【ホンダ清水MS部長ショートインタビュー】気になるスーパーフォーミュラの空席とF2との違い

 コロナ禍の影響で外国人ドライバーの目処が立たない2021年のスーパーフォーミュラのドライバーラインアップ。1月15日に発表されたホンダ陣営のドライバーラインアップは3名分がTBN(交渉中)のままだが、チーム側からは体制が決められないとの悲痛な声も聞こえてきている。いくつか決まっていないチームとの進捗、そしてメーカー側から見たスーパーフォーミュラへのスタンスについて、ホンダ・モータースポーツ部の清水宏部長に聞いた。

──スーパーフォーミュラのホンダ陣営のドライバーラインアップは現在、3席がTBNのままですが、そのいくつかは交渉が滞っているとも聞きました。現在の状況を教えて頂けますでしょうか。

「ドライバー選定については現在、チームとホンダの間で協議をしているのは事実です。お互いの意見が違っているというのもありますので、まだ決着はついていません」

──スーパーフォーミュラに関してはメーカーよりもチームが主体というスタンスだと思いますが、ドライバーについて現実的にトヨタ陣営は実質、トヨタとの契約ドライバーしかスーパーフォーミュラに乗れない状況です。ホンダも同様に契約ドライバーに、ということになるのでしょうか。

「私どもとしても、同じ状況と理解して頂ければと思います。決まっていないチームには今、代替案を出していまして、詳細は申し上げられませんが、ホンダとしてこのような形はいかがですかというアイデアを出して、まだチーム側から回答を頂いていない状況です」

──ファンにとっても、私どもにとっても一番避けたいのは参戦台数が減ってしまうことです。

「ええ。私たちもスーパーフォーミュラというカテゴリーは、本当に全世界的に見ても非常にレベルの高いフォーミュラカーレースだと思っています。このようなレースが日本にあるというのは、他の国に誇れることだと思っています。ですので、そのスーパーフォーミュラがどんどん賑やかに大きくなっていけばいいと思っていまして、その考えは昔から変わっていません」

「最近の話になりますが、アメリカで活動しているHPD(ホンダ・パフォーマンス・ディベロップメント)がフォーミュラ・リージョナル・アメリカズ(FRA)の成績優秀者を対象に奨学金、スカラシップを用意して日本のスーパーフォーミュラに挑戦してもらって、ゆくゆくはインディのホンダドライバーになってもらうなど、クルマの数を増やすという単純なことだけではなくて、ホンダとしてのネットワークを使ってスーパーフォーミュラのステータスを上げていきたいと思っています。そのような取り組みも今年から始めていまして、スーパーフォーミュラへの思いは昔から変わっていません」

──2018年にはニッサンのドライバーでもあった千代勝正選手がホンダエンジンを使用していましたが、現在はその方針が変わったということでしょうか。

「方針と言いますか、先ほどのトヨタさんの動きもありますように、みなさんの方がよく理解されていると思いますので、あえて私の方からは明確なお答えは避けさせて頂きます」

──これから国内だけでなく、世界的にも新規で参戦したいチームが出てくると思いますが、エンジン供給に関しまして、チーム側へはどのような条件が求められるのでしょうか。

「抽象的な伝え方になってしまいますけど、日本のスーパーフォーミュラは先ほども申し上げましたように、世界的に見ても高レベルのレースだと思っています。そういう意味では、国内最高峰のレースに参戦するにふさわしいチーム体制であるということを最初に挙げさせて頂きます。そしてふたつめは、我々ホンダと同じ価値観を持っているチームであってほしいなと思っています。それは別に我々ホンダの考えを押し売りするとかではなく、一緒に長い期間、協力し合えるということをお願いしたいと思っています」

