GRヤリスのエンジンに飯田裕子が恋をした!?G16E型は伝説の名機4AG型の後継になる予感!

■モータージャーナリスト・飯田裕子流、GRヤリス全グレード、それぞれの楽しみ方

●1.6L 直3 4WD 6iMTのRZ“High performance”は「思わず踏んじゃう!」by裕子

GRヤリスRZハイパフォーマンスの走り
GRヤリスの1.6Lエンジンは歴史に残る名機になる!

マニュアルで、4WDで、コンパクト。2WDでもいいけれど、ちゃんと曲ってくれるなら4輪が駆動するなんて贅沢。しかも絶滅危惧種的なマニュアルで、よりあんなこんなコーナーも路地裏もスイスイ走らせられるコンパクトボディで…と、そっち系のモデル好きにはたまらないキーワードが並ぶGRヤリス(ATもあります)。

トヨタのスポーツカーブランド『GR(GAZOO Racing)』が世界の“道”に送り出したGRヤリスは、全長3995mm×全幅1805mm×全高1455mmのコンパクトなボディに様々な“本気”を詰め込む、極上のホットハッチです。

トヨタがWRC(世界ラリー選手権)で培った技術やノウハウを、市販車に詰め込んだモデル。それはある意味では確かに特別なモデルではあるけれど、ラリーのような過酷な状況で確実にゴールを目指すためにマシンに求められたのは、パーツのようなハード面の性能や精度や信頼性だけでなく、ドライバーのスキルを発揮しやすい環境、つまり、精神面をも支える安心、安全なクルマづくりにまで及びます。

ロードカーであるGRヤリスにはそんな安心感と走らせる快感を、手に届きやすい価格としながら、動力性能ではレーシングカーに近い高精度を求め、製造ラインも専用ラインを新設。その上、ナビやオーディオ、予防安全/運転支援技術、それにシート&ステアリングヒーターまで備える(オプション装備含む)モデルで日常的に愉しむことができます。

RSの走り
RSの走り

GRヤリスはトヨタとしては20年ぶりのモータースポーツを起源とするモデル(=セリカGT-FOUR以来)となるそうですが、街乗りコンパクトハッチであればスターレットターボあたりまでつい遡りたくなり、後に紹介する走行性能のみならず、様々な装備の充実と進化が大人には満足/納得ができるのではないでしょうか。

『ヤリス』と名の付くモデルにも、普通のハッチバックモデルに加えSUVもあり(ヤリスクロス)、さらにGRヤリスのようなスポーツモデルがあります。スポーツ走行性能に特化したGRヤリスは、普通のヤリスとボディ骨格やサイズもちょっと異なります。骨格の前半はヤリス、後半には専用サスペンションや走行性能を高めるリヤデフなどを装備するために、プリウスなどに採用される1クラス上のものが組み合わされています。

GRヤリスのフロントビュー
GRヤリスのフロントビュー
GRヤリスのリヤビュー
GRヤリスのリヤビュー

そこで、普通のヤリスに対して全長+55mm×全幅+110mm×全高-5mm。ボディの接合もスポット溶接の箇所をボディ前半を中心に200ヵ所増やし(紙と紙をホッチキスで留める箇所を増やすと、よりしっかり留まるというようなイメージ)、構造用接着剤の使用箇所も延長。ボディ剛性の強化にも余念がありません。その上、軽量化についてもルーフはカーボン、ドアやボンネット、リヤゲートはアルミ。最パフォーマンスモデルとなると「せっかくボディ腰上で頑張って軽量しているのだから、腰下もより軽くしたかった」と開発者が言うように、ホイールまでBBS製の鍛造ホイール(4本で約-10kg)を標準装備します。

●3種が用意されるGRヤリス

G16Eエンジン
1.6L 3気筒ツインターボのG16Eエンジン

ラインナップは3タイプ。新開発された1.6L 3気筒ツインターボエンジン(272ps/370Nm)に6iMT(インテリジェント・マニュアル・トランスミッション)を組み合わせ、同じく新開発のスポーツ4WD”GR-FOUR”を搭載、さらに高性能なブレーキシステムをする点を共通とするRZと、サーキット走行でもしっかり走れるというRZ“High performance”。そして1.5L 3気筒エンジン+AT(CVT)でライトにスポーティなドライビングが楽しめるRSがあり、3車3様のサスペンションチューニングが施されています。

