500ps超のオープンカーはスーパースポーツ足り得るか? AMG GT CとR8 スパイダーで検証する【Playback GENROQ 2018】

500ps超のオープンカーはスーパースポーツ足り得るか? AMG GT CとR8 スパイダーで検証する【Playback GENROQ 2018】

Mercedes-AMG GT C Roadster × Audi R8 Spyder

メルセデスAMG GT C ロードスター × アウディ R8 スパイダー

“本気”の超高性能オープン

AMG GTファミリーにオープン版のGT ロードスター&GT C ロードスターが加わった。なかでもGT C ロードスターはGT Rに匹敵する出力の4.0リッターV8ツインターボを搭載し、リヤアクスルステアリングも採用するスーパースポーツだ。ライバルとして用意したのはAWD、自然吸気と対照的なR8スパイダーである。

メルセデスAMG GT C ロードスターとアウディ R8 スパイダーの走行シーン

「GT C ロードスターの実力をライバルのR8スパイダーと比較してあぶり出そう」

モノコックのルーフを切り取ればボディ剛性が下がり、ハンドリングと乗り心地のバランスが崩れるのは自明の理。おそらく、これが理由でオープンボディのスーパースポーツカーを諦めた経験の持ち主は少なくないことだろう。

では、先ごろデビューしたAMG GT C ロードスターはどうなのか? ライバルのR8 スパイダーと比較してその実力をあぶり出そうというのが、本企画の主旨である。

メルセデスAMG GT C ロードスターのエンジン

「GT CがGT Sの上位に位置づけられているのは疑いがない」

AMGがゼロから開発したオリジナルモデルのGTには、いずれもクーペボディとなるGT、GT S、GT Rの3グレードが用意されている。いっぽう、新たに追加されたロードスターはGTとGT Cの2グレード。何も知らなければロードスターのGT CよりクーペボディのGT Sのほうがパフォーマンスは高いと考えるのが自然だろう。

しかし、AMGはGT CのスペックをGT SとGT Rの間に設定した。たとえばGT Cの最高出力と最大トルクは557psと680Nmで両者のまさに中間。いっぽう、GT Cの全幅はワイドボディ採用のGT Rと同じ1995mmだが、トレッドは1680/1695mmでGT Rの1695/1685mmとは異なるほか、タイヤサイズはフロント265/35R19、リヤ305/30R20で、GT RよりGT Sに近い設定となっている。いずれにせよ、GT CがGT Sの上位に位置づけられているのは疑いがない。

メルセデスAMG GT C ロードスターの走行シーン

「ボディ剛性はR8と互角か、わずかに凌ぐように思えた」

走りはどうか? 排気系をVバンクの内側にレイアウトしたホットインサイドVを採用するAMGの新世代V8エンジンは、自然吸気に近いナチュラルなレスポンスとパワー特性が魅力だが、その美点はGT Cのパワーユニットにもそのまま受け継がれている。また、ノイズレベルは全般的に抑えめで、全開にしてもアメリカンV8を思わせるAMGの特徴的なエキゾーストノートを発しない点は個人的に嬉しかった。

注目のボディ剛性はR8と互角か、わずかに凌ぐように思えた。おかげで足まわりの動きがダイレクトに伝わり、タイヤが路面を捉えている様子を克明に把握できる。快適性の面からいうと、もう少ししなやかにストロークしてくれれば申し分ないが、そんなサスペンションの動きがはっきりと感じられること自体、ボディ剛性が傑出している証明だ。

メルセデスAMG GT C ロードスターのインテリア

「ワインディングロードではなぜかコーナーを攻めきれないもどかしさを味わい続けた」

もっとも、ワインディングロードではなぜかコーナーを攻めきれないもどかしさを味わい続けた。いわゆるフロントミッドシップ・レイアウトを採用する影響で、GT Cのボンネットは実に長大。その印象が「自分の目の前には大きなマスがある」という錯覚を生み出し、スーパースポーツカーといえばミッドシップに乗り慣れた者の心に「予想外の動きをするのではないか?」という不安をかき立てる要因となっていたのだ。ちなみに、この不安感は筆者だけでなく、同行した編集者のNも味わっていたようだから、さほど特別なものとはいえないだろう。

GT Cの名誉のために付け加えれば、そのコーナリングフォームはハードに攻めても安定しきったもので、トラクションコントロールやスタビリティコントロールの作動を示す警告灯は一度も点灯しなかった。もっとも、これがまたコーナーを攻め切れていないもどかしさを増長する一因となったのも事実である。