──エンジン供給数を増やして、これから新規チームへ供給することも、当然、否定はしているわけではないということですね。

「もちろん。その話ですと最近ではThreeBond Drago CORSEに2019年からいろいろ話を聞かせて頂き、何度も合って面談を重ねて、お互いの考えを共有し合って参入して頂いていますので、今のお話のとおり、否定しているわけではございません。相応しいチームにはいつでもエンジンを供給する準備はあります」

──よくFIA-F2とスーパーフォーミュラは比較されますが、改めまして、スーパーフォーミュラに参戦するホンダ契約ドライバーに期待することはどのような内容になるのか教えて頂けますでしょうか。

「いろいろな要素があると思いますが、現実的なところで言いますとみなさんご存知のように、F1へのパワーユニット供給は今年限りということになっていますので、そういう意味ではまずは国内でフォーミュラレースをもっと大きなものにしていきたい。お客さんから注目を浴びるような、関心の高いものにしていきたい。その期待から言うと、ホンダのドライバーにはもっともっと活躍してもらいたい。そういう想いの方が、今は強いかなと思います」

──F1へのステップアップカテゴリーという見方もスーパーフォーミュラにはありますが、育成の一環というよりも、ここでドライバーとしてのパフォーマンスをお客さんにきちんと見せるカテゴリーという位置づけですね。

「そうですね。付帯事項としてFIAのスーパーライセンスポイントを獲得していけるわけですけど、そのスーパーライセンスへのポイントを獲得するがためというよりも、できるだけレベルの高いレースを他のチームと繰り広げてほしいという想いが強いです。そういう意味ではFIA-F2とは明らかに立ち位置が違うレースだと認識しています」

──その思いを踏まえて、今年、3度目のチャンピオンを獲得した山本尚貴選手が移籍するラインアップを発表しました。今年のラインアップの意図を教えて頂けますでしょうか。

「先ほど、私がお話しました内容とつながりがあるのですけど、ホンダのエンジンを積んでいるホンダ系チームがよい成績を収めるためというのが、優等生的な回答になります(苦笑)。私はよくホンダの社内で言うのですが、スーパーフォーミュラはシングルシーターでドライバーが1台にひとりですので、責任がひとりにのし掛かってくる」

「それでもひとりとはいえ、チームメイトから学ぶこと、チームメイトから受ける刺激にはとても大きなものがあると思っていまして、それを考えると今年は3度のタイトルを獲得したベテランの山本尚貴と昨年ルーキーで今年2年目の大湯都史樹を組ませることによって、新しい化学反応を見てみたいのと、あともうひとつの変更点として年齢が近いふたり、牧野任祐と福住仁嶺を昨年山本がチャンピオンを獲得したDOCOMO TEAM DANDELION RACINGの同じチームで競わせると何が起こるかというところで、ホンダの全体の底上げを計っていきたい思いがありまして、総合的に考えたラインアップになっています」

──その新しいラインアップで、2021シーズンのスーパーフォーミュラがどのようなシーズンになることを期待していますか。

「去年がコロナの影響を受けてしまって、シーズン後半にレースが詰まった変則的なスケジュールになってしまったので、今年はそのようなことがなく、できるだけ通常のカレンダーどおりに、そして観客のみなさまがサーキットの来ることができて、華やかなレースが毎戦毎戦できるということが一番よいことだと思っていますので、まずはそれを期待したいです。その上でホンダのチーム、ドライバーが勝ってもらいたい。それがホンダとしての想いです」

 昨年、スーパーGT500クラス、そしてスーパーフォーミュラの国内最高峰の両カテゴリーでタイトルを独占したホンダ陣営。果たして残り未定の3席のドライバー、そしてチームとどのように2021年の開幕戦を迎えることになるのか。

スーパーGT GT500クラスでの戴冠に続き、全日本スーパーフォーミュラ選手権でもシリーズチャンピオンを獲得した山本尚貴(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)
スーパーGT GT500クラスでの戴冠に続き、全日本スーパーフォーミュラ選手権でもシリーズチャンピオンを獲得した山本尚貴(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)