全日本ロード:劇的な結末でST1000初代王者に輝いた高橋裕紀。2021年はEWCで世界へ/チャンピオン特集

 全日本ロードレース選手権で2020年に新設されたST1000クラスに参戦した高橋裕紀(日本郵便 HondaDream TP)はホンダCBR1000RR-Rを駆り初代チャンピオンに輝いた。

 ST1000クラスはJ-GP2クラスにかわり、2020年からスタートした1000ccの市販スーパースポーツで競われる新しいクラスだ。ST1000初年度で、新型マシンを使用するという新しい環境で2020年シーズンを戦った高橋は「ホンダが本気で作り替えたCBR1000RR-Rの初年度で、テストが少ないなか、マシンのポテンシャルはあるけどデータがない状況ですごく不安ななかスタートしました」とポール・トゥ・ウインを飾った第1戦SUGOを以下のように振り返った。

2020年全日本ロード第1戦SUGO ST1000:高橋裕紀(日本郵便 HondaDream TP)
2020年全日本ロード第1戦SUGO ST1000:高橋裕紀(日本郵便 HondaDream TP)

「個人的にはモリワキから移籍してすべてが新しいなか、雨に助けられたのも大きかったですが開幕戦で雨のなかポールポジションを獲ることができました。高い気温の決勝レースでは、レース周回数をダンロップのワンメイクで走るのは初めてのなかうまく走り切ることができて、転倒が多いなか完走できて優勝できたことは大きかったですね」

2020年全日本ロード第1戦SUGO ST1000:レースを引っ張る高橋裕紀(日本郵便 HondaDream TP)
2020年全日本ロード第1戦SUGO ST1000:レースを引っ張る高橋裕紀(日本郵便 HondaDream TP)
2020年全日本ロード第1戦SUGO ST1000:ポール・トゥ・ウインを飾った高橋裕紀(日本郵便 HondaDream TP)
2020年全日本ロード第1戦SUGO ST1000:ポール・トゥ・ウインを飾った高橋裕紀(日本郵便 HondaDream TP)

 続く第2戦岡山は台風接近により中止となったが、第3戦オートポリスでもポール・トゥ・ウインを飾った高橋。彼にとって絶好調な滑り出しに見えたが、高橋はライバルたちを冷静に分析していた。

「金曜日の走行はなくなりましたが、1週前に事前テストを行っていて、その時のデータやチーム力、経験のアドバンテージが開幕2連勝に繋がりました。しかし、他チームもデータが増えていて、特にホンダ勢はCBRのポテンシャルを引き上げてきて、混戦になってくるのかなと思っていました」

2020年全日本ロード第1戦SUGO ST1000:高橋裕紀(日本郵便 HondaDream TP)
2020年全日本ロード第1戦SUGO ST1000:高橋裕紀(日本郵便 HondaDream TP)

「序盤と終盤の熾烈な2位争いにより離せて、結果的には独走優勝になりましたが、自分たちのチームも含めて新しいCBRのポテンシャルをさらに引き上げていかないといけないのかなと思った開幕2連戦でした。タイム差では余裕に見えますが、内容的には他の選手も速くなってきていたので、このままではいけないなと考えていました」

 第4戦もてぎのウエットコンディションとなった予選では、2番手に1.8秒差と大差をつけてポールポジションを獲得しており「雨のポールポジションは僕たちが使っているオーリンズのサスペンションとウエットコンディションのマッチングが良いというところと、僕自身も雨が得意なのでそこが結果に繋がったと思います」という。

 そして、決勝で優勝すれば最終戦を残してチャンピオン獲得する条件だったが、0.082秒差で2位と今季初めて後塵を拝する形となってしまった。

2020年全日本ロード第4戦もてぎ ST1000 フィニッシュシーン:名越哲平と高橋裕紀
2020年全日本ロード第4戦もてぎ ST1000 フィニッシュシーン:名越哲平と高橋裕紀

「もてぎは優勝を目指して戦った結果、レース内容も名越哲平君がすごく良くて着いていくのがいっぱいいっぱいのなか、最後に意地で一度勝負を仕掛けましたが、クロスラインをかけられました」

「土曜日に雨が降ったことにより日曜日の路面コンディションが違い、金曜日までの良かったフィーリングを出し切れなかったので、セットアップを詰め切れなかった反省点は残っています。あの日やれることはやった結果だったので受け入れるしかないのかなといったところでしたね」

 好成績を残しランキングトップを維持した高橋は、2番手に25ポイント差をつけていた。最終戦鈴鹿でポイント獲得圏内の20位以内でフィニッシュすれば王者を獲得する条件となっていたが、最終戦直前のトレーニングで左手首の舟状骨と肋骨3個所ほどにヒビが入る怪我を負っていた。

