ポルシェが電動化で目指す境地を、パナメーラとカイエンのE-ハイブリッドに見る 【Playback GENROQ 2016】

ポルシェが電動化で目指す境地を、パナメーラとカイエンのE-ハイブリッドに見る 【Playback GENROQ 2016】

Porsche Panamera S E-Hybrid × Cayenne S E-Hybrid

ポルシェ パナメーラS E-ハイブリッド × カイエンS E-ハイブリッド

ポルシェのハイブリッド戦略

昨今のクルマ界は電化を施したモデル開発を強く求められ、それはスーパースポーツモデルメーカーも例外ではない。既に市販PHEVをリリースしマーケットの要求に応えている、ポルシェのハイブリッド化への考え方を考察してみたい。

ポルシェ カイエンS E-ハイブリッドのエンジン

「燃料より電力消費を優先するのがポルシェのハイブリッド・ストラテジー」

「プラグイン・ハイブリッドのポテンシャルを最大限引き出すにはどうすればいいか?」。ポルシェがいかにこの命題と真剣に取り組んだか、そのハイブリッド・ストラテジーを観察すれば容易に理解できる。

クルマに乗車してシステムを立ち上げたとき、ポルシェのプラグイン・ハイブリッド・モデルは自動的にEパワー・モードを選択する。これはバッテリーに充電された電力をもっとも積極的に使用するモードで、おとなしく走っていれば高速道路での100km/h巡航を含め常にEV走行、すなわちエンジンがかかることなく電気モーターの力だけで走行する。そしてこの状態はバッテリー残量が20%となるまで続くのである。

つまり、バッテリーに充電されたエネルギーはできるだけ早く使い切り、ガソリンはなるべく消費しないようにする。これがポルシェ・プラグイン・ハイブリッドの基本的なストラテジーなのだ。

ポルシェ カイエンS E-ハイブリッドのラゲッジ

「外部充電による走行の比率を高めてCO2排出量を削減するという考え」

その理由は、次のように説明できる。自動車の熱効率という観点からいえば、プラグイン・ハイブリッド車は、プラグインでないハイブリッド車や純粋な電気自動車よりも不利な立場に立たされている。なぜなら、プラグイン・ハイブリッド車は一般的なハイブリッド車よりバッテリーの容量が大きく、純粋な電気自動車には不要な内燃機関を積んでいるため、どちらと比較しても車重が重くなりがちで、これらが熱効率の点で不利に作用するからだ。

もっとも、たとえ熱効率の点でベストでなくとも、一般的なハイブリッド車よりも少ないCO2排出量で走行する手立ては残されている。それは、できるだけガソリンを消費させないで、外部充電(再生可能なエネルギーによる電力であればより理想的)による走行の比率を高めること。こうすれば、発電時の環境負担を勘案しても、CO2排出量を削減できると考えられるからだ。

ポルシェが目指しているのが、まさしくこの方法である。そのためにバッテリーに充電された電力を優先して使用し、ガソリンの消費をできるだけ抑えているのだ。

ポルシェ パナメーラS E-ハイブリッドの走行シーン

「徹底したエネルギー効率の向上が施されたE-ハイブリッド」

さらに、このストラテジーの適用範囲を拡大するために実施されたのが、パワフルなハイブリッドシステムの搭載だった。電気モーターのパフォーマンスが改善されれば、より幅広い車速と加速領域をEV走行でまかなえる。バッテリー容量を大きくすればEV走行の航続距離が伸びる。そこでポルシェは95ps/310Nmという高出力・大トルクモーターと、10‌kWh前後という大容量バッテリーからなるハイブリッドシステムを開発し、パナメーラS E-ハイブリッドとカイエンS E-ハイブリッドに搭載したのである。

もちろん彼らはエネルギー効率の向上にも取り組んでいる。パナメーラS E-ハイブリッドもカイエンS E-ハイブリッドもシリーズ中もっとも細いタイヤを装着して走行抵抗の削減を図ったり、電動パワステを採用してエネルギーロスの減少に務めているのは、その一環である(電動パワステの採用にはエンジン停止時にも操舵を可能にするという目的もある)。私は以前、事前にバッテリーに充電した電力を使い切った状態のパナメーラS E-ハイブリッドを都内で走らせ、およそ14km/Lの燃費を記録したことがあるが、上述した効率向上に向けた努力がパナメーラS E-ハイブリッドやカイエンS E-ハイブリッドの燃費改善に役立っていることは間違いない。

