【SF最終戦富士特別連載(3)】大湯とフェネストラズ、ふたりの実力派ルーキーの“富士”にかける想い

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で当初の予定から4ヵ月遅れとなる8月末に開幕した2020年シーズンの全日本スーパーフォーミュラ選手権も、12月19日〜20日に富士スピードウェイで開催される第7戦で最終戦を迎える。

 6戦で6人のウイナーが誕生し、最終戦も『誰が勝つのかわからない』大接戦が予想されるなか、今年はルーキーたちが大きな活躍を見せ、優勝争いにも絡む注目点になっている。全日本F3で昨年チャンピオンに輝き、今季スーパーフォーミュラにステップアップしたサッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)。そして同じくルーキーで、前戦鈴鹿で初優勝を獲得した大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING)のふたりのドライバーに、スーパーフォーミュラの難しさ、そして最終戦の舞台となる富士スピードウェイを戦う上でのポイントなどの話を聞いた。

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■「2021年のことを考えて、今年できるだけ多くのことを学ぶ」とフェネストラズ

2020年スーパーフォーミュラ第5&6戦鈴鹿
ルーキーながら予選の速さが目立つサッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)

──スーパーフォーミュラで使用されているマシン、ダラーラSF19にはどれくらいの時間で慣れましたか?
サッシャ・フェネストラズ(以下、フェネストラズ):どれぐらいで慣れたかっていうのは、難しいね。当然、僕はまだ学んでいる途中だし。毎レース、毎周、それぞれのコースでこのクルマのことを学び続けているんだ。そもそもまともに乗りこなすのに、ある程度の時間が必要だった。最初の2〜3戦ぐらいはかかったんじゃないかな。その上で、今でも毎回学んでいるんだ。

──去年同じダラーラのF3マシンに乗っていますが、そのクルマと比べて、どういう所が難しいですか?
フェネストラズ:パワーやダウンフォースの面で大きな違いがあるからね。F3もいいクルマだったよ。でも、SFはそれよりうんとパワーがあって、ダウンフォースも大きくて、F1のクルマと似たような感じだと思う。コーナーのスピードに関してね。直線スピードもF3と比べてかなりコンペティティブだ。これまでドライブしたなかで最高のクルマだよ。

──クルマのセットアップを正しく仕上げるのは難しいですか?
フェネストラズ:実際、すごく難しいよ。僕自身、まだセットアップに関しても学んでいる最中だけど、変更できる箇所が多いから、とても難しいんだ。その点はF3と少し違っているよね。でも、そういうセットアップの違いを学ぶのもとても興味深いし、いいことだと思っている。

──スーパーフォーミュラでは非常にタフなシーズンを過ごしているが、モチベーションを高く保つために心がけていることは?
フェネストラズ:そうだね、最初のレースはとても良かったんだけど、その後の4レースはとても大変だった。僕自身は来年結果を出すということに集中していて、終盤戦もまだ学ぶことが多いってことが分かっている。2021年に備えて、結果を出すためにね。だから、今年は最初からクルマのことを始め、いろいろなことを学ぶつもりでいた。でも、残念なことにここまで1、2回しかまともにレースができていないんだ(6戦中4戦リタイア)。その他のレースは全部すぐに終わってしまっているからね。だから、すごく大変だったけど、それもまたレース。こういうことも起きるものだよ。

──精神的にイライラしたり、欲求不満になったりしたことは?
フェネストラズ:もちろん少しはあるよ。毎レース、多くのことを準備しているから。スーパーフォーミュラのレース前には準備しておくことがたくさんあるんだ。たくさん仕事もしなければならないし、集中力もうんと高めていかなければならない。それがスタートしてすぐにレースを終えることになってしまったら、やっぱりすごく欲求不満を感じる。時間をかけて準備してきた分ね。レースだから仕方がない部分もあるけど。ただ、すでにそれが4回も起こっているから。自分にコントロールできない部分で起こっているっていうのもあるしね。(第6戦)鈴鹿での小林(可夢偉)選手との接触に関しては、少し違っていたかも知れないけど、それでもサイド・バイ・サイドのなかで、僕にはどうしようもなかった。自分のコントロールできない部分で起こったことによって、レースを終えてしまうっていうのは、よりフラストレーションが溜まるよね。

