「電動キックボード」使い道で適用免許が変わる!? 警察庁のパブコメでわかった、道路交通法特例はとっても複雑

■レンタルでは小型特殊免許、個人所有なら原付免許

警察庁は2021年2月4日、シェアリング事業者向けの電動キックボードの特例措置の方針を決めました。その内容について、パブリックコメントを3月6日まで募集していますので、詳しく解説します。

道路交通法で電動キックボードは「原動機付自転車」(=排気量50ccバイク相当)に分類されています。

警察庁は今回パブリックコメントで意見を求める特例措置で、シェアリング事業者が利用者に貸し出す電動キックボードに限り「小型特殊自動車」と位置付け、従来の取り扱いを変更しました。

株式会社Luupによる千代田区で行った実証実験の様子(提供 マイクロモビリティ推進協議会)

小型特殊車両はフォークリフト、除雪車、農耕用のトラクターなど限られた用途のために作られた車両のことで、公道を走るためには小型特殊免許が必要です。電動キックボードはこの仲間とされたわけです。

そのため「原付」免許では運転することができなくなりました。貸出車を利用するためには「小型特殊」または「自動二輪」「普通」などのそれより上位の免許が必要です。

この“みなし規定”は、運転免許の種類が車両の所有者によって変わるという今までの道路交通法になかった規定です。

しかも、運転できる免許の種類はシェアリング事業者が届け出た範囲内で運転するか、その範囲の外で運転するかによっても違ってきます。

「事業者が届け出た範囲を超えた場合は、原動機付自転車として取り扱う」(警察庁交通局)

なぜこんな複雑な“特例”を作ったのでしょうか。この理由を語る前に、事業者が貸し出す小型特殊扱いの電動キックボードで、何が変わるのかをお話します。

●ヘルメット不要、最高時速は15km/h

電動キックボードが小型特殊に位置付けられた場合、原動機付自転車とは大きく違うことがあります。最も大きな変更点は「ヘルメットは任意」ということです。

原付乗車ではヘルメット着用が義務付けられていますが、小型特殊の運転では規定がありません。一部のニュースでは「ノーヘルを認める」と表現を使っていましたが、義務ではないので違反にならないということです。電動キックボードのノーヘル運転を認めたわけではありません。

また、最高速度も15km/hになりました。シェアリング事業者の電動キックボードが原動機付自転車扱いだった時は20km/hでした。しかし、小型特殊車両の最高時速は15km/hに定めれているため、上限が引き下がったように見えます。

この特例の設置を働きかけたのは、電動キックボードのシェアリング事業者などで構成される「マイクロモビリティ推進協議会」です。

彼らは、車両貸出時のヘルメット装着義務の撤廃を訴えていました。産業競争力強化法という法律を利用して、新しいシェアリング事業のためには道路交通法の規制を変える必要があると考えたわけです。

電動キックボードによる実証実験の様子(提供 マイクロモビリティ推進協議会)

産業競争力強化法は、新しい産業が発展するための規制を緩和することで企業の競争力を強め、国民生活の向上や国民経済の健全な発展につなげようとする法律です。新産業と認められると、事業者の申請により規制のあり方を再考します。

今回は道路交通法の規制がシェアリング事業を展開する上で障害になっているという申し出から、規制が見直されることになりました。

しかし、この産業競争力法で見直しができるのは政省令の範囲まで。法律の条文を変更することはできません。

原付のヘルメット着用義務は道路交通法の条文で定められています。この義務を外すためには、事業者が貸し出す電動キックボードを小型特殊扱いにするしかなかったわけです。

電動キックボードが小型特殊車両にみなされた違和感の根源はここにあります。

●自転車より遅い電動キックボードは、本当は何?

一方、今回の特例では小型特殊車両とみなすだけでは解決できない規制緩和も盛り込まれました。

それが自転車道の通行ができるようになること。また、押して歩いた場合は歩行者として扱うことです。

どちらの規制緩和も、事業者のキックボードを自転車として扱っているから可能になりました。そのため対象となるキックボードは15km/hを超えて走ることができないこと、という基準があります。

しかし、警察庁は電動アシスト自転車では、電動モーターによるアシスト力を24km/hまで許容しています。同じ自転車道を走る車両で、この制限速度の差は、なぜ生まれたのでしょうか。

さらに、こんな疑問もあります。シェアリング事業者が扱う電動キックボードは小型特殊扱いなので、自転車や原付のように二段階右折をする必要はありません。

それなのに、一方通行などの規制では小型特殊ではなく自転車と同じ扱い。小型特殊や原付が含まれる自動車の一方通行には従う必要がありません。

警察庁交通局は、今回の特例についてこう話します。

「あくまで自転車は自転車なので、ここに整合性を取らなければならないとは思っていない。あくまで別のもの。特例なので、一般的制度ではない」。

優良運転者の更新時講習のオンライン化に着手した警察庁
新しいパーソナルモビリティの対応に追われる警察庁

シェアリング事業者は、事業計画の中で活動エリアを決めて事業を行うことが定められ、そのエリアも「区域内に交通の著しく頻繁な道路がないこと」が条件になっています。警察庁はこのことで、混合交通の危険を避けることができると考えているようです。

それでも電動キックボードを小型特殊とみなすことは、ほかにもさまざまな疑問を投げかけます。

たとえば起きた事故は原付事故なのか、小型特殊なのか、自転車なのか。小型特殊の税金は原付より高額ですが、どう課税していくのでしょうか。

特例対象となる電動キックボードは、小型特殊車両、原付自転車、自転車というさまざまな側面を持ち、一般には理解されにくい存在です。

こうした難解な規制を残したまま、本当に国民の移動を便利にすることができるのでしょうか。新しいパーソナルモビリティのあり方は、パブリックコメントなどで断片的にしか伝えられません。国民全体で課題を共有して考える必要があるのではないでしょうか。

(文・写真:中島 みなみ)