ブガッティ ボリードの超軽量ボディはかくして作られる。3Dプリント技術が生み出す0.5mmの薄肉パーツとは

ブガッティ ボリードの超軽量ボディはかくして作られる。3Dプリント技術が生み出す0.5mmの薄肉パーツとは

Bugatti Bolide

ブガッティ ボリード

最高速度500km/h超えを標榜

フランス語で“火球”、転じて“高速で走るレーシングカー”を意味する「bolide」を車名に冠する孤高のコンセプトカー、ブガッティ ボリード。史上最速のブガッティを謳うスタディモデルは、高度なシミュレーターを駆使して設計からデザイン、パフォーマンスを徹底分析している。シミュレーション上では、最高速度は500km/hを超え、ニュルブルクリンク北コースを5分23秒1、ル・マン24時間レースを開催するサルト・サーキットを3分07秒1でラップできる能力が証明されているという。

とりわけ、そのパワーウェイトレシオは驚異的だ。ボリードは乾燥重量1240kgのボディに最高出力1850ps/最大トルク1850Nmの8.0リッターW型16気筒ユニットを搭載しており、つまり1psあたり0.67kgというF1マシン並みの数値を標榜している。

ブガッティ ボリードのフロント

人間の骨に近い複雑構造を再現

ボリードの超軽量設計のカギを握っているのは、3Dプリント技術を活用したパーツの数々。たとえばサスペンションのプッシュロッドはチタン製の中空構造になっており、重量はわずか100g。内部に強度を最大限に引き上げるアーチ形状を採用し、最大3.5トンの荷重に耐えるという。

3Dプリント技術を用いたコンポーネントの設計には、生物工学的な視点を駆使。薄い壁面や中空部材、枝分かれした形状などは、複雑な骨の構造を参考にしている。プッシュロッドの壁厚ひとつとっても、受ける負荷に合わせて各部の厚みを変更するなど、人間の骨のように複雑な内部構造とした。この特別な仕組みについて、同社は特許を申請している。

ブガッティ ボリードのプッシュロッド&ロッカー&ロッカーブラケット

金属づかいのスペシャリストが考案

ボリードに搭載する3Dプリンタ製パーツのプロジェクトを指揮しているのは、ニューテクノロジー部門のスタッフ、ヘンリック・ホッペ。2017年より、革新的な金属材や製造工程についての研究開発を進めてきた。ホッペは3Dプリント技術を用いたチタン製ブレーキキャリパーの計算方法についての修士論文を手掛けており、シロンのブレーキキャリパーと同等の剛性を確保しながら、重量を43%削ることに成功している。ホッペは語る。

「3Dプリンタの造形方法のひとつ、SLM(Selective Laser Melting=選択的レーザー溶融法)を用いることで、中空かつ複雑な内部構造をもつ軽量で剛性の高いコンポーネントを作り出すことが可能になりました」

ホッペは設計から生産、デリバリーに至るプロセス全体に画期的なアイデアを投入。それにより、従来は宇宙航空産業でしか使われてこなかったコンポーネントも、自動車の分野でコスト的に問題なく利用できるようになるのだという。

ブガッティ ボリードの“ターボファン”ホイール

3Dプリント技術をいち早く導入

ブガッティは金属3Dプリンタの分野へいち早く挑戦してきた。シロンには、量産車で初めて金属3Dプリンタ製の機能部品を搭載。クラッチフルードリザーバー脇の小さなウォーターポンプに採用した。2018年には3Dプリンタで大型のチタン製ブレーキキャリパーを製造。さらに、カーボンファイバーとチタン製3Dプリント金具を組み合わせたハイブリッド部品も開発している。

ボリードにも多くの3Dプリンタ製パーツを搭載している。その一部を見てみよう。まず、足元にはホイールハウジング内の熱を外部に放出し、ブレーキ冷却効率を向上するターボファンホイールを採用。この中央ボウル部分には0.48mm厚の3Dプリンタ製チタン材を、そしてインナーブレードと0.7mm厚のプレート部には3Dプリンタ製カーボン材を使っている。これにより、リヤの18 1/4インチターボファン(フロントは18 1/4インチ)は1個400g以下という軽さを実現した。

ブガッティ ボリードのステアリングコラム

市販モデルの試験台として

3段階に高さを調整できるフロントウイングの取り付け用ブラケットにも3Dプリンタ製チタン材を使用。内部は中空としながら、厚さをたった0.7mmに収めたブラケットはわずか600gと超軽量で、かつ最大800kgまでのダウンフォースに耐える。300km/で1.8トンものダウンフォースがかかるリヤウイングにも、チタン製パーツを搭載。さらに、ステアリングコラムの支持部やキャビン内のエアコン吹き出し口にもチタン材を使用している。

また、テールパイプのカバーも厚み0.5mmのチタン及びセラミックのハイブリッド材で、全長280mm超の筐体ながら、750g以下の重量に抑え込んだ。セラミックはチタンに比べて熱伝導率が低く、チタン材の内側に使用することでカーボンの外皮を熱源から守る機構としている。

ブガッティ ボリードのリヤビュー

3Dプリンタ製のコンポーネントを多用したボリードは単なるコンセプトカーではなく、「将来的に市販モデルへと投入される技術の貴重なテストベッド」(ブガッティ技術開発責任者、ステファン・エルロット)であるという。今後のブガッティ車には、チタンやセラミックなどの先進的なマテリアルが積極的に投入されていくはずだ。

【SPECIFICATIONS】

ブガッティ ボリード

ボディサイズ:全長4756 全幅1998 全高995mm

ホイールベース:2750mm

オーバーハング:前963 後1040mm

地上高:75mm

車両重量:1240kg

エンジン:W型16気筒ガソリン

総排気量:7993cc

最高出力:1361kw(1850ps)/7000rpm

最大トルク:1850Nm/2000-7025rpm

パワーウェイトレシオ:0.67kg/ps

トランスミッション:7速DCT

駆動方式:AWD

サスペンション形式:前後ダブルウィッシュボーン

ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク

タイヤサイズ(ミシュラン・レーシングスリック):前30/60R18 後37/71R18

【シミュレーション計測によるパフォーマンススペック】

0-100km/h加速:2.17秒

0-200km/h加速:4.36秒

0-300km/h加速:7.37秒

0-400km/h加速:12.08秒

0-500km/h加速:20.16秒

0-400→0km/h:24.64秒

0-500→0km/h:33.62秒

ル・マン・サルト・サーキット:3分07秒1

ニュルブルクリンク ・ノルトシュライフェ:5分23秒1

最大横G:2.8G