ポルシェ カイエンS E-ハイブリッドの走行シーン

「スポーツカーの環境性能改善と向き合うポルシェの姿勢に拍手を贈りたい」

ここまでは主にポルシェ・プラグイン・ハイブリッドモデルの環境性能について説明してきたが、ワインディングロードに持ち込めば、もちろん“スポーツカー界の雄”に相応しいハンドリングを示す。低速時にはややデッドに感じられたステアリング・フィールも速度を上げればしっかりとした安心感を伝えるようになり、ポルシェらしく「ステアリングと相談しながら」コーナーを駆け抜けることができるのだ。単なるエコカーとポルシェが造ったプラグイン・ハイブリッド・モデルとの、これが最大の違いといえるだろう。

もっとも、不満が皆無というわけではない。前述した通り電動パワステを採用した影響もあって特に低速域ではステアリング・フィールが“薄め”。また、わずかにネガティブスクラブを採用したパナメーラS E-ハイブリッドは、あるところまでステアリングを切り込むとそのまま吸い込まれるように舵角が増えていってしまう点も、最新のポルシェ各モデルを知る身には残念に思える。

それでも彼らがプラグイン・ハイブリッド・モデルを手がけるのは、自動車メーカーとしてCO2削減に取り組まなければならないという強い使命感を抱いているからだ。スポーツカーの環境性能改善と向き合うポルシェの姿勢に拍手を贈りたい。

REPORT/大谷達也(Tatsuya Otani)
PHOTO/市 健治(Kenji Ichi)

【SPECIFICATIONS】

ポルシェ パナメーラS E-ハイブリッド

ボディサイズ:全長5015 全幅1930 全高1420mm
ホイールベース:2920mm
トレッド:前後1660mm
車両重量:2140kg
エンジン:V型6気筒DOHC+スーパーチャージャー
ボア×ストローク:84.5×89.0mm
圧縮比:10.5
総排気量:2994cc
最高出力:245kW(333ps)/5500-6500rpm
最大トルク:440Nm(44.9kgm)/3000-5250rpm
モーター最高出力:70kW(95ps)/2200-2600rpm
モーター最大トルク:310Nm(31.6kgm)/1700rpm
バッテリー:リチウムイオン
容量:9.4kWh
システム最高出力:306kW(416ps)/5500rpm
システム最大トルク:590Nm(60.2kgm)/1250-4000rpm
トランスミッション:8速ATティプトロニックS
駆動方式:RWD
ステアリング形式:パワーアシスト付きラック&ピニオン
サスペンション:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ(ホイール):前245/50ZR18(8J×18) 後275/45ZR18(9J×18)
最高速度:270km/h(エレクトリックシステム:135km/h)
0-100km/h加速:5.5秒
環境性能(JC08モード)
燃料消費率:12.3km/L
一充電走行距離:33.2km
車両本体価格:1498万円

ポルシェ カイエンS E-ハイブリッド

ボディサイズ:全長4855 全幅1940 全高1710mm
ホイールベース:2895mm
トレッド:前1655 後1670mm
車両重量:2450kg
エンジン:V型6気筒DOHC+スーパーチャージャー
ボア×ストローク:84.5×89.0mm
圧縮比:10.5
総排気量:2994cc
最高出力:245kW(333ps)/5500-6500rpm
最大トルク:440Nm(44.9kgm)/3000-5250rpm
モーター最高出力:70kW(95ps)/2200-2600rpm
モーター最大トルク:310Nm(31.6kgm)/1700rpm
バッテリー:リチウムイオン
容量:10.8kWh
システム最高出力:306kW(416ps)/5500rpm
システム最大トルク:590Nm(60.2kgm)/1250-4000rpm
トランスミッション:8速AT(ティプトロニックS)
駆動方式:4WD
ステアリング形式:パワーアシスト付きラック&ピニオン
サスペンション:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ(リム径):前後255/55R18(8J)
最高速度:243km/h(エレクトリックシステム:125km/h)
0-100km/h加速:5.9秒
環境性能(NEDC複合モード)
燃料消費率:3.4L/100km
一充電走行距離:36km
車両本体価格:1167万円

※GENROQ 20160年 3月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。