【今週の気になるニュース】アマゾンとのストリーミング契約は新しい日常へ向けた対策か。F1の市場開拓も

 イギリスの経済紙『フィナンシャル・タイムズ』(FT)によれば、F1がアメリカに本拠を構える多国籍テクノロジー企業の『アマゾン』とレースのライブ放送を行うためのストリーミング契約を巡って、積極的な協議を行っているという(12月24日付けautosport webニュース『F1、レースのストリーミング配信に向けてアマゾンと交渉。CEOは「非常に重要なパートナー候補」と前向き』)。

 この報道に対して、12月27日の時点でF1側からも、アマゾン側がらも反応は示されていないが、このニュースでも報じているように、近年アマゾンはスポーツのライブストリーミング放映権のラインアップを拡大していることは間違いない。オンライン書店として事業を開始したアマゾンだが、2007年には電子書籍リーダー『アマゾン Kindle』を発表するなど、デジタルコンテンツ配信サービスにも力を入れている。もし交渉がまとまれば、『アマゾン・プライム』のなかで配信される可能性が高い。

 では、F1側にはどんなメリットがあるのか。12月24日付けautosport webニュースは、最後にこう結んでいる。

『しかしながら、アマゾンや他のネットコンテンツ配信事業者とのパートナーシップは、F1がオンラインストリーミングへ移行し、F1の総収益の約3分の1を占める従来のテレビ放送から脱却することを示してはいない。F1はイギリスで『Sky』と年間2億5000万ドル(約258億9000万円)相当の有利な契約を結んでおり、フランス、ドイツ、イタリア、スペインを含む多数の国でテレビ放映権契約の交渉や更新を行っている』

 つまり、F1が従来のテレビ放送から脱却することを考えていないということは、フジテレビがテレビ放送を行っている日本ではアマゾンによるコンテンツ配信は行われない可能性が高い。すでに12月25日には、フジテレビはCS放送の『フジテレビNEXT ライブ・プレミアム』で金曜のフリー走行から日曜の決勝までの全セッションを完全生中継することを発表。その2週間前の12月11日には、スポーツ専門動画配信サービスの『DAZN(ダゾーン)』が、2021年シーズンも引き続き全戦のライブ配信を実施することを発表していた。

 では、F1がアマゾンとの交渉を進めているとしたら、その狙いはどこにあるのか。考えられることはふたつある。ひとつはアメリカでの市場開拓だ。アメリカでのテレビ中継は長年『NBC』が行っていたが、アメリカはケーブルテレビが発達しているため、2018年からは地上波が『ABC』に変わると同時に、ウォルト・ディズニー・カンパニー傘下のスポーツ専門チャンネルである『ESPN』が新たに中継に加わっていた。

 ただし、アメリカには約300局のケーブルテレビ局が存在し、しかもそれを見るには複雑な契約をかわす必要があるため、なかなかF1をテレビで見るという行為が根付いていないというのが実情だ。

2019年F1第19戦アメリカGP
F1アメリカGPが開催されているサーキット・オブ・ジ・アメリカズ

 その点、『アマゾン・プライム』なら、インターネットがつながるエリアであれば複雑な契約はいらず、アンテナやケーブルなどの設置工事もいらない。これなら、これまでなかなかテレビでF1を見る機会がなかったアメリカ人にも、インターネットで手軽にF1を見るチャンスを与えられ、新たな市場開拓につながる。

 もうひとつのメリットは、コロナ対策だ。F1の2020年シーズンは閉幕したばかりだが、新型コロナウイルスの感染は収まるところを知らない。さらに12月に入ってからは、新型コロナの変異種がイギリスを中心に急速に拡大している。ここに来て、3カ月後から開幕する2021年のF1も2020年同様、なんらかの制限が施されるのではないかという見方が強くなっている。無観客やグランプリ数を減少して選手権が行われるようなことになれば、F1は再び減収減益を余儀なくされる。そのために新たな収入を確保しておかなければならない。

 アマゾンという世界的企業がF1に参入することは歓迎だが、いまは新型コロナウイルスの1日も早い収束を願うばかりだ。