的な制動挙動
基本的な制動挙動

バイクでは、転倒を防止するため、急ブレーキの状況でも力一杯レバーを握らずにタイヤロックしない範囲で制動することが重要です。ロックしないためには、車両の速度を下げるだけでなく、車輪の回転速度も適切に下げなければいけません。

また、減速度の大きさによって前後の制動力の配分を変えなければいけません。ロックしない限界での理想的な制動力配分は、路面の摩擦係数が大きい場合、実制動距離を短くしようとすると前輪の制動力を支配的にして、後輪の制動力もある程度使う必要があります。

●旋回性能

旋回特性
旋回特性

バイクは、車体を旋回方向に傾けてセルフステアリング作用によって曲がっていきます。バイクが、走行中に方向を変えると、バイクには外側に振られる遠心力が働きので、遠心力と重力とのバランスを取るために車体を傾ける必要があるのです。

強い遠心力が強く働く、例えば高速の旋回、旋回半径の小さい旋回の場合は、車体の傾きをより大きくしなければいけません。言い換えると、車体の傾きが深すぎると転倒のリスク、傾きが浅いと曲がり切れないリスクが発生します。


本章では、バイクの基本となるさまざまな走行性能について、詳細に解説します。

(Mr.ソラン)