最パフォーマンスモデルのRZ“High performance”は前述のとおり新開発された1.6L 直3ツインターボエンジン(272ps/370Nm)に6iMTを組み合わせ、スポーツ4WDには駆動配分が変わる3モード(ノーマル=前輪60:後輪40/スポーツ=30:70/トラック=50:50)が選べるスイッチも用意されています。またこのモードに連動してスポーツモードVSCの制御をドライバーが任意で緩めることも可能。さらにRZ“High performance”に特化した装備としては前後にトルセンLSDを標準採用し、ミシュランのパイロットスポーツ4S(18インチ)にBBSホイールを組み合わせ専用装備されます。

RZ“High performance”のコクピット
RZ“High performance”のコクピット

運転席に乗り込んでから終始、好印象だらけだったRZ“High performance”。乗り心地に対し少々構えて走らせるも、肩すかしをくらうほど常識的かつ実用的レベル。無駄な音や振動も気にならず、そもそもこのモデル専用のスポーツシートからしてRZやRSのものよりサイドサポートが効いてる上に硬さも絶妙。それは座面もしかりで、クラッチを操作する際、左太ももが最もシート(座面前端)との接触しながらの動作が大きく、そのときのサポート度合いが実に優しくて頼もしくて、こんな部位に好感を抱いたのは初めて。

ステアリングの操舵フィールは重めで、アクセルやブレーキの操作フィールも同調しているように感じます。クラッチだけそれらよりやや軽めに感じたのですが、万人が操作し易い配慮なのかもしれません。そしてちょっと耳打ちしたくなるほど便利で快適だったのが“6iMT”。任意でインテリジェントモードを選べばMT操作でギグシャクしないように、特に気を遣うシフトダウン時の回転数合わせを自動で行ってくれるのです。その効果は「上手いっ、早い、簡単!」。もちろん選ばなければアナログ(人力)でヒール&トウができます。

RZの走り
GRヤリスのルーフはカーボン、ドア、ボンネット、リヤゲートはアルミ

そんな優秀なトランスミッションをアップ&ダウンしながら走らせたRZ“High performance”は、もっとアクセルを踏み込みコーナリングも加速性能も味わいたいモデルでした。4つのタイヤをしっかりと路面に接地させながら、あまりにもスムーズなコーナリングをしてくれるものだから、コーナーの出口で早めに、しかもたくさんアクセルを踏み込んでみたくなるほど。そしてタイヤやボディに荷重がかかるほどボディ全体の剛性感の感度も増すようでした。

少し重めのステアリングを切ったり戻したり、少し切り増したり戻したり、アクセルを踏んだり緩めたり、少し踏み足したり少し緩めたりした際の足下の感触も分かりやすいから操縦が楽しくなります。路面に吸い付くような接地感は、ワインディングから信号停止のようなブレーキングの様子もしっとりと伝えてくれました。

●G16E 3気筒ツインターボエンジンが絶妙な楽しさ!

そんな走りの原動力となるエンジンがまた良いのです。実はここまで我慢してきましたが、一番インパクトが大きかったのがエンジンでした。“G16E”型といいます。とにかくキレイに加速しトルクの厚みも十分。このエンジン性能を味わいたくて確かめたくて、つい余計にアクセルを踏んでしまったほどの1.6Lの3気筒ツインターボなのです。それなのに性能不足もターボラグも感じず、性能も“音質”も3気筒ツインターボであることを忘れるほど。この動力がドライバーのつま先から起源しているかと思うと、ちょっと感動します。

このエンジンにあまり興味がなければココはスキップしてください。

RZ“High performance”の走り
RZ“High performance”の走り

GRヤリスのために新開発されたこのエンジンは、「レーシングエンジンをつくるつもりで設計生産しているんです」と開発者の方はおっしゃいます。レーシングエンジンをつくるつもりとは、ピストンの重量選別=気筒ごとのピストンの重さがそろうように選別。そしてさすがに全行程手組み…というわけにはいかなかったけれど、従来に比べ6倍くらいの工程を一人がスルーで担当しているのだそうです。多能工化(一人が複数の工程をできるように技能を高め、多くのことを一人が責任を持って担当できるようにすること)によって品質とパフォーマンスの両立を計っているのです。

ターボへのこだわりも一つ一つの部品へのこだわりも大きいのです。コンプレッサーの羽の樹脂材。そしてその羽が回るためにクリアランスは必要なのだけど、広すぎると効率は低下するため、必要最小限のクリアランスを確保したのだそうです。おかげで低速からターボラグなく健やかにキレにまわってくれます。

