スーパー耐久に登場する3クラス・3種類のGRスープラ。それぞれに特色と狙いあり

 2月27日、富士スピードウェイで公式テストが行われ、2021年シーズン開幕へ向けて動き出したスーパー耐久シリーズ2021 Powered by Hankook。今季、シリーズにはST-Z、ST-Q、そしてST-1と3クラスにトヨタGRスープラが参戦することになるが、それぞれのバリエーションにはそれぞれの特色と、狙いがある。

 2019年に販売がスタートしたGRスープラは、スーパーGT GT500クラス、GT300クラスをはじめモータースポーツに積極的に活用されているが、世界的なカスタマーレーシングシーンに向けてリリースされたのが、トヨタGRスープラGT4。スーパー耐久ではST-Zクラスに参戦できる。

 2021年のST-Zは、年間エントリーで16台もの台数を集めているが、GRスープラGT4のデリバリー本格化がこの台数向上に寄与しているのは間違いない。年間エントリーリストの段階では4台が名を連ねているが、27日の公式テストではそのうちの3台が登場した。

 HIROSHIMA TOYOPET RACING、C.S.I Racing、林テレンプ SHADE RACINGという3チームから登場したGRスープラGT4は、すでにスポーツ走行でも走っているが、目立ったトラブル等もなく、ラップタイムも良好。コースサイドでもスムーズな走りをみせている。

 GT4は価格も手頃で、GRスープラGT4はすでにこの4台以外にも多くのオーダーを抱えているといわれている。今季注目を集めるのは間違いないだろう。

111 HIROSHIMA TOYOPET RACING トヨタGRスープラGT4
111 HIROSHIMA TOYOPET RACING
トヨタGRスープラGT4
311 C.S.I Racing トヨタGRスープラGT4
311 C.S.I Racing
トヨタGRスープラGT4
885 林テレンプ SHADE RACING トヨタGRスープラGT4
885 林テレンプ SHADE RACING
トヨタGRスープラGT4

■『もっといいクルマづくり』のためのクラス変更

 そして、2020年にST-1クラスにGRスープラを投入したROOKIE Racingは、2021年は新たに創設されたST-Qクラスに活動の場を移す。このクラスは『S.T.Oが参加を認めたメーカー開発車両、または各クラスに該当しない車両』とされており、メーカー開発車両等があてはまる。

 もともと2020年に参戦したROOKIE RacingのGRスープラはGT4車両だが、ホモロゲーションのタイミングでST-Zへの参戦とはならずST-1への参戦となった。そこで、2020年の1年間を通じて、GT4車両の本格デリバリーを前に不具合を出そうと取り組み、ここで得られた知見が2021年に向けデリバリーされたGT4車両に盛り込まれた。

 もちろんそのままROOKIE RacingのGRスープラもST-Zヘ移行することも可能だが、ROOKIE Racingはプライベーターとして、トヨタから開発の委託を受け、「今年はモータースポーツを起点にした『もっといいクルマづくり』をしていこう、より強くしていこう」という活動を担うことになった。このチームらしいところだが、もちろんこれは、GT4のみならず市販車に向けても当てはまるのは、昨年のGRヤリスの活動を見ても分かる。

 ただGT4車両では、規定上開発することは不可能。そこで、スーパー耐久機構の協力もあり、新たに創設されたST-Qというクラスに参戦することになったのだ。

 27日のテストに登場したGRスープラは、GT4とは見た目も変化している。チームによれば、「いろいろ変えていますが、パッと見ではフードだったり、空力面で言うと午前中はカナードをつけたり、つけなかったりというトライをしていますが、レースでつけるかどうかは分かりません。レースによって変える可能性もあります」とのこと。ボンネットのエアアウトレットは明らかに違う形状となった。

28 ROOKIE Racing トヨタGRスープラ
28 ROOKIE Racing
トヨタGRスープラ
ROOKIE RacingのGRスープラ。ボンネットのエアアウトレット形状が異なるほか、フロント左右にはカナードを装着した穴が見える。
ROOKIE RacingのGRスープラ。ボンネットのエアアウトレット形状が異なるほか、フロント左右にはカナードを装着した穴が見える。

■TRACY SPORTSが苦心しながら作り上げたST-1仕様

 そしてもう1台、ST-1に登場するのは、名門TRACY SPORTSが走らせるGRスープラだ。長年レーシングカーづくりで定評があるチームだが、今回もST-1に向けてGRスープラを市販車からレーシングカーに仕立て上げてきた。

 エンジン、デフ、ドライブシャフト、ハブ、アームなどは市販車の状態でそのまま使用。一方ST-1仕様にするにあたり、ブレーキ、ABS、ミッションを変更している。またエアロはイングスで武装しており、GT4とは異なる出で立ちとなっている。

 TRACY SPORTSの山本智博氏によれば、ミッションについては、実はもともとGRスープラに装備されている8速スポーツATを流用しようとしたのだという。ただ、エンジンをモーテックでコントロールしようとミッションのデータを解析しようと試みるも、あまりのデータ量にレーシングミッションへの換装を決めたという。最終的に、フランスのサデフ製のシーケンシャルミッションを搭載した。昨年まで使用したレクサスRC350のものよりも、パワーの面で余裕があるものだという。

 近年の市販車は、非常に多くの部分でコンピューター制御が採用されており、TRACY SPORTSも「僕たちは今後そうなるだろう、と見越してチャレンジしている」と分析を行いながら車両づくりに取り組んできた。ただ、市販車の制御がさまざまな部分で複雑に絡んでおり、苦労を続けながらの開発となったよう。

 これらの制御の面は、スーパー耐久のレギュレーションに合わせることも苦労があったようで、その点でのレギュレーションのアップデートも必要ではないかと山本氏は語る。「もっとクルマづくりでも入っていけるようにS耐のレギュレーションを変更できるなら、他の方々でもできると思うんです。かなり気合を入れてやっているので。『GT4買ってきたほうがいいんじゃない?』となってしまう。僕たちも作ってて思いましたから(笑)」

 もちろん、GT4が悪いわけではなく、そこはそれぞれに求めるものが違う。それでもTRACY SPORTSが苦労してでもクルマづくりに挑むのは、「それじゃ面白くない。僕たちはクルマづくりをしていきたい」からだ。

 同じGRスープラだが、各クラスで目的、形状も異なる。ただそれでいて、タイムも近いのは市販車に近いGT4レギュレーションの“らしさ”も表している。スーパー耐久らしい点でもあり、ファンにとっては比較するのが非常に楽しみなところだ。

38 TRACY SPORTS トヨタGRスープラ
38 TRACY SPORTS
トヨタGRスープラ