徹底的なエネルギーマネージメント研究でERS回生量を改善。ホンダF1、2021年は新型PU投入で大きく飛躍へ

 2020年シーズンのホンダにとってのベストレースはどれかと思い浮かべても、すぐに思いつかない。オーストリアやドイツ、ブラジルでパワーユニットとしても攻めに攻めて勝った2019年とは違い、2020年はそれだけパワーユニット単体として力を発揮するのが難しいシーズンだったと言える。

 もちろんそれはメルセデスAMGにとっても同じことで、彼らとてパワーユニットの貢献だけに目を向けてベストと言えるようなレースはなかった。むしろカスタマーも含めてMGU-KやMGU-Hのトラブルに苦しめられたことを思えば、ホンダがモンツァとムジェロの2度のトラブルのみに留まり、それもフェイルセーフが働いてコンポーネントを失わずに済んで年間3基で戦い抜くことができたのは特筆すべきことで、それ自体が“ベストなこと”と言っても良い。

 どのチームもマシンパッケージ全体の総合力を高め、その結果としてレッドブル・ホンダはメルセデスAMGと大きな差を付けられた。パワーユニットとしてはハードウェアの開発が凍結されたうえに、第8戦イタリアGPからはTD37の影響でICEモードもピンポイントで攻める余地が減り、パワーユニットマニュファクチャラーとしてやれることが極端に制限されることになってしまった。

アレクサンダー・アルボン(レッドブル・ホンダ)
2020年F1第8戦イタリアGP アレクサンダー・アルボン(レッドブル・ホンダ)

 そのなかでもホンダは、他社に対して後れを取っていたERSの回生量をカバーすべく徹底的なエネルギーマネジメントの研究を行ったという。シーズン中盤までは特に決勝でのディプロイメント切れの時間が長く「ストレートで失っている」と言われたものだが、MGU-Hからの発電とEブーストのバランス、限られたエネルギーの使いどころなどを「そんなことまでやってるの? というレベルまで」突き詰めた。最終戦アブダビGPでは2本の長いバックストレートでディプロイメントを細かく使い分けて抜ける・抜かれない速さを身につけていた。

 レッドブルの車体の改善もさることながら、パワーユニット側のその進歩があったからこそダウンフォースをつけないセッティング、つまりストレートで稼ぐセットアップでも充分なラップタイムとバトル競争力が稼げるようになった。そういう意味で、最終戦のポール・トゥ・ウインはまさしく車体とパワーユニットの両面での進歩を示すベストレースだったと言って良いだろう。

 ただしメルセデスAMGが2019年より0.7秒遅いタイムでしか走れなかったということも忘れてはならない。レッドブル自身も0.1秒遅くなっていたが、メルセデスAMGはタイヤをうまく使いこなせなかったことで回頭性に苦しみ速さを発揮できなかった。アブダビGPの結果だけですべてを解釈することはできないということだ。

2020年F1第17戦アブダビGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)が優勝
2020年F1第17戦アブダビGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)が優勝
2020年F1第17戦アブダビGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)が優勝
2020年F1第17戦アブダビGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)が優勝

 ホンダにとって最後の1年となる2021年は、大きく設計刷新した新型パワーユニットが1年前倒しで投入される。

 関係者によれば2020年型RA620Hもピークパワーだけで言えばメルセデスAMGに限りなく近いところまで来ていたといい、この燃焼コンセプトにはまだ伸びしろが残されていたというが、新型パワーユニットではそれ以上に大きな飛躍を遂げるということだ。

 課題はやはり現状で負けていたERSとりわけMGU-Hからの回生量とエネルギーマネジメントをいかに向上させられるか。とはいえ、「負けている」とはっきり公言できるということはターゲットとすべきライバルの性能も見えており、その解決策もある程度見えているということなのだろう。

 大きくデザインを刷新するとなれば信頼性の不安も出てくるが、これまでの経験を経てホンダのベンチテスト技術は格段に進歩している。それに、1基余分に投入したとしても1戦最後尾スタートを強いられるだけなのだから、1基や2基壊してでも最高のパワーを追求して(そのコンポーネント1基あたりで走る)残り6〜7戦でより高いパフォーマンスを発揮するくらいの徹底的な攻めの姿勢を見せてもらいたいくらいだ。ホンダファンが最後に見たいのは、そんなホンダらしいチャレンジの仕方なのではないだろうか。

バルテリ・ボッタス(メルセデス)&マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)
2020年F1第12戦ポルトガルGP バルテリ・ボッタス(メルセデス)&マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)

 ホンダの最終年にF1デビューすることが決まった角田裕毅は、自身が語っている通りシーズン開幕当初から攻めの姿勢を貫くだろう。ミスも犯すだろうが、そのミスによってマシンと自身の限界を学び、より速いペースで学習し成長していく。そのなかで目覚ましい走りを見せることもあれば、結果が残せないこともあるだろう。ピエール・ガスリーも速いうえに成熟期を迎えているドライバーだけに、簡単に勝てるとは思わない方が良い。

 しかしヘルムート・マルコが期待し評価するのは、結果よりも瞬間瞬間の輝きだ。シーズン前半はそうしたダイヤの原石であることを示す輝きを時折見せれば良い。そしてシーズン後半に学習の成果を結果へとしっかり結びつければ、彼のF1ドライバーとしての評価は固まる。

 ホンダが2021年限りで撤退することとは無関係に、ひとりのドライバーとして評価され求められるようになればいい。それが1年目の角田に求められることであり、ホンダに対しての最大級の恩返しになる。そしてそれが我々ファンにとっても最大の喜びになる。

 2021年のホンダと角田裕毅には、我々に感動と興奮と勇気を与えてくれるような戦いぶりを期待したい。

2020年F1アブダビテスト 角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)
2020年F1アブダビテスト 角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)
角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)
2020年F1アブダビテスト 角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)
角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)
2020年F1アブダビテスト 角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)
角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)
2020年F1アブダビテスト 角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)