3気筒エンジンは軽量化とレスポンスの良さが特徴です。3気筒はスムーズにガスが流れて排出され、スムーズに次の空気が吸えるのでラグがなくなるのです。

RZはRZ“High performance”と同じエンジンに6iMT、スポーツ4WDが組み合わされ、サスペンションチューニングは専用で行われ、ダンロップのSP SPORT MAXX050(18インチ)タイヤやスポーツシートはRSと共通となります。タイヤやLSDの有無などを除けば、GRヤリスの走行性能のスタンダードがこのモデルで得られるのです。ステアリングの操舵フィールはRZ“High performance”よりやや軽く、これはLSD未装着による“違い”だと開発者の方が教えてくれました。ステアリングフィールが少々異なるだけながら、RZは軽快でややソフトなライド感です。

●気軽に楽しめるFF 1.5LのRS

RSのエンジン
1.5L 3気筒エンジンのM15Aエンジン

RSには1.5L 3気筒エンジンが搭載されており、RZにくらべれば3気筒独特の音が聞こえやすく、RZはサウンドコントロールがされているそうです。特定の音の周波数の抽出がポイントらしく、3気筒のバランスを取るためにギヤの公差をギリギリにつめ、振動や音がキレイに整うように造られているのだそうです。エンジン性能の精度も高く製造され、音や振動など細かなところにもこだわった設計と製造が行われているG16E型エンジン。「”4A-G”も素晴らしいけれど、これからはG16Eかも…」とワクワクが止まりません。GRヤリスにとってこのエンジンの存在は大きいのです。

RSのコクピット
RSのコクピット

RSは「普通のヤリス」にも搭載されている1.5L 3気筒エンジン(M15A)に10速スポーツシーケンシャルシフトマチック+パドルシフト付CVTを組み合わせたFFモデル。2ドアのスポーティなスタイルやスポーツシートに包まれながら、気軽にGRヤリスを楽しめます。ハイパフォーマンスモデルの快適性も申し分ないのですが、RSはより軽快で優しい。ドライブモードセレクト(ノーマル/パワー/エコ)によって加速レスポンスやエンジンブレーキの積極活用などを選ぶことができますが、この雰囲気で6MTがあったら普通に楽しいだろうな、と想像してしまいました。

●GRヤリスは日常にも馴染む高性能なホットモデル

RZ“High performance”のドライビングシート
RZ“High performance”のドライビングシート
GRヤリスのリヤシート
GRヤリスのリヤシート

パッケージングは後席スペースも含め十分実用的だけれど、ややリヤ席のヘッドクリアランスは少なめ。また助手席のシートのハイト調整がなく、そもそもちょっと高め(ラリーのコ・ドライバーのように前方視界を確保するため)に感じたのですが、体型など個人によって印象は異なるかもしれません。

GRヤリスの主な諸元
GRヤリスの主な諸元比較

とはいえGRヤリスは想像以上に日常に馴染み、高精度で高性能な想像以上にホットなモデルなのは間違いありません。そしてG16Eエンジンに恋しそう。個人的にはぜひ「このGRヤリスってG16Eエンジン積んでるモデル?(このハチロクは4AG積んでるモデル?的な)」みたいに、このエンジンが親しまれたらいいなぁと。クルマの動力の電動化が進むなか(トヨタもしかり)、こんなエモーショナルなガソリン車の登場は尊いです。ゆえに次を待たないほうが良い気がしています。

(飯田 裕子)

◼SPECIFICATIONS

RZ“High performance”の主なスペック
RZ“High performance”の主なスペック

車名:GRヤリス RZ“ハイパフォーマンス”
全長×全幅×全高:3995×1805×1455mm
ホイールベース:2560mm
トレッド(前/後):1535/1565mm
車両重量:1280kg
最小回転半径:5.3m
乗車定員:4名
エンジン型式:G16E-GTS 直列3気筒DOHCインタークーラーターボ
総排気量:1618cc
ボア×ストローク:87.5×89.7mm
最高出力:200kW(272ps)/6500rpm
最大トルク:370Nm(37.7kgm)/3000〜4600rpm
燃費 WLTCモード:13.6km/L
駆動方式:4輪駆動
トランスミッション:6速MT(iMT)
サスペンション形式(前/後):ストラット/ダブルウイッシュボーン
ブレーキ(前/後とも):ベンチレーテッドディスク
タイヤ(前/後とも): 225/40ZR18(ミシュラン パイロットスポーツ4S)
車両本体価格:4,560,000円(税込)