──そういう場合は心も折れると思いますし、どうやってモチベーションを高く保っているのかなと思うんですが?
フェネストラズ:それは答えるのが難しいね(苦笑)。僕らはたしかにスピードがあった。少なくともシーズンの序盤はね。シーズンが進むにつれて、それが少しずつ難しくはなっているけど。チームも含めて、僕も(山下)健太もシーズンの最初より苦労している。予選でもね。だから、どうやってモチベーションを高く保つかっていう質問に答えるのは簡単じゃないんだけど、とにかく来年以降のことを考えて、今年、できるだけ多くのことを学ぼうっていうことを考えているんだ。クルマだけじゃなく、その他のすべてのことをね。その努力を積むことで2021年に素晴らしいシーズンが送れればいいなと思っている。

それに、チーム全体をもっと前進させていきたいということも、僕にとってはモチベーションになっている。KONDO RACINGにとっても辛いレースが続いているから、みんなで頑張ってKONDO RACINGを最高なチームのひとつにしたいと思っているんだ。

──日本で気になっているドライバーは誰ですか?
フェネストラズ:まずはチームメイトの健太だよね。彼はものすごく速いドライバーだから。スーパーGTで37号車(KeePer TOM’S GRスープラ)をドライブした時にも、同じチームということで間近で見ていたけど(フェネストラズは36号車au TOM’S GRスープラ)、彼のスピードはとても印象的だった。また、平川亮選手や山本尚貴選手のことも、スーパーフォーミュラのトップドライバーなので気にして見ている。彼らから学ぶことは多いからね。それに健太の経験からもできる限り学ぼうと思っているよ。

──他にも今年のルーキーやこれまで戦ってきたカテゴリーで気になるドライバーはいますか?
フェネストラズ:それも難しい質問だね。フルシーズン出場したわけじゃないけど、宮田(莉朋)選手かな。彼の走りは印象的だったけど、僕は去年のF3で戦って、彼がいかに速いドライバーかということをすでに知っていたから驚きはなかった。スポット参戦したスーパーフォーミュラでも、予選ですごくいい走りを見せていたよね。

それに大湯選手。彼は前回のレースで勝っているし、とても速いドライバーだ。時々、アグレッシブ過ぎる部分もあるような気はするけどね。岡山のスタートとか、前回の鈴鹿の1レース目みたいに。それでも彼は速いドライバーだと思うし、僕も気にはしているよ。

──今季の最終戦は富士スピードウェイになりますが、富士ではどこのコーナーが好きですか。また、どの部分が難しいですか?
フェネストラズ:僕が好きなのはコカ・コーラコーナーからトヨペット100Rコーナーにかけて。僕は高速コーナーが好きだし、あの2つのコーナーの組み合わせは最高だと思う。逆に一番難しいのは最終セクター。すごく難しいし、簡単にタイムロスをする。

──最終セクターでは容易にオーバードライブしてしまうからですか?
フェネストラズ:そう。プッシュし過ぎたり、オーバードライブしてしまったりということが容易に起こってしまう。それがミスにつながっていくんだ。

──以前、トム・クリステンセンと話したときに、今の富士では前半セクターと後半セクターで気持ちを切り替えなければならないと言っていましたが、どう思いますか?
フェネストラズ:まさにその通り。セクター1と2は超高速なんだけど、セクター3に入ったらプッシュし過ぎないようにしなければならない。だから、トムが言うように、セクター3に入る時には、気持ちを切り替えなくちゃならないんだ。低速コーナーが続いて、プッシュし過ぎては行けないからね。だから、アドバンコーナー(ヘアピン)か、あるいはダンロップコーナーでスイッチを切り替えるんだよ。

──あなたが言うように、今季4レースで結果を残せずに終わっていますが、次の富士は最終戦になります。その富士大会を戦う上で最も重要なポイントはどのような部分でしょう?
フェネストラズ:それも答えるのが難しいね。まずは予選で好位置につけることが重要じゃないかと思う。それから、スタート直後に他のドライバーがぶつかってこないこと(笑)。富士は長いストレートがあるから、決勝レース中に多くのオーバーテイクが生まれると思う。それもどうなるか興味深い部分だよね。とにかく、僕にとって好結果を残すためのポイントはいい予選、いいスタート、あとはトラブルに見舞われないこと、その3つだね。

