MotoGP:ヤマハ、前半戦の課題はトップスピード/2020年シーズン振り返り(2)

 MotoGP第11戦アラゴンGPのプレスカンファレンスで開かれたエンジニアたちのテックトーク。ヤマハ、ドゥカティ、KTMの3チームが前半戦をどのように評価していたか改めて振り返ってみよう。

■鷲見崇宏:ヤマハM1プロジェクトリーダー
「正直に言って心底満足しているわけではないが、全般的なパフォーマンスについては喜んでいる。2019年の我々はフリー走行と予選では速かったが、決勝では強さを出せず、その点を2020年に改善したいと思っていた。いまはトップスピードが改善すべき主要なトピックだ。昨年に比べて改善はしたが、残念ながらライバルチームも同様に改善を行なっているので、状況は我々の予想とはそれほど変わらなかった。しかし、ヤマハには3人の優勝経験者がおり、バレンティーノ(・ロッシ)も彼の感触とスピードを取り戻している。4人のヤマハライダーたちは優勝をかけて争う準備ができている。そういうわけでパッケージ全体について、正しい方向に進んでいると確信しているが、目標点に到達するにはまだ多くの作業をしなければならない」

「強みを強化することはもちろんだが、開発も行わなければならない。残念ながら現在コーナースピードとハンドリングが優れているのはヤマハだけではない。我々のライバルチームもスズキを筆頭にその領域で大きな改善をしている。我々はその点に関してさらなる努力をしなければならない。また来年に向けて、エンジンが凍結されるとはいえ、トップスピードを改善することも諦めてはいない。エンジンはひとつの要素で、改善のために他のやり方を見つけることができるだろう」

■ダビデ・バラナ:ドゥカティ・コルセ テクニカルディレクター
「現時点で我々は、通常通り昨年の半ばから始めた開発に非常に満足している。エンジンの馬力については良い一歩が踏み出せたし、エンジンパワーはすでに順調だ。我々はまたエンジンからさらになにかを引き出せるだろう。それが良い点だ。我々はパワーだけでなく、操作性にも取り組んでいる。我々はトルクの形成管理を見直したが、これはさらなる前進となった。ストレートでのパフォーマンスのみならず、コーナー出口のパフォーマンスにも関係するからだ」

「シャシーについては、大きな変更を導入した。バレンシアとヘレスでレース後テスト、およびカタールとセパンでのテストで我々は新しいスイングアームも試し、その領域にも注力している。また空力セットアップも進化させた。大きな変更ではないが、今ではバイクはより安定したものになった。全体として、我々はバイクのすべての領域に取り組んだと言える。タイヤに大きな変更があることは確かで、今年のパフォーマンスに大きく影響していると思うが、セットアップとバイクを新しい仕様に適応させるのは時として長い時間がかかるプロセスだ」

「今年は全般的に非常に変わりやすい年だ。マルク・マルケスが欠場しているほか、レースの中心となる多くのレーサーを目にしてきた。ドゥカティではそれほど変動はないと思う。他のマニュファクチャラーやライダーたちには多くのアップダウンがあるがね。新しいタイヤには素晴らしいポテンシャルがあるが、以前のものに比べてかなり異なる挙動をする。だから一部のバイクとライダーは新仕様のタイヤによく適応している。それ以外のバイクやライダーは適応するのに時間がかかるか、まだ新仕様に対応しようとしているところだろう。今年の他の変更点は、チャンピオンシップにある。ドルナは現在の状況下で見事にチャンピオンシップを立て直した。そうしたわけで我々は異なるタイミングとコンディションでレースをしている。それが安定に欠けることがあるもうひとつの理由だ」

アンドレア・ドヴィツィオーゾ(ドゥカティ・チーム)
アンドレア・ドヴィツィオーゾ(ドゥカティ・チーム)

■セバスチャン・リッセ:KTMテクニカルコーディネーター
「我々に取って素晴らしい年だ。我々はバイクと、ライダー達の準備ができていることを信じていた。だが正直に言ってかなりの間、完全なポテンシャルを見ることができなかった。冬期テストは困難な状況だった。ミゲール(・オリベイラ)が怪我をしたので、身体が仕上がっていて経験のあるライダーはポル(・エスパルガロ)しかいなかったのだ。彼は多くのテストプログラムをやらねばならなかったよ。今振り返ってみれば、このバイクに適応するには長い時間がかかったと見ている」

「習慣を身につけ、古いバイクで代わりの策を講じるには長い時間がかかると思う。もしそれが必要ない場合、完全な利益を得るのに時間がかかる。すべてのライダーが基本的には、彼ら自身や他のすべての人々の期待を上回る優れたパフォーマンスを見せてくれた。そのようにして彼らはお互いにプッシュし、パフォーマンスが生み出されたのだ。素晴らしいことだ」

「どの領域に関しても作業を止めることは決してない。我々はすべてにおいてスペシャリストであり、多くの物を築き上げてきた。そして誰もがレギュレーションの範囲内で可能なことなら何でも全力で取り組んでいる。確かに我々は今興味深い位置にいる。なぜなら我々は技術的優遇措置を失うからだ。つまり我々は2021年シーズンに別の挑戦に直面する。そして冬の間にさらにプッシュすることになる。技術的ルールが変更されるだけではない。アプローチも変わっている。テストチームとともに仕事をし、ファクトリーとレースチームがコースで最高のバイクを生み出すのだ。以前は、多くのテストをレースライダーが行うことができたが、将来的にはできない。だからレースの前にテストをしたいと考えたら、この冬にやるしかない。それが現時点で我々が重点を置いている部分だ」

ポル・エスパルガロ(レッドブルKTMファクトリー・レーシング)
ポル・エスパルガロ(レッドブルKTMファクトリー・レーシング)