突出するロバンペラの完成度。WRC第2戦アークティックは若手の速さが光る1戦に

 オット・タナク(ヒュンダイi20クーペWRC)の久々の優勝が霞むほど、若手の速さが光った1戦だった。新型コロナの影響によりシーズン唯一のフルスノーイベントであるラリー・スウェーデンが中止となり、その穴を埋めるべく、『アークティック・ラリー・フィンランド』が急きょカレンダー入り。

 フィンランド北部ロヴァニエミでは、毎年1月末にフィンランド国内選手権が行われているが、そのステージをモディファイしたのがアークティック・ラリー・フィンランドであり、WRCとしての開催は今回が初めてだった。

 下馬評では地元のトヨタ勢が有利とされたが、結果的にカッレ・ロバンペラ以外は大苦戦。開幕戦モンテカルロ優勝のセバスチャン・オジエと、2位のエルフィン・エバンスは、出走順が1-2番手となり、やわらかい雪に足を取られて初日に失速した。

 しかし、2日目に出走順がやや後方になっても、彼らのスピードはあまり回復しなかった。セッティングが合っていないのか、スタッドタイヤの摩耗がヒュンダイ勢よりも激しく、ステージ終盤にペースが落ちることが多かった。

 トヨタ・ヤリスWRCは過去ラリー・スウェーデンで4戦3勝しているが、今回は路面コンディションと新しいピレリのワンメイクタイヤにセッティングを合わせ込めなかったようだ。トヨタが事前にテストを行ったときはマイナス30度前後と非常に寒く、氷雪路面はカチカチだった。しかし、ラリーウイークは0度近くまで上昇し、路面は軟化。テストで詰めたセッティングがうまく機能しなかったのだ。

 そのような状況で、オジエとエバンスは総合5、6番手に着けるのがやっとだったが、トヨタ勢で唯一ロバンペラはヒュンダイ勢に対抗。何度かミスをするも、その遅れをすぐに挽回する攻めの走りを続け、総合2番手に着けていた。最終日は、僅差で背後に迫るティエリー・ヌービル(ヒュンダイi20クーペWRC)をフルアタックで引き離し、パワーステージも制して、総合2位でフィニッシュ。20歳という史上最年少記録でドライバー選手権首位に立った。

 クルマの仕上がりを考えると、ロバンペラの2位は勝利にも値する。ステージ終盤に前輪のスタッドが抜け、グリップが落ちても、抜群のコントロールでペースを大きくは落とさなかった。ロバンペラは「最後まで限界でプッシュし続けたよ」と言っていたが、それでも致命的なミスはなく、確実性も高かった。今回は逃したが、初優勝は手が届くところにある。

初優勝は手が届くところにあるカッレ・ロバンペラ(トヨタ・ヤリスWRC)
初優勝は手が届くところにあるカッレ・ロバンペラ(トヨタ・ヤリスWRC)

 ロバンペラと仲がいい勝田貴元は前戦モンテカルロに続き総合6位。ワークスの3台と同様、仕上がりがイマイチだったヤリスWRCで健闘したが、本人は順位にもタイムにも納得していなかった。さらに上を目指していたからだ。

 国内選手権として開催されたアークティック・ラップランド・ラリーには過去3回出場経験があり、コースに対する知識はあった。また、ハイスピードなラリーにも自信を持っていただけに、ステージ順位も総合順位もなかなか5番手以内に入れなかった今回は不完全燃焼気味だった。

 ただ、トップドライバーとのタイム差を見ると、これまでで一番いい内容のラリーだったと言える。昨年のスウェーデンを制した、総合5位エバンスとの差は35.3秒。エバンスにとくに大きなミスがなかったことを考えれば、互角に近い戦いをしたと考えていいだろう。トリッキーな区間でペースを落としすぎてしまう傾向はあったが、スピードと安定性は以前よりも確実に上がっていた。総合6位を悔しがるというのは成長の証である。

 その勝田と総合6位を争っていたなか、最後のステージでスピンを喫し、順位をひとつ落として総合7位でフィニッシュしたのが、19歳のオリバー・ソルベルグ(ヒュンダイi20クーペWRC)だ。元世界王者ペター・ソルベルグの息子であるオリバーは、今回がWRカーデビュー。にもかかわらず、SSでは3、4番手のタイムを刻み、全10本のSSのうち6本でトップ5タイムを記録するなど、ルーキーとは思えぬような速さを披露した。

 オリバーの走りはまだ粗削りで、クルマを振り回すアグレッシブなドライビングが目立った。しかし、コントロール能力は非常に高く、スピンはしても完全に破綻するようなことはなかった。さすが、ラリークロスで500馬力以上のモンスターマシンを飼い慣らしていただけのことはある。最終ステージまで攻め切り、スピンで6位を失ってもそれを笑い飛ばせるほどメンタルも強かった。これから経験を積んで走りが洗練されていけば、今後ロバンペラのいいライバルになるだろう。

総合6位を悔しがるほど成長を見せている勝田貴元(トヨタ・ヤリスWRC)
総合6位を悔しがるほど成長を見せている勝田貴元(トヨタ・ヤリスWRC)
WRカーデビュー戦で総合7位フィニッシュを飾ったオリバー・ソルベルグ(ヒュンダイi20クーペWRC)
WRカーデビュー戦で総合7位フィニッシュを飾ったオリバー・ソルベルグ(ヒュンダイi20クーペWRC)