安全性向上目指すFIA、グロージャンの大クラッシュなど2020年F1の重大事故を分析

 FIAは、2020年F1バーレーンGPで起きたロマン・グロージャンのクラッシュなど重大な事故から学習し、安全性を高めるため、あらゆるデータを調査している。事故原因を理解し、マシンとサーキットの安全性をいかに改善するかを把握して、ドライバーの健康状態への影響を最小限にすることをFIAは目指している。

 バーレーン・インターナショナル・サーキットでの決勝序盤にハースのグロージャンがクラッシュ、マシンが激しく炎上した。この恐ろしい事故のデータの回収と分析が今も行われている。FIAは季刊誌『Auto』のなかで、2020年のF1で起きたその他4件の大事故からのデータを一部明らかにした。イギリスGPでのダニール・クビアトのクラッシュ、モンツァでのシャルル・ルクレールの事故、ムジェロでのトスカーナGPでのスタート時の多重クラッシュ、そしてそのレース後半で起きたランス・ストロールの事故だ。

 クビアトは288km/hを超えるスピードでマシンのコントロールを失い(ホイールのトラブルが、右リヤタイヤに即座に影響した)、コンクリートのバリヤに衝突した際に25Gの衝撃を受けた。そこは通常は事故が起こらないコースの一角と見なされていたため、タイヤによる保護がなかったのだ。1週間後の70周年記念GPでは、タイヤが同じウォール前に設置されたが、幸いなことにその安全性能を試すことになったドライバーはいなかった。

2020年F1第4戦イギリスGP決勝 ダニール・クビアト(アルファタウリ・ホンダ)がクラッシュ
2020年F1第4戦イギリスGP決勝 ダニール・クビアト(アルファタウリ・ホンダ)がクラッシュ

 ルクレールはモンツァのパラボリカでコースオフを喫した。ピットストレートに入った彼は、衝突するまでにスピードを210km/hから155km/hまで落としていたものの、バリアへの衝突角度はクビアトよりも悪く、そのために瞬間的に32Gの衝撃を身体に受けた。対照的に、ストロールが突然のパンクのためにクラッシュした際に受けた衝撃は19Gと計測された。タイヤのパンク時にストロールは270km/hで走行していたのだが、衝突角度が48度だったことが理由だ。

2020年F1第8戦イタリアGP決勝 シャルル・ルクレール(フェラーリ)がクラッシュ
2020年F1第8戦イタリアGP決勝 シャルル・ルクレール(フェラーリ)がクラッシュ

 この10年間、FIAはF1だけでなく、サーキットレースからラリーまですべてのカテゴリーで起きた事故の分析を行い、膨大なデータベースを構築してきた。ドライバーのリスクを軽減するための対策を見出すためだ。そうしてF1において変更されたことのひとつが、バリアである。『Auto』によると、コースの各カ所におけるマシンの走行スピードと考えられる衝突角度によって、伝統的なタイヤバリア、アメリカで考案されたSAFERバリア、そしてさらに現代的なTECPROバリアから、使用されるバリアの型が選ばれるという。

 すべてのデータが過去10年にわたって改良されてきたコンピュータプログラムに組み込まれており、そのなかのソフトウェアが、どの型のバリヤをどの角度で各コーナーに設置すべきか決定する。

 データ収集における大きな一歩は、すべてのマシンにブラックボックスが導入されたことだ。これによりFIAは事故分析に関連するすべてのデータに完全にアクセスすることができる。技術者には、マシンがバリヤに衝突する際の速度と角度、また最終的にウォールに衝突した際の衝撃の重大度といった情報が与えられる。

 バーレーンでのグロージャンの事故についての調査は現在も継続中だ。関係者からの情報によると、ターン3出口のストレートに設置された金属製ガードレールが彼の命を救ったようだ。もし彼が硬いコンクリートブロックに衝突していたら、内臓器官は深刻なダメージを受けていたという。衝突時のハースのスピードは非常に高かったが、金属製のアームコバリアには柔軟性があり、部分的に崩壊することで大きなエネルギーを消散させる。それによってグロージャンの脳や他の生命維持に必要な器官に影響が及ばなかった。

2020年F1第15戦バーレーンGP決勝 ロマン・グロージャン(ハース)が大クラッシュ。マシンが真っ二つに
2020年F1第15戦バーレーンGP決勝 ロマン・グロージャン(ハース)が大クラッシュ。マシンが真っ二つに

 2014年日本GPで、ジュール・ビアンキが、125km/hで走行時にエイドリアン・スーティルのザウバーを回収していたトラクターに衝突するという事故が起きた。ビアンキは硬い障害物に衝突し、瞬時に減速したことで、瞬間的に254Gの力が生み出されてしまった。