新型レクサスLS&ISはどこまで進化したか? 最新ジャパニーズセダンを渡辺慎太郎が一気乗り!

新型レクサスLS&ISはどこまで進化したか? 最新ジャパニーズセダンを渡辺慎太郎が一気乗り!

Lexus LS/ES/IS

レクサス LS/ES/IS

 

セダンという自動車メーカーの“良心”

その生業が“メーカー”である以上、「売れないものは作らない」は経営戦略上では至極真っ当な判断で、一般大衆向けのお値打ち量産消耗品であればそれでもいいと思うのだけれど、ブランドビジネスを展開しているメーカーにとっては必ずしも得策とは言えない。

「売れるか売れないか」だけで見たら、世界の自動車マーケットでは依然としてSUVが「売れる」、セダンは「売れない」状況が続いている。それでもアウディがA4やA6やA8を、BMWが3や5や7を、メルセデスがCやEやSを世の中へ躊躇なく解き放っているのは、個車ごとの販売台数よりも、ラインナップを俯瞰して見たときのブランドイメージに重きを置いているからである。

レクサス LS500 “EXECUTIVE”のサイドビュー

売れようが売れまいが、自動車メーカーにとってセダンとは良心のような存在であり、その時々のメーカーの技術力やデザイン言語などの発信源として絶対に外せない。彼らはきっとそんな風に考えている。

後輪駆動のGSが幕引きに至ってしまったのは個人的に残念に思うけれど、レクサスはいまISとESとLSの3本のセダンの布陣で世界に勝負を挑んでいる。この3台を注視してフォローしていれば、レクサスの近未来の方向性が浮かび上がってくるかもしれない。

レクサス IS300 “Fスポーツ Mode Black”のフロント

ISを「フルチェン」と言わない矜持

2020年に大がかりな改良を受けたのは以前にここでも紹介した通り。内容的にはフルモデルチェンジに匹敵するものの、それでも「フルモデルチェンジ」とあえて謳わなかったのはエンジニアのプライドがそうさせたのかもしれない。プラットフォームやパワートレインは基本的に刷新されておらず、理想を追求して妥協を許さない作り手側からすれば、核心部分を刷新できなかったことには悔いが残っただろう。それでも限られた範囲で最上限の改新を成し遂げた。

ハブボルトの採用は英断だったと思う。ばね下の軽量化はもちろん、靴紐をしっかり結んだシューズのように、足元をしっかりさせるだけでも走りに一体感が出てくることをあらためて認識させられた。FRのコンパクトセダンとしてハンドリングはそのクルマの魅力のひとつにならなければならず、その追求には余念がない。

トレッド(と全幅)が拡大しているのは、今回から19インチのタイヤとホイールを装着できるようにしたため。タイヤを大きくしてもばね下重量が従来型からほとんど変わりないのは、前述のハブボルトの採用やサスペンションアームのアルミ化などの効果が大きい。

レクサス IS300 “Fスポーツ Mode Black”のフロント走行イメージ

これぞ模範的マイナーチェンジ

もちろん、タイヤ径の拡大は見た目の印象アップだけを狙ったものではない。タイヤの接地面を有効に使って操縦性を高めることが目的で、実際前後のロードホールディング性は従来型よりも明確に向上している。ステアリング操作とクルマの動きの間には無駄なノイズがまったくなく、思い通りにクルマを操る感覚が楽しい。

こうした走りの部分の進化には、ボディ剛性の向上も効いている。プラットフォームは同じでも、溶接(スポット溶接の打点数や場所の改善)や締結(構造用接着剤の積極利用)の工夫により、重量増を最小限にしつつしっかりとしたボディを構築した。ひとつひとつは小さく細かい改良でも、それが積み上げられると大きな効果として現れるお手本のようなマイナーチェンジである。

レクサス IS300 “Fスポーツ Mode Black”のリヤビュー

一般道で明らかになった課題

前回の試乗はサーキットで、今回は初めて一般道を走ることができた。リアルワールドに出ると、サーキットでは分からなかったことが表面化してくるもので、「ん?」と思ったのはシフトプログラムとブレーキである。富士スピードウェイの近くにある峠まで走ったときのこと。上りでは左右の切り返しの連続でも操舵応答遅れはなく、法定速度でも鼻歌交じりに運転を楽しめた。

ところが、山頂付近でUターンして、下り始めてスロットルペダルから足を離すとシフトダウンによるエンジンブレーキの効きが不十分で、みるみるうちに増速してしまった。欧州車ではこういう場面で巧みにシフトダウン制御が入り、ブレーキペダルを踏む回数を減らしてくれるのだけれど、ISはパドルを使って意図的にシフトダウンさせないといけなかった。

ブレーキだけで速度をどうにかしようとすると、ペダルだけでは細かいコントロールをやりづらくちょっと難儀した。「長い下り坂」というのはサーキットでなかなかお目にかかれない状況だが、一般道では決して珍しくない。「パドルがあるんだからそれを使えばいい」のかもしれないけれど、パドルを使う気を起こさせないほど優秀なシフトプログラムもこの世には存在するわけで、レクサスにはその領域をぜひ目指して欲しいと思った。

レクサスES300h “F SPORT”のフロント走行イメージ

ESは「ちょうどいい」

2018年に日本へ導入されたESは、北米では主力となっているモデルである。その時点では世界で初めてデジタルアウターミラーを採用するなどニュース性もあったのに、以来めっきりメディアへの露出もなくなり、存在感の薄いモデルとなってしまった。ただ、自分で乗り回すにはLSは大きすぎるし、ISのポテンシャルを発揮できるほどスポーティな運転をしょっちゅうするわけでもない自分なんかは、ESのサイズ感(これでもちょっと大きいけれど)や乗り味がちょうどいいと感じてしまう。

