アルファタウリF1技術責任者エギントンが語る開発の裏側(2)あえてRB16のリヤ部を使わなかった2021年型『AT02』

 話題の多かった2020年F1シーズンだが、ピエール・ガスリーとアルファタウリ・ホンダの初優勝は、中でも大きなハイライトだった。そのウイニングマシンAT01の開発責任者であるジョディ・エギントンに、レッドブルの姉妹チームのテクニカルディレクターとしての仕事、2021年型『AT02』の開発について聞いた(全2回)。

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 レッドブルの車体パーツを極力使い回すという、100%自製に拘らないこのシステムは、エギントンによればむしろアルファタウリ側に好都合なことが多いという。

「中団チームは、予算も人員も決して潤沢ではない。100%自製しなければ、そこで余った資源を、狙った分野に集中的に投入できる。さらにレッドブルが1年間使い続けたパーツということで、信頼性も保証されている」

 今や同様の開発アプローチを取るチームは、ハース、アルファロメオ、アストンマーティン、ウイリアムズと、ほぼすべての中団勢に広がっている。

「テクニカルディレクターに就任するまでのキャリアで、開発からレース現場まで手広く経験したことが、今の仕事にしっかり活きている」と、エギントンは言う。

「私の役目は目標を設定し、そのために何をすべきか、何が足りないか、幅広い視野で確認することだからだ。そして意思の疎通も、非常に重要だ」

 そのためエギントンは週のうち4日はファエンツァで過ごすものの、最低1日はイギリスに飛んで風洞設備を訪れるという。

「中でも一番重要な仕事は、新車開発のロードマップを提示することだ。空力、足周り、車体剛性、重量配分、信頼性など、各部門ごとに達成すべき目標と達成時期がある。全体を見渡して、それを決めていくわけだ。たとえば新車のホイールベースを何mmにするか、冷却システムの最終的な確定はいつにするか、決めるべきことは山ほどある」

 昨年のイタリアGPでピエール・ガスリーを勝利に導いたAT01は、エギントンがテクニカルディレクターとしてゼロから手掛けた最初のF1マシンだった。一番の特徴は、あらゆるサーキットの特性に、極端な苦手感なく適応できたことだ。

「ダウンフォース値を上げることは、もちろん大切だ。しかし我々は同時に、マシン挙動がナーバスになりすぎないことも重視した。どんな状況、どんな路面でも、ドライバーがミスを犯しにくい、運転しやすいマシンにすべきだと考えた」

2020年F1第8戦イタリアGP ピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)が初優勝
2020年F1第8戦イタリアGP ピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)が初優勝

 今季のAT02も、その延長線上で開発されている。今季のマシンは基本的には多くの部分で前年型を踏襲することが求められる。ただしトークンを使用することで、改良は可能だ。しかもチームによってトークンを使わずに変更することもでき、それができないチームはこのシステムへの不満を隠さない。

 たとえばアルファタウリはトークンなしで、レッドブルの昨年型ギヤボックスに換装できる。アストンマーティンも同様に、トークンなしでメルセデスの2020年型ギヤボックスに交換することになっている。

 ところがアルファタウリは、この恩恵を受けないことを決断した。
「AT01のリヤ部分は、そのまま残すことにした」と、エギントンは説明する。「簡単な決断ではなかった。プラスとマイナスの両面を、じっくり検討したよ。トークンを使わずにより新しいギヤボックスに換えられるのは、確かに魅力的な選択肢だ。しかし我々がAT02で集中して開発したかったのは、むしろマシン前部だった」

「さらにいえば、来季2022年のマシンは大きく変わる。そこにも資源を集中させないといけない。去年のAT01の完成度は高く、特にリヤの安定性は十分に満足できるものだった。なのであえて変更する必要はないと、判断した」

 もしレッドブルの昨年型RB16のリヤ部分を移植すれば、マシン全体の見直しが必要になる。去年の好パフォーマンスにも浮き足立たず、着実な開発を続けるエギントンらしい判断というべきだろう。

アルファタウリF1のチーム代表フランツ・トストとテクニカルディレクターのジョディ・エギントン
アルファタウリF1のチーム代表フランツ・トストとテクニカルディレクターのジョディ・エギントン