──最終戦が行われるのは12月中旬ということで、これほど寒い時期のレースは初めてになります。前回からはタイヤウォーマーも導入されましたが、富士はタイヤに厳しいサーキットでもあります。そうした部分で、気をつけなければならないことはありますか?
フェネストラズ:そうだね。年末が押し迫ってからのレースが初めてっていうことだけど、まずは雪が降らなきゃいいなと思っている(笑)。いずれにしても、タイヤ温度を保つのがすごく難しいレースになるだろうね。鈴鹿で多くのドライバーがセーフティーカー導入中に経験しているけど、タイヤ温度がすぐに低下してしまうし、内圧を保つのが難しいんだ。

できることなら、スタート前のフォーメーションラップを1周にしてほしいなと思っている。2周してしまうと、内圧がものすごく下がってしまって、どのドライバーもそこに問題を感じているはずだからだ。富士はストレートも長いからペースカーでの走行ではタイヤが冷えやすい。ただ、そこを何とかやり遂げるのが僕らの仕事でもあるから、よく見ていてほしいね。タイヤウォーマーがあること自体はとても興味深いよ。特に予選ではアウトラップからすぐにプッシュに入るし、そこは気に入っているんだ。

2020年スーパーフォーミュラ第5&6戦鈴鹿
サッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)

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「どのレースも常に先輩方の走りを見て研究しています」大湯

──今年から乗るダラーラSF19の難しいポイントはどのような部分でしたか?
大湯都史樹(以下、大湯):昨年まで戦っていた全日本F3ではNAエンジンでしたけど、スーパーフォーミュラではターボエンジンに変わりました。これまでレースでターボ付きのクルマに乗るという経験がなかったこともあり、ハイパワーで、なおかつ繊細なアクセルワークが求められたところに最初は難しさを感じました。

シャシーの面では、F1に匹敵するような異次元な領域でコーナリングしていきますし、ダウンフォースレベルもすごく高いので驚きました。今でもそこの難しさというのはあると感じています。

2020年スーパーフォーミュラ第5&6戦鈴鹿
第6戦鈴鹿で初優勝を飾った大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING)

──今年スーパーフォーミュラデビューを果たしたわけですが、クルマに慣れるのにどのくらいの時間で慣れましたか?
大湯:今もまだ試行錯誤している最中ではありますが、ただ、クルマに慣れたという部分に関して言えば12月の鈴鹿のルーキーテストの後、3月末の富士合同テストではクルマに慣れていけたかなと感じていました。

ただ、慣れていても他の部分で難しいポイントはあるので、もっと手足のように操れなきゃいけないなとずっと思いながら走っています。

──前回、第6戦鈴鹿でスーパーフォーミュラ初優勝を遂げましたが、優勝してからなにか気持ちの変化はありましたか?
大湯:それまでに自分が納得できるようなレースがずっとできてなくて、自分のパフォーマンスをしっかり出せていないことが何より苦しくて。第6戦の優勝の喜びは今もありますけど、それ以上にまず、自分のパフォーマンスを出しきれたと思えるレースができたというところが嬉しかったですね。きちんと次へのステップを踏めたなと思っています。

──スーパーフォーミュラにはさまざまなドライバーが参戦していますが、気になるドライバーはいますか?
大湯:やっぱり、サッシャ選手は昨年F3でも一緒に戦ってきたライバルなので、同じルーキーのサッシャ選手よりは自分のパフォーマンスを示したいな、とは思ってやってきました。去年のF3で彼はチャンピオンを獲って、僕は残念ながら年間ランキング4位という成績だったので、本当にそのときよりは自分の方がパフォーマンスを出せる、ということ証明したかったですね。そういった意味では第6戦で優勝できたのでよかったなと思います。でも、シーズンはまだ終わっていないので、富士でも結果を出して最終的にもっと上の順位で終われるように頑張りたいですね。

──ベテランドライバーたちにはどんなイメージを持っていますか?
大湯:どの方々も雲の上の存在でした。同じホンダの先輩の山本尚貴選手や野尻智紀選手は僕がSRS(鈴鹿サーキットレーシングスクール)で生徒だったときから講師として来られて、いろいろと教えて下さった先生でもあったので、そういう方たちと走れる喜びもありますが、その方たちと一緒にちゃんと走れるのかという不安も常にあります。

