内燃機でリッター約33kmを記録した幻のポロ。1980年代に生まれた「超経済的フォルクスワーゲン」とは?

内燃機でリッター約33kmを記録した幻のポロ。1980年代に生まれた「超経済的フォルクスワーゲン」とは?

2気筒ディーゼル+スーパーチャージャー

フォルクワーゲン ゴルフの弟分、ポロの2代目にはかつて「超経済的車」を目指した実験車両が作られたことがある。「Oko-Polo(頭のOにウムラウト=エコ-ポロ)」と名付けられたプロトタイプは、世界中で自動車の低燃費化・低排出ガス化が急ピッチで進められていた1980年代に登場した。

エコ-ポロの課せられた使命は、「燃料3リットルで100km走れる」こと。換算すると、1リットルあたり約33.3km走行できる燃費性能が目標だった。心臓部には、排気量858ccの2気筒ディーゼルにスーパーチャージャーを搭載したユニットを搭載。いまでは当たり前になったアイドリングストップ機構も採用していた。ボディサイドにレインボーストライプのカラーリングを施しているのが、唯一といっていい外観上の特徴だ。

1988年にわずか50〜75台ほどが作られた「エコ-ポロ」プロトタイプ。写真は、アメリカのVWコレクター、ロス・カップルズ氏所蔵の1台。

ピエヒの公約に繋がる系譜

1988年に生産されたプロトタイプの数は、およそ50〜75台と言われている。独自動車専門誌『アウト モトール・ウント・シュポルト』のテストでは、ウォルフスブルクから仏マルセイユ間を平均60km/hで走行したところ、1.7L/100km(約58.8km/L)を記録したという。

エコ-ポロの実験自体は成功したものの、生産コストが嵩むことから量産化は断念。一般ユーザーへ市販することはついぞ叶わなかった。しかし、この時に得た知見やヒント、技術的ノウハウは、1999年にルポ 3L TDIとして昇華することになる。エコ-ポロの誕生から10年あまり。フェルディナント・ピエヒの「21世紀までに3リッターカーを市販する」という公約が見事に果たされた瞬間であった。

1988年製フォルクスワーゲン エコ-ポロのメータークラスター

アメリカ屈指のフォルクスワーゲンコレクターが所有

ピエヒ肝煎りの3リッターカーへと繋がる基盤を作ったエコ-ポロの、稀少な1台がアメリカにある。ロス・カップルズという、無類のフォルクスワーゲン愛好家が所蔵している。10歳で黄色のビートルにひと目惚れしたカップルズは、16歳のときに初めての愛車としてジェッタを購入。以来、フォルクスワーゲン車をコレクションし続けてきた。カップルズは次のように語っている。

「およそ70台を所有していますが、そのほとんどは走行距離も少なく、オリジナルの状態をキープしています」 カップルズのフォルクスワーゲンコレクションはすでに2棟のガレージを埋め尽くしているそうだ。

1988年製VW エコ-ポロのリヤビュー

エコ-ポロの外観は、ストライプのアクセント以外は量販モデルとほとんど見分けが付かない。「でも、このクルマは私のコレクションの中でも最もレアな1台なのです」とカップルズは言う。なにしろ、ウォルフスブルクのフォルクスワーゲン・ミュージアムにさえエコ-ポロの展示はないのだから。