ESは2020年の年次改良で、安全装備の拡充やマルチメディアシステムのアップデート、リチウムイオン電池の採用などを行っている。ニッケル水素からリチウムイオン電池への変換で燃費性能を向上させたそうだが、これなんかはどうして最初からリチウムイオン電池にしなかったのかはなはだ疑問ではある。

レクサスES300h “F SPORT”のコクピット

“スポーティ”という呪縛からの解放

一方で、リリースには明記されていなかったものの、乗り心地が従来型よりも少し改善されたようだった。レクサスの商品展開におけるESというクルマのポジションを考えると、個人的にはもっともっと静かで乗り心地のいい、最上の快適性を持つクルマにしてもいいのではないかと考える。

最近はミニバンでもSUVでもなんでもかんでも“スポーティ”にする傾向があるけれど、世の中にはゆったり穏やかに運転することを望んでいる人だって少なくないはずで、快適性をもっと追求した改良を施していけば、ESはそういう人々に支持される1台になるのではないだろうか。

レクサス LS500 “EXECUTIVE”のフロント走行イメージ

強豪揃いのフラッグシップ

最新型のLSについてはIS同様、すでにここでも紹介したけれど、今回あらためて一般道で試乗した。静粛性と乗り心地という、初代LS(=初代セルシオ)が世界を震撼させた性能にさらに磨きをかけたそうで、確かにその部分については従来型よりも向上していると思うけれど、まだまだこんなもんじゃ自分はもちろん世間も納得しないと思っている。

LSはセンチュリーを除けば、トヨタ/レクサスが世界に誇るフラッグシップセダンであり、ライバルにはメルセデス SクラスやBMW 7シリーズやアウディ A8やキャデラック CT6やマセラティ クアトロポルテなどの強者が顔を揃えている。ひと昔前ならLSは欧州勢と比べると価格面でアドバンテージがあったものの、いまではグレードによってはメルセデス Sクラスよりも高価になってしまった。

レクサス LS500 “EXECUTIVE”のコクピット

LSに我々が求めること

では性能面でもメルセデス Sクラスを超えているかといえば、生産技術など部分的にはそういうところもあるにせよ、総合的にはまったく追い付いていない。特に、本来であるならば世界のトップレベルにあるべき肝心の静粛性や乗り心地が、改善されたとはいえSクラスには及んでいない。

ここで言う「Sクラス」とはすでに旧型となってしまったW222のことであり、敵はすでに最新型のW223をお披露目している。コロナ禍で残念ながらW223にはまだ試乗できていないけれど、これまでの経験からいって、Sクラスが従来型よりも性能面で劣化するとは考えにくく、そうなると最新型のLSでちょっとだけ詰めたSクラスとの車間距離は、さらに開いてしまう可能性がある。

レクサス LS500 “EXECUTIVE”のリヤ走行イメージ

初代LSが世界を席巻した当時、ライバルメーカーに焦りが見えたことを、自分がLSを作ったわけでもないのに誇らしく思った。あの時に感じた“優越感”をもう1度味わわせて欲しいのである。

REPORT/渡辺慎太郎(Shintaro WATANABE)

PHOTO/北畠主税(Chikara KITABATAKE)

【SPECIFICATION】

レクサス ES300h “F SPORT”

ボディサイズ:全長4975×全幅1865×全高1445mm

ホイールベース:2870mm

車両重量:1710kg

エンジン:直列4気筒DOHC+ハイブリッドシステム

総排気量:2487cc

最高出力:131kW(178ps)/5700rpm

最大トルク:221Nm/3600〜5200rpm

モーター:交流同期電動機

最高出力:88kW(120ps)

最大トルク:202Nm(20.6kgm)

バッテリー:リチウムイオン

トランスミッション:電気式無段変速機

駆動方式:FWD

サスペンション形式:前マクファーソンストラット 後ダブルウィッシュボーン

ブレーキ:前ベンチレーテッドディスク 後ディスク

タイヤ:前後235/40R19

車両本体価格:648万9000円(テスト車:777万2700円)

レクサス IS300 “Fスポーツ Mode Black”

ボディサイズ:全長4710 全幅1840 全高1435mm

ホイールベース:2800mm

トレッド:前1580 後1600mm

車両重量:1640kg

エンジン:直列4気筒DOHCターボ

総排気量:1998cc

最高出力:180kW(245ps)/5200〜5800rpm

最大トルク:350Nm/1650〜4400rpm

トランスミッション:8速AT

駆動方式:RWD

サスペンション形式:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク

ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク

タイヤサイズ:前235/40R19 後265/35R19

車両本体価格:585万円(テスト車:632万4100円)

レクサス LS500 “EXECUTIVE”

ボディサイズ:全長5235 全幅1900 全高1450mm

ホイールベース:3125mm

トレッド:前1630 後1635mm

車両重量:2230kg

エンジン:V型6気筒DOHCターボ

総排気量:3444cc

最高出力:310kW(422ps)/6000rpm

最大トルク:600Nm/1600〜4800rpm

トランスミッション:10速AT

駆動方式:RWD

サスペンション形式:前後マルチリンク

ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク

タイヤ:前後245/45R20

車両本体価格:1539万円(テスト車:1588万5000円)

【問い合わせ】

レクサス インフォメーションデスク

TEL 0800-500-5577