グロージャン、奇跡の脱出劇を語る「子供を思った時、炎のなかに踏み出す勇気が出た」:F1バーレーンGP

 2020年F1第15戦バーレーンGPで炎上するマシンから自ら脱出し、世界中の人々を安堵させたロマン・グロージャンが、この恐ろしい事故について振り返った。

 ハースのグロージャンは、決勝1周目にターン3でコースオフし、バリアに激しく衝突した。マシンからは大きな炎が上がり、グロージャンの身が案じられたが、彼は激しく燃えるマシンから自ら抜け出し、駆け付けたメディカルドクター、メディカルカードライバー、マーシャルらの力を借りて、無事炎から逃れることができた。

 グロージャンは両手の甲にやけどを負ったものの、骨折など大きな怪我はなかった。バーレーン国防軍病院へ搬送され、入院していたグロージャンだが、12月2日午前に退院、しばらくはバーレーンでやけどの治療にあたるということだ。

 グロージャンは、フランスの放送局TF1のインタビューで、脱出の際のことを詳しく語っている。炎に包まれた瞬間、1976年ドイツGPのニュルブルクリンクでニキ・ラウダのマシンが炎上し、彼が一時は命が危ぶまれる状態になったことが、頭に浮かんだという。

2020年F1第15戦バーレーンGP決勝 ロマン・グロージャン(ハース)が大クラッシュ
2020年F1第15戦バーレーンGP決勝 ロマン・グロージャン(ハース)が大クラッシュ

「28秒よりもずっと長く感じた。3回抜け出そうとした。バイザー全体がオレンジに見えて、マシン左型から炎が上がるのを見た」とグロージャンは言う。

「いろいろなことを考えたよ。ニキ・ラウダのこともね。でも今、こんな風に終わるわけにはいかないと思った。F1での自分のストーリーをこんな風に締めくくるわけにはいかないとね」

「子供たちのために抜け出さなければならないと自分に言い聞かせた。炎のなかに手を伸ばした時、シャシーが燃えているのをはっきりと感じた。そこから抜け出すと、誰かが僕のスーツを引っ張ってくれるのを感じた。そうして自分が脱出できたことを知ったんだ」

 その誰かとはFIAのメディカルドクター、イアン・ロバーツである。彼は、メディカルカードライバーのアラン・ファン・デル・メルヴァや数人のマーシャルたちとともに、現場に一番に駆け付けた。そしてバリアの向こうからグロージャンを引っ張り出した。

ロマン・グロージャン(ハース)
2020年F1第15戦バーレーンGP 炎上したマシンから脱出し、救急車に乗るロマン・グロージャン(ハース)

「最終的には自分自身のことよりも、家族と友人のことを考えて怖かった。特に、僕のプライドとエネルギーの最も大きい源である子供たちのことだ」

「僕にとってこれまでの人生のなかで最大のクラッシュだった。マシンから火が出て、爆発し、バッテリーが燃えて、大きなエネルギーが加わった」

「これから心理的な面で乗り越えなければならないことがあると思う。あの時、死が近づいてくるのが見えた」

「今、生きていることへの喜びを感じ、物事が違う風に見えている感覚がある。同時にまたマシンに戻る必要があるとも感じる。できればアブダビで戻りたい。F1での僕のストーリーを違う形で締めくくりたいんだ」

「生まれ変わったようなものだ。あの日、炎のなかから脱出したという出来事は、僕の人生に永遠に刻み込まれる」

「“奇跡”という言葉が果たして存在するのか、その言葉を使ってもいいのかは分からない。でもいずれにしても、あの時僕は(死ぬ)運命ではなかったのだろう」

2020年F1第15戦バーレーンGP決勝 大クラッシュ後、救出されたロマン・グロージャン(ハース)
2020年F1第15戦バーレーンGP決勝 大クラッシュ後、救出されたロマン・グロージャン(ハース)