【F1バジェットキャップ解説(2)】予算削減に向け人員整理が必須。パーツ交換、2022年のマシン開発に影響も

 2021年シーズンよりF1に予算制限が導入されることで、複数のチームはマシン開発に多額の予算を投入することができなくなる。1年間に使う予算を削減するため、チーム側は様々な対応策を取っているところだ。今回は制限の導入により莫大な資金を持つチームにはどのような影響があると考えられるのか、また制限に違反した場合の罰則などについて紹介する。

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(4)違反が発覚した場合の罰則は?

 各チームの提出する報告書の内容に疑問点が出た場合、FIAはチームに追加データの提出を求め、検討を重ねる。そこで予算上限を超えたと判断されたチームには、一連のペナルティが待っている。

 具体的には罰金のほか、ポイントの剥奪、テスト日数の削減、風洞稼働時間の短縮、さらに悪質なケースでは出場停止、最悪な場合は選手権からの除外もありうるとのことだ。

(5)トップチームへの影響は?

 バジェットキャップの最大の狙いは、トップ3チームの支出を抑えることだった。忠実にバジェットキャップに従おうとすれば、年間予算を200〜300億円減らす必要がある。そのために彼らがまず着手したのが、人員整理だった。ただし単純に、従業員を解雇するわけにはいかない。

 たとえばフェラーリはマラネロ内に、フェラーリから独立した企業を設立。ここにスタッフを出向させ、これまでハースF1チームのマシン製作に関わっていたダラーラの仕事を請負わせる。メルセデスも新部門を設立し、同チームの大株主となったイネオスの参戦するアメリカズカップ用ヨットを開発、製作する。

 そしてレッドブルは、少なからぬスタッフをアルファタウリに出向させる。さらにフランスのレーシングチーム『オレカ』と提携し、水素エンジンのレーシングカーを開発。2024年からのル・マン24時間レース参戦を視野に入れている。

水素燃料電池プロトタイプカーのシャシー開発に向け、オレカとレッドブル・アドバンスド・テクノロジーズがタッグを組んだ
水素燃料電池プロトタイプカーのシャシー開発に向け、オレカとレッドブル・アドバンスド・テクノロジーズがタッグを組んだ

(6)マシン開発への影響は?

 バジェットキャップの導入は、各チームに様々な影響を与えるはずだ。考えられるひとつは、マシンパーツの寿命を長引かせることだろう。F1マシンに使用される膨大なパーツは、長く使えば使うほどマシン全体のパフォーマンスを低下させる。そのため多くのチームが、頻繁な交換を心がけてきた。

 しかし予算が限られていれば、それもできなくなる。2020年のハースがシャシー性能の低下を認識しつつ、財政難からパーツ交換ができずにそのまま使い続けたことは記憶に新しい。そんなパーツの使い回しが、2021年は多くのチームで見られることだろう。

 さらに2022年に向けての新車開発にも、大きな影響を受けるはずだ。来季は技術規約が大きく変わり、チームはこれまでとはまったく違うマシン開発を強いられる。しかしその開発も、限られた予算内で行わなければならない。

 トップ3チームは莫大な開発予算を投下することで、優位に立ち続けてきた。しかし今後は、その手法が通用しなくなることは確かである。

2020年F1第9戦トスカーナGP グリッド
2020年F1第9戦トスカーナGP グリッド