アウディ R8 スパイダーのエンジン

「R8の自然吸気V10は鋭いレスポンスと高回転域での官能的な吹き上がりを発揮」

生煮えの気持ちを抑えつつ、R8スパイダーに乗り換える。自然吸気V10は例によって鋭いレスポンスと高回転域での官能的な吹き上がりを発揮。また、ミッドシップゆえの軽快なノーズの動きに加え、リヤにどっしりと荷重が掛かっている安心感から走り始めた当初より安心してプッシュできる。その結果、まだ走り始めて間もないというのにタイヤの限界まで攻め込むことができ、トラクションコントロールやスタビリティコントロールの警告灯が点灯し始めた。GT Cと違って足まわりがしなやかで、路面への追従性がはるかに高く感じられることも、短時間でそのハンドリングを信じ切れる要因となっていたように思う。

ただし、冬のR8は寒い。オープンで走っているとキャビン後方からの巻き込みが激しく、どんなにヒーターを駆使しても腿から足首までが冷え込んでくる。ところが、GT Cではついぞ寒いと感じなかった。これはエアスカーフに代表されるメルセデスのオープンモデルでお馴染みの暖房装備が充実していることに加え、ボディ形状を工夫することで後方からの風の巻き込みを巧みに防いでいるためだろう。冬にオープンで走らせるなら、GT Cのほうが圧倒的に快適といえる。

メルセデスAMG GT C ロードスターとアウディ R8 スパイダーのリヤスタイル

「圧倒的なスタビリティを誇るGT C! 一方、官能性と軽快な走りで優位に立つR8」

R8でひと通り走り終えた後、再びGT Cのステアリングを握ってみた。すでにすっかり身体は馴染んでいるはずなのに、まだ警告灯はチラリとも点灯しない。しかし、よくよく見てみればスピードメーターの表示は同じコーナーをクリアしているときのR8を凌いでいた。つまり、攻めきれないもどかしさはあくまでも先入観によるもので、安心して走行できるペースはGT CがR8を上まわっていたのである。

これは実に意外なことだ。GT Cはドライサンプにより重心を下げ、トランスアクスルで前後重量配分を適正化したとはいえ、あくまでもフロントエンジン。リヤグリップの改善に役立つ4WSがGT Rに続いて標準装備されることになったとはいえ、ミッドシップのR8を上まわるスタビリティを発揮したのだから、やはり驚異的というしかない。風の巻き込みを抑えて快適性を高めた点もGT Cの美点だ。AMGの技術者には脱帽するしかない。

一方、R8にはNAエンジンの官能性、ミッドシップが生み出す軽快な回頭性と扱いやすさ、そして滑らかな乗り心地と優れたロードホールディング性という魅力が存在する。したがって現実的なパフォーマンスでいえばGT C、走りの満足感でいえばR8を選びたくなるというのが、私なりの結論である。

REPORT/大谷達也(Tatsuya OTANI)
PHOTO/田村 弥(Wataru TAMURA)

【SPECIFICATIONS】

メルセデスAMG GT C ロードスター

ボディサイズ:全長4550 全幅1995 全高1260mm
ホイールベース:2630mm
トレッド:前1680 後1695mm
車両重量:1740kg
エンジンタイプ:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:3982cc
圧縮比:9.5
最高出力:410kW(557ps)/5750-6750rpm
最大トルク:680Nm(69.3kgm)/1900-5500rpm
トランスミッション:7速AT
駆動方式:RWD
サスペンション:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前265/35R19 後305/30R20
最高速度:316km/h
0-100km/h加速:3.7秒
環境性能(EU複合)
CO2排出量:259g/kg
燃料消費率:11.4L/100km
車両本体価格:2298万円

アウディ R8 スパイダー V10 5.2FSI クワトロ

ボディサイズ:全長4425 全幅1940 全高1240mm
ホイールベース:2650mm
トレッド:前1645 後1610mm
車両重量:1770kg
エンジンタイプ:V型10気筒DOHC
総排気量:5204cc
圧縮比:12.5
最高出力:397kW(540ps)/7800rpm
最大トルク:540Nm(55.1kgm)/6500rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:AWD
サスペンション:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前245/35ZR19 後295/35ZR19
最高速度:318km/h
0-100km/h加速:3.6秒
環境性能(EU複合)
CO2排出量:277g/kg
燃料消費率:11.7L/100km
車両本体価格:2618万円

※GENROQ 2018年 2月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。