先輩方が走っているなかで、自分もいいレースができるように、毎戦どのレースも常に先輩方の走りを見て研究しています。自分とは何が違うのか、どういうことをしているかというのは常に見ています。

──将来的にどんなドライバーになりたいですか、F1ドライバーにたとえて教えてください。
大湯:ドライビングで尊敬しているのはロバート・クビサです。ちょっと間違えればコースアウトだったり、クラッシュしてしまうようなギリギリの戦いを常にしているドライバーだと思います。マシンのコントロールだったり、常にクリップの限界ギリギリのところを走っているので尊敬していますね。怪我とかブランクがあって昨年レギュラードライバーに復帰した際はうまくいっていなかったようですけど、BMWザウバーやルノーで走っていたときは本当にすごかったと、当時から思っていました。怪我がなければ、もっとすごいドライバーになっていんだろうと思いますね。

現役ドライバーのなかではキミ・ライコネン選手ですね。あの年齢(41歳)であの判断力、走りができ、速さという意味でももちろん申し分ないと思います。僕と同じ雪国育ちというところもあるのか(大湯選手は北海道出身)、コントロール技術もずば抜けていますし、いろいろなカテゴリーでも乗っていますよね。人間性としても好きで、すべての部分で尊敬していますね。

──大湯選手と同期でFIA-F4でも戦った角田裕毅選手についてお聞きします。先日(インタビュー3日前)のスーパーフォーミュラ第5戦鈴鹿の夜に行われたFIA-F2第12戦フィーチャーレースで優勝するなど、角田選手は今季のF2でランキング3位となりましたが、大湯選手は何か刺激を受けたりもしましたか?
大湯:もちろん彼のことは応援していますし、F1行きのチケットというか、それを見合うドライバーだということを証明したことは本当にすごいことですし、おめでとうという気持ちです。ただその一方で、カテゴリーは別ですけど、自分は鈴鹿の第5戦では結果が出せていないというところで凄くモヤモヤしていました。

彼の活躍を見て、自分もなんとか結果を出したいという気持ちがありました。ただ、今季は気張った結果、レースで接触してしまったレースもあったので、あまり気張りすぎても良くないかなとか、かといって落ち着きすぎるのも良くないのかなとか、いろいろと考えました。そういう意味で彼の存在は刺激になっていましたね。

──優勝したSF第6戦決勝後の会見で「寝る時間を惜しんで考えて臨んだ」という話をしていましたけど、初優勝後の夜は安眠できましたか?
大湯:
優勝した夜はみなさんからたくさんのお祝いのメッセージやお電話を頂きました。なにより優勝、ようやく自分のパフォーマンスを出せたというところで、アドレナリンがずっと出ていて、あまり眠れませんでしたね(笑)。

──最終戦の舞台は富士スピードウェイです。富士を攻略する上で、大事なことはなんですか?
大湯:
富士は何よりストレートが長いですし、そこで他のマシンとのポテンシャルの差が出ないようにセットアップを進めていかなければいけないです。あと、ストレートのスピードも大事ですがテクニカルなセクター3でもポテンシャルの高いマシンにしていくために、きちんとチームと一緒に考えてます。あとは、OTS(オーバーテイクシステム)の使い方もストレートに対してどこで使うのか。ホームストレートで使うのか300Rで使うのかとか、駆け引きの部分が肝になってくるのではないかと思っています。

──前例のない12月中旬の最終戦は気温も低いなかでのレースとなりそうですが、どういった点を気をつけますか?
大湯:
タイヤの面ではウォーマーがなかったら本当にどうなることやらという感じだったのですけど、ウォーマーがあるのでまだ大丈夫かなと思います。でも、第6戦もそうでしたけどレース中、セーフティカーが出てしまうとセーフティカーラン中にタイヤが一気に冷えてしまうので、セーフティカー中でもタイヤの温度管理をしっかりと行うことがポイントになると思います。あとは、寒くてタイムが出やすい大会になると思うので、去年とかのデータとか、セットアップのまま持ち込んでしまうと、コンディションに合わないという状況になってしまうので、そこら辺はチームと一緒に考えていきます。

2020年スーパーフォーミュラ第5&6戦鈴鹿
大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING)