この時季だから生まれた至高のアタック勝負。タイトル争いの勢力図を反映した予選《第8戦GT300予選あと読み》

 その差、なんと1秒以上。11月28日、富士スピードウェイで開催されたスーパーGT第8戦富士の公式予選で、川合孝太がアタックした埼玉トヨペットGB GR Supra GTは、予選Q2でなんと1分34秒665というタイムを記録した。これまでの富士スピードウェイのGT300クラスのコースレコードは、2016年第2戦で、ARTA BMW M6 GT3を駆る小林崇志がマークした1分35秒707。なんと1秒以上更新したことになる。この時季ならではの至高のタイムアタック合戦を制しての、堂々のポールポジションとなった。

 2020年のスーパーGTは、新型コロナウイルスの影響により大幅にカレンダーが変更され、開幕は夏。そして今回の第8戦富士は、例年であればとっくにシーズンが終わっている季節。一般的に、寒い時期の方が空気の密度が変わり、パワーが上がる。タイヤをしっかり温めることができれば、驚くようなタイムが出やすくなる季節だ。

 そんななか開催された今回のスーパーGT第8戦富士の予選では、結果だけ見ればGT300クラスはブリヂストンとダンロップがトップ6に3台ずつを送り込む構図となった。ポールポジションは先述のとおり、「タイミングよくアタックができ、コースでのポジションどりも良かったので、ああいったタイムが出せたんだと思います」という川合がドライブした埼玉トヨペットGB GR Supra GTとなった。

「このポールポジション獲得で与えられる1ポイントで、チャンピオン争いをしている車両の順位が変わってくると思うので、その1点を獲得できたことは大きいと思います」と川合。またチームメイトの吉田も「素晴らしいタイヤを用意してくれたブリヂストンタイヤさんや、いろいろな形で応援してくれているファンのみなさんだったり関係者のみなさんにも感謝の気持ちしかないです」と喜んだ。

■コンマ4秒差に「めちゃくちゃ悔しい」

 一方で、「めちゃくちゃ悔しいですよ」というのは、2番手に終わったSUBARU BRZ R&D SPORTの山内英輝。「タイヤ選択の面で言えば、ここまでのタイムは出るとは思っていなかったので、正直驚いているところもあります。それにコンマ4秒差は詰められませんが、僕のスリップストリームをうしろで使っていた雰囲気もあったので、それが悔しいです。前も詰まっていたし、僕も使わせていただいてはいたんですが(笑)」

 とはいえ、やはりコンマ4秒差は悔しいと山内。最終戦でノーウエイト、異なるタイヤ、マシンでのガチンコ勝負でのアタック合戦だっただけに、その差はやはり大きく感じるだろう。

 一方、チームメイトの井口卓人は、レースに向けては「クルマは悪くないですが、良いとも言いきれない感じ」という。

「埼玉トヨペットGB GR Supra GTがロングランも速そうだったので、そこがどうかですね。僕たちは決勝に強いタイヤを履いた予選ですし、ロングランの実績もあります。路面が冷えすぎると熱がちゃんと入るかという不安もありますね」

 そして、ふたりが最も警戒するのが、ここ2戦泣かされているセーフティカー。「セーフティカーが入ろうものなら、また二輪交換などせざるを得なくなるし、そうすると後半キツくなります。なので、みんな(トラブルがあったら)ガードレールとガードレールの間にちゃんと止めて欲しいです(苦笑)」と井口は冗談交じりに語った。

■予想もつかない決勝。波乱は起きるのか……?

 SUBARU BRZ R&D SPORTも、そしてポールポジションを獲得した埼玉トヨペットGB GR Supra GTも、逆転王座を手に入れるためにはとにかく勝ちにいくしかないメンバーだ。また予選上位につけたマシンは、すべてそれにあたる。イコール、“今年速かったマシン(もしくは、速かったタイヤをつけていたマシン)”が順当に上位につけたということだ。これも毎年の最終戦の光景だが、非常に興味深い。

 レースについては、これまでにないほどタイヤ無交換作戦を採るマシンもいそうで、またGT3勢のなかにも軽量な部類のマシンは、片側二輪交換は“当たり前”にありそうだ。正直、レースの予想などできようはずもない。また、当然ながら無交換等の作戦を採る際には“無理をする”マシンもいる。井口が望むように、セーフティカーが出ずに終わるだろうか……?

 波乱に富んだ2020年もいよいよフィナーレ。希有な最速アタック合戦から一夜明け、富士スピードウェイではどんなドラマが展開されるだろうか。

2020年スーパーGT第8戦富士 SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝)
2020年スーパーGT第8戦富士 SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝)
2020年スーパーGT第8戦富士 埼玉トヨペットGB GR Supra GT(吉田広樹/川合孝汰)
2020年スーパーGT第8戦富士 埼玉トヨペットGB GR Supra GT(吉田広樹/川合孝汰)