【F1バジェットキャップ解説(1)】上限額は開催数に応じて変動。監視には世界最大の弁護士事務所が全面協力

 2021年シーズンより、F1に予算制限が導入される。上限額は1億4500万ドル(約150億円)で、予算制限の影響を受ける複数のチームは様々な対応策を実施している。今回はその予算制限について、仕組みや、制限に含まれるものと含まれないもの、またチーム側への監視方法などを紹介する。

────────────────────

(1)バジェットキャップは開催数で変動する

 2021年から導入されるバジェットキャップ(予算上限規約)では、各チームの年間予算は1億4500万ドル(約150億円)ということになっている。ただしこれは年間21戦の場合であり、開催数が増減した際には1レースにつき120万ドル(約1億2600万円)の変動が加えられる。

 それゆえ史上最多の23戦が予定されている今季は(あくまで現時点では、だが)、1億4500万ドル+240万ドルで1億4740万ドル(約154億1900万円)となる。

 2022年以降、バジェットキャップはさらに厳しくなり、2022年は1億4000万ドル(約146億4490万円)、2023年は1億3500万ドル(約141億2190万円)まで下げられる。

2020年F1第13戦エミリア・ロマーニャGP スタートシーン
2020年F1第13戦エミリア・ロマーニャGP スタートシーン

(2)バジェットキャップに含まれるものは?

 150億円という上限は、毎年数百億円を費やしてきたトップチームにとっては非常に厳しい措置のように見える。たとえばメルセデス、フェラーリの年間予算は4億2500万ドル(446億円)、レッドブルは3億3500万ドル(352億円)だったと言われる。

 しかしこれには、カラクリがある。バジェットキャップで縛られるチーム支出は車体の開発製作がメインで、ドライバーや幹部スタッフの年俸は除外されている。具体的には、以下の項目が除外されている。

・パワーユニット購入代金(1500万ドルを上限に、それ以上の額は除外)
・ドライバーと上位3人の高額所得スタッフの年俸
・レース、テストでの移動、宿泊費
・マーケティング費、ファクトリー使用料
・選手権へのエントリーフィー、スーパーライセンス発給代金

 上記以上に大きいのが、ファクトリーの増築や工作機械の購入など、設備投資に関わる支出が除外されていることだ。今季は4500万ドル(約47億2500万円)、来季から2025年までは3600万ドル(約37億8000万円)を上限に、自由に使うことができる。低予算のF1への道のりは、まだまだ遠いというべきだろう。

マラネロにあるスクーデリア・フェラーリのファクトリー
マラネロにあるスクーデリア・フェラーリのファクトリー

(3)具体的な監視方法は?

 ではチームがバジェットキャップをしっかり守っているかどうか、どうやって監視するのだろう。通常のチーム運営に関しては、性善説に基づいた自己申告である。たとえば風洞にはFIAのカメラが設置されているとはいえ、使用時間はチーム側の申告を優先する。しかし今回のバジェットキャップについては、FIAはより厳格な運用を目論んでいる。

 基本的に各チームは、新たに設立された『FIAコストキャップ委員会』に詳細な予算の報告義務を負う。同委員会には世界最大の弁護士事務所のひとつ『ドゥロワット』が全面協力し、監視の目を光らせることになっている。協力(下請け)企業との金銭のやり取りも、妥当性が検討される。そこにはたとえばレッドブルとアルファタウリの車体開発に関わるレッドブルテクノロジーズも含まれる。

 まずは6月末までに、チームは1〜4月分の使用細目を同委員会に提出しなければならない。そして来年3月末には、シーズンを総括する年間報告書の提出が待っている。