 予選では1列目を確保したが、3番手となり「全戦ポールポジションを獲得できなくて悔しかったですね」という。また、決勝ではレース人生で初のジャンプスタートを犯してしまい、ライドスルーペナルティを科せられたことで最後尾30位からの追い上げとなってしまった。

2020年全日本ロード最終戦鈴鹿 ST1000:最後尾から追い上げる高橋裕紀(日本郵便 HondaDream TP)
2020年全日本ロード最終戦鈴鹿 ST1000:最後尾から追い上げる高橋裕紀(日本郵便 HondaDream TP)

「怪我の影響がなかったとは言い切れません。握りこむことが難しくて、テーピングとかプロテクターをして大きいサイズのグローブをはめていました。また、スタートはいつものように、クラッチのレバー位置をギリギリに合わせていたのが間違いでした」

「スタートについてからシグナル点灯までが長くて、握り幅は同じだけどクラッチが温まってきました。少しずつ動き始めてしまったバイクをリヤブレーキで必死に抑えていたのですが、動いてしまって、(ジャンプスタートを)とられたなとスタートした瞬間によぎっていたので、ゼッケンが掲示された瞬間にピットに入りました」

2020年全日本ロード最終戦鈴鹿 ST1000:レースを振り返る高橋裕紀(日本郵便 HondaDream TP)
2020年全日本ロード最終戦鈴鹿 ST1000:レースを振り返る高橋裕紀(日本郵便 HondaDream TP)

「レース前に(ポイント圏内で)完走すればチャンピオン決定というのは頭に入っていたけど、実際にそのシチュエーションになるなんて思ってもみなかったので、とにかく追い上げられるところまで追い上げるという頭しかなかったですね」

「ポイント獲得圏内の20位まで追い上げれば良いと考えつつも、どん底に落ちた気分でしたね。(序盤は)ホームストレートに来ても誰も前に見えない状態でした。そして20位になってもチームのサインボードエリアの雰囲気が変わらず、19位になってもチームから『行け行け』と指示があり、どこまで追い上げれば良いんだろうと思っていました」

2020年全日本ロード最終戦鈴鹿 ST1000:初代王者に輝いた高橋裕紀(日本郵便 HondaDream TP)
2020年全日本ロード最終戦鈴鹿 ST1000:初代王者に輝いた高橋裕紀(日本郵便 HondaDream TP)

 最終的には16位で無事ポイントを獲得して王者となったわけだが、「レースが終わってから、S字でHRCの方が旗を持っていて“自分ですか?”と確認してそこでチャンピオンを確信しました(笑)」と述べた。

「日本郵便さんや今まで応援してくれた方などの応援があるなかのまさかのミスだったので、無事にチャンピオンを獲れてホッとしているとしか言いようがないですね」

2020年全日本ロード最終戦鈴鹿 ST1000:初代王者に輝いた高橋裕紀(日本郵便 HondaDream TP)
2020年全日本ロード最終戦鈴鹿 ST1000:初代王者に輝いた高橋裕紀(日本郵便 HondaDream TP)

 2020年シーズンにおいては「開幕2連勝することができて、全戦優勝を目指していましたけど、後半2戦はいろいろなことがありバタバタしてしまって、最終的になんとかチャンピオンを獲得できました」と述べた。

「レースだけでなくて、コロナ禍により普段の生活からすべてが一変してしまった年のなかで、無事に開幕することができました。そのなかで僕たちもレースできることも感謝であったり、レースは素晴らしいんだなということを再実感しました」

「そういう年に新型CBR1000RR-Rのデビューイヤーとともに新設されたST1000の初代チャンピオンに輝くことができて、このような機会はなかなかないのでチャンピオンを獲れたことに感謝しています」

2020年全日本ロード最終戦鈴鹿 ST1000:高橋裕紀(日本郵便 HondaDream TP)
2020年全日本ロード最終戦鈴鹿 ST1000:高橋裕紀(日本郵便 HondaDream TP)

 高橋は2021年にFIM世界耐久選手権(EWC)を戦うF.C.C. TSR Honda France(F.C.C. TSRホンダ・フランス)に加入してジョシュ・フック、マイク・ディ・メリオとともに戦う。また、全日本ロードにもエントリーする予定だという。ホンダCBR1000RR-Rを駆りスプリントと耐久の両レースで争うこととなる高橋。日本国内、そして世界を舞台に走る彼の二冠達成に期待したい。