王座奪還への強い意志が伝わってくるトヨタ陣営。第二、第三の矢も期待十分/2021年体制発表まとめ

 2019年シーズン、スーパーGT GT500クラスでは大嶋和也/山下健太組が、スーパーフォーミュラ(SF)ではニック・キャシディがチャンピオンとなり、国内2大カテゴリーを制したトヨタ陣営。しかし、2020年シーズンはそれをホンダ陣営にやられてしまった。

 王座奪還へ向けて放たれた第一の矢は、山下のGT500復帰だ。昨年はWECのLMP2に参戦するために渡欧。ル・マン24時間レースでの力強い走りは、世界に山下健太の名を轟かせた。だが、新型コロナウイルスの猛威が止まらないいま、日本と欧州を行き来するリスクを避け、国内レースに専念することになった。

 その所属先には昨季のラスト2戦、キャシディの代役としてステアリングを握った37号車との噂も聞こえていたが、14号車のTGR TEAM ENEOS ROOKIEに決定。2年前とは車両もチーム名もカラーリングも異なるが、2019年のチャンピオンコンビが復活した。エンジニアについての正式発表はまだされていないが、2019年のタイトル獲得に大きく貢献した阿部和也エンジニアの続投が濃厚で、タイトルを狙える強力なパッケージになるのは間違いない。

 また、トムスの2台にもドライバーの変更があった。昨年、最後の最後でチャンピオンに届かなかった37号車のキーパーには、サッシャ・フェネストラズが加入。いま、トヨタ陣営でもっとも勢いがある平川亮の相棒に選ばれた。フェネストラズは昨年36号車のauでGT500にデビューすると、ルーキーとは思えぬ速さとクレバーな走りを披露し、『キャシディの後継者』との呼び声も高い。

 決勝ではスタートを担当することが多かったのもキャシディと似ており、平川との相性も良さそうだ。そして36号車で関口雄飛と組むのは、昨年のSFで2勝を挙げた坪井翔。GT500では14号車をドライブしてタイトル争いを繰り広げていた。トムスの2台もまた、チャンピオン候補の最有力候補と言える。

 一方で、19号車のWedsSport BANDOH、38号車のZENT CERUMO、39号車DENSO KOBELCO SARDのドライバーラインアップに変更はない。変化は新たな力を生み出す反面、リスクもつきまとう。トヨタ陣営は6台中3台が継続、3台を改変し、安定したパフォーマンスと新たな化学反応を狙った2本立てでタイトル奪還を目指す。

2019年のスーパーGT GT500クラスでチャンピオンを獲得したWAKO'S 4CR LC500の大嶋和也と山下健太
2019年のスーパーGT GT500クラスでチャンピオンを獲得したWAKO’S 4CR LC500の大嶋和也と山下健太
1月19日に富士スピードウェイで行われたテストでピットアウトするGRスープラ勢
1月19日に富士スピードウェイで行われたテストでピットアウトするGRスープラ勢

■GT300のGRスープラ増加はトヨタの本気度の現れ

 SFについては本誌でも予想していたように、宮田莉朋と阪口晴南がフル参戦することになった。宮田はキャシディ、阪口は石浦宏明という元王者からシートを譲り受けたかたちとなり、プレッシャーもあるだろう。しかし、ふたりとも代役参戦の経験があり、すでに速さは見せている。トヨタの第二の矢として、期待は充分。

 ほかのラインアップは変わらないが、今年は山下が国内レースに専念できることも、トヨタ陣営にとってのプラス材料。今後のカレンダーの見直しも予想され、WECとの兼ね合いで全戦参戦できるかはまだ不透明だが、中嶋一貴と小林可夢偉も引き続き参戦する。トヨタ陣営内のエントリーリストを見ただけでも、その対決が楽しみだ。

 そして最後に、GT300で驚きの発表があった。昨年、開幕戦富士でデビューウインを飾り、最終戦ではポール・トゥ・ウインも果たしたJAF-GT規定のGRスープラGTが3台に増えることになった。GRスープラGTは、空力およびカウル開発でトヨタカスタマイジング&ディベロップメント、シャシー開発ではaprの技術協力を受け、埼玉トヨペットGreen Braveが独自に開発。そのGreen Braveに、他チームから供給のオファーがあったという。

 当初、他チームに供給する計画はなかったそうだが、「ものづくりの重要性や技術力を磨いていく必要性をお互いに共有できた」と、供給を快諾。60号車のLM corsaはダンロップ、244号車のMax Racingはヨコハマ、そして52号車のGreen Braveはブリヂストンを装着。新たなタイヤ戦争の火種となるのは必至で、それがさらにGT300のレベルを引き上げることになりそうだ。

 244号車のメンテナンスは、つちやエンジニアリングが請負っており、そこでの“ものづくり対決”にも注目。ライバルでありながら切磋琢磨していく。技術競争が激しかった、かつてのGT300の姿が戻ってくる。

 86マザーシャシーを除き、GT300でトヨタ/レクサスがチャンピオンとなったのは、2009年のIS350まで遡る。一日の長があるプリウスPHV、RC F GT3に加え、第三の矢となるGRスープラGTの増大。トヨタ陣営は、GT300も本気でタイトルを獲りにくる。

2020年スーパーGT第4戦もてぎ 埼玉トヨペットGB GR Supra GTとTOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT
2020年スーパーGT第4戦もてぎ 埼玉トヨペットGB GR Supra GTとTOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT
2020年のGT300で鮮烈なスピードを残した埼玉トヨペットGB GR Supra GT
2020年のGT300で鮮烈なスピードを残した埼玉トヨペットGB GR Supra GT