コロナ禍でF1チームの新車準備に遅れ。厳しい移動制限で初始動がままならず

 新型コロナウイルス感染拡大により、ヨーロッパの一部では、この2週間のうちに移動制限がより厳しくなり、ポルトガル、スペイン、イギリスでは必要な目的を持たない者の入国が基本的に禁じられている。ひとつの国に技術センターを持ち、スタッフが住むF1チームは問題ないが、複数の拠点を異なる国々に持つチームは、今後ロジスティクスの面で苦労することになるだろう。ハースF1チームはそのひとつだ。

 アメリカに住む代表ギュンター・シュタイナーは、状況をこう説明する。
「今、私はノースカロライナの自宅にいる。イギリスのバンベリーにあるファクトリーに行きたければ、到着時に2週間の自己隔離を行う必要になる。例外的措置はアスリートにしか認められておらず、ビジネスマンには適用されないからだ」

「そのためここにとどまっている。カナポリスの拠点で作業し、バンベリーのスタッフとオンラインで連絡を取り合っているのだ」

 F1に参戦してからの5年間、ハースはシャシーの組み立てを北イタリアにあるダラーラのファクトリーで行い、それをバンベリーに輸送し、そこでテストやレースへの準備を行っていた。しかし2021年には昨年型のシャシーの大部分が持ち越されるため、チームは、イタリアから送られた新しいパーツをバンベリーで組み立てるという形をとることに決めた。

「今年はアンダーボディの構成に関して新たに厳格な規則が定められた。ダウンフォースを削減するためにリヤをカットし、いくつかのパーツを設計し直す必要がある。新しいフロアを作らなければならず、新しいフロントウイング、バージボード、ブレーキダクトも取り入れる。それがマシンリヤの全体的なデザインに影響した」とシュタイナーは言う。

「つまり新しいパーツを大量に装着することになるのだが、それをバンベリーで行う。そして2月第2週にはマシンが走行できる状態になるはずだ」

 ところがマシンの初始動の日程は定められていない。ファイアアップは新しいシャシーのテストを始める上で重要なプロセスだが、現時点でフェラーリのパワーユニット(PU/エンジン)を始動するために必要なメカニックやエンジニアがハースのファクトリーまで来ることができないためだ。彼らがバンベリーで仕事をするには、ヒースローのホテルで2週間の隔離期間を過ごす必要があり、それは現実的ではない。

 ルノーも同様の状況に陥っていると思われる。パワーユニット部門はフランスのビリー・シャティヨンに、シャシー部門はイギリスのエンストンにある。彼らは大幅な変更を施したパワーユニットをアルピーヌのシャシーに搭載して始動するためにはフランスからイギリスにスタッフを派遣する必要があるが、それが困難だ。しかしルノーはイギリス政府から例外許可を得るための申請を行うことを検討している。ハースのような独立系の小規模チームとは異なり、ルノーは大きな影響力を持つ自動車会社であり、許可を取り付けることに成功する可能性はある。

アルピーヌF1チーム 2021年型マシン『A521』の冬仕様カラーリング
アルピーヌF1チーム 2021年型マシン『A521』の冬仕様カラーリング

 レッドブルに関しては、イギリスのミルトン・キーンズの拠点で冬を過ごしているホンダのスタッフがレッドブルのファクトリーでRB16Bのファイアアップのための作業を行うことができる。ただ、アルファタウリはイタリアに拠点を持つため、その点で状況が複雑になる。アルファタウリは2月第3週にイモラで新車のシェイクダウンを行う予定だが、ホンダのスタッフが短期間のうちにイタリアとイギリスを行き来できるのかどうか懸念がある。