エアバッグとは?車体一体型もあるがエアバッグ付きべストが効果的【バイク用語辞典:安全技術編】

■ハンドル周りからエアバッグが飛び出す、車体装備のエアバッグの効果は限定的

●事故でライダーが飛ばされることを考慮するとエアバッグ付きベストが合理的

クルマに比べて死亡事故率の高いバイクでは、事故で放り出されたライダーを守る手法が必要です。車体装備のエアバッグを展開させる技術も実用化されていますが、ライダーを守るにはエアバッグ付きベストの方が、現時点では有効な手段です。

車体装備のエアバッグとエアバッグ付きベストについて、解説していきます。

●車体装備のエアバッグ

2006年、バイク用エアバッグがホンダの「ゴールドウィング」に、世界で初めて搭載されました。

車体装備エアバッグ
車体装備エアバッグ
ゴールドウィングのエアバッグ展開例
ゴールドウィングのエアバッグ展開例

左右のフロントフォークに装着された衝撃センサーで衝突時の加速度を検知して、エアバッグを展開させます。エアバッグはハンドル周りに収納され、展開することでエネルギーを吸収してライダーが前方に放り出される勢いを抑え、クッションの役割とともに衝突による障害を軽減します。

ただし、このシステムの作動は前方向のみ、設定以上の強い衝撃を感知した場合で、側面衝突や後方からの衝突、転倒時には作動しません。したがって、正面衝突の前方しか守ることができず、衝突時ライダーが放り出されるバイク事故では効果は限定です。

●エアバッグ付きベストの必要性

転倒というリスクがあるバイクの事故は、クルマの事故に比べると死亡率が高く、バイクの事故で毎年600人以上が命を落としています。その多くは衝突とともにライダーが放り出されて、頭部や胸部、頸部の損傷が原因です。頭部はヘルメットで保護される場合もありますが、胸や頸部、腹部などは保護できないのが実状です。

エアバッグ付きベストは、バイクが衝突転倒してライダーが車体から離れると、自動で膨らんで身体(頭、胸、頸部、背中など)を保護します。上記の車体装備エアバッグの効果は限定的ですが、身体に着けたベストのエアバッグが膨らんで身体を保護するのは、より安全で合理的であると思われます。

エアバッグ付きベストには、普通の服の上に着用するベストタイプやプロテクターも内蔵されたジャケットタイプ、一体型のレーシングスーツタイプがあります。

●エアバッグ付きベストの仕組み

エアバッグ付きベスト例
エアバッグ付きベスト例

エアバッグ付きベストは、上着のように着用してバイク本体とは専用のキー付きのワイヤーでつながっています。事故が起こるとワイヤーのキーが外れて、エアバッグ内のボンベが作動して一気にエアバッグに空気が充填され、エアバッグの首気室、胸気室、脇・背中気室、尻気室が膨らみます。

一般的には、エアバッグが膨らむまでの時間はキーが外れて約0.25~0.5秒程度です。ライダーの身体が離れた直後にエアバッグが全開になるため、身体が放り出されても主要部を保護します。

エアバッグ付きベストは、すでに白バイや高速道路会社のバイク隊員が装着しており、世界的にも徐々に採用が広がっています。バイクレースの最高峰Moto-GPではエアバッグ付きレーシングスーツの装着が2018年から義務化されており、2020年から22歳以下でレースに参加する場合は着用が義務化されています。


エアバッグ付きベストの値段はおおむね5万円以上、レーシングスーツタイプになると15万円以上と高価なため、まだ普及は限定的ですが、レース界では着用が義務化されるのは時間の問題です。最近の安全重視の動きから、徐々に普及が進むと予想されます。

(Mr.ソラン)