名門シュニッツァー・モータースポーツが存亡の危機。正社員全員に解雇通知

 12月4日、BMWモータースポーツはプレスリリースを発行し、長年ワークス活動を支えてきたシュニッツァー・モータースポーツ、ベルギーのRBM(レーシング・バート・マンペイ)との契約を終了したと発表していた。そんななか、契約解除となったシュニッツァーが、BMWとの契約終了に加え、新型コロナウイルス禍のなかでの資金繰りが困難となり、57年もの間世界の第一線で活躍したチームのファクトリーを閉鎖する方向で動いていること、そして18名の正社員全員に解雇通知を通達したことが分かった。

 2019年に“チャーリー”ことカール・ラムから、甥のヘルベルト・シュニッツァーJr(創業者のヘルベルト・シュニッツァーSrの長男)に引き継がれていたシュニッツァー・モータースポーツ。その2019年にはインターコンチネンタルGTチャレンジ(IGTC)へ参戦、鈴鹿10時間ではWTCC以来となる日本遠征を果たしポールポジションを獲得。2020年のニュルブルクリンク24時間レースでも総合3位となるなど、名門シュニッツァーの名と強さを継承していた。しかし、シュニッツァーは数年前から複数の投資家との話し合いを重ねていたものの、契約までには結び付かなかったという。

 そんななか、世界中に猛威を振い続ける新型コロナウイルスの感染拡大により、ドイツの自動車メーカーも大打撃を受け、BMWも例外ではなく、モータースポーツ活動の縮小を余儀なくされ、名門2チームの契約が解除されることになった。シュニッツァーでは、ワークス契約終了後も独自でBMWを走らせレース活動を継続しようと模索していたが、時を悪くして投資やスポンサードを予定していた企業も打撃を受け、やむを得ない決断に至ったようだ。ペイドライバーを迎えてのレース活動へのスイッチも考慮に入れていたものの、ドライバーの持ち込み資金だけではファクトリーの維持や従業員の給与の支払いはまかないきれないという。

 シュニッツァーJrとコンタクトを取ったところ「自動車メーカーとして、会社をコロナ禍の経済不況から守らなければならないBMWの状況は理解できる。BMWとの長いワークス活動には感謝してもし切れない」と語った。

 しかし一方で、「父や叔父たちが築いた60年近くに渡るモータースポーツ活動を終えなければならないかもしれないと思うと、やり切れない」と悔しさを滲ませる。

 18名の社員やその家族の生活、就職活動期間を考慮し、第1グループが3月末まで、そして第2グループは6月末まで契約が継続されるが、コロナ禍とあり、すべての社員がすぐに新たな職に就けるかどうかは厳しい状況にあるかもしれない。

 シュニッツァーでは、数年前まではモータースポーツのファクトリーの向かいにBMWとMINIの正規ディーラーを経営していたものの、一族から相続希望者がおらず、全事業を売却しているとあり、それ以降はモータースポーツ活動一本で活動をしていた。それだけにBMWとの契約終了とコロナ禍の経済危機が相まって、資金の調達が困難となってしまったようだ。また、シュニッツァーと同様にワークス契約が終了となったDTMドイツツーリングカー選手権)に参戦していたRBMは、ベルギー国内に3店舗のBMWとMINIの正規ディーラーを経営しており、モータースポーツ活動は休止期間を設けたとしても継続する意向だという。

 シュニッツァーJrは「以前シュニッツァーではグループ5時代にトヨタ・セリカLBターボの開発やレース活動をしていたこともある。今後投資家が見つかれば、他のブランドで再出発をする可能性も十分にある」としており、いったん従業員を全員解雇し、経営を立て直す方向へと向かっているようだ。

 チーム存続には、いまや早急に投資家を見つける以外に道は残されていない。BMWモータースポーツのDNAを築き上げたと言っても過言ではない名門シュニッツァーの火が消えないことを祈るばかりだ。

名門シュニッツァー・モータースポーツの代表を務めるヘルベルト・シュニッツァー・ジュニア
名門シュニッツァー・モータースポーツの代表を務めるヘルベルト・シュニッツァー・ジュニア
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2012年、ブルーノ・シュペングラーを擁しDTMチャンピオンを獲得したBMWチーム・シュニッツァー
2012年、ブルーノ・シュペングラーを擁しDTMチャンピオンを獲得したBMWチーム・シュニッツァー
ワークショップにはシュニッツァーの歴代の名車たちとともに、トロフィーが並ぶ
シュニッツァー・モータースポーツのワークショップにはシュニッツァーの歴代の名車たちとともに、トロフィーが並ぶ