GRスープラに完敗のニッサン、ホンダ両陣営「お通夜状態」からトヨタの牙城を崩せるか【第8戦富士GT500予選】

 自力優勝でのチャンピオン候補が6台という歴史的大接戦で迎えたスーパーGT最終戦富士のGT500クラスの予選。結果的にはGRスープラ勢がトップ4独占という、圧倒的な速さでチャンピオンに王手を掛けた状態になった。一方、ニッサン、ホンダの両陣営のタイトル候補たちは今回の予選はどのような手応えだったのか。予選Q2でGRスープラに敗れた3チームのドライバーたちに聞いた。

 GRスープラの上位4台独占には誰もが驚かされることになったが、予選5番手にチャンピオン候補ではない64号車Modulo NSX-GTが付けたのもまた、今回の予選のトピックのひとつだった。土曜午前の練習走行では11番手だった64号車、予選での大きな飛躍はどのように実現したのか。

「午前中の結果からも、チームのみんながびっくりしています。マシンのセッティングは変えましたが、ここまでよくなるほど変えたわけではないと思うので、グリップするようになってきた路面とタイヤがよくマッチしたのかなと思います。逆に朝はタイヤのグリップが全然よくなかった。気温とか路面温度ではなく、路面のコンディションが要因だと思います」と話すのは、予選Q2を担当して5番手を獲得した64号車の伊沢拓也。

「朝が調子悪かったので、大津(弘樹)選手がQ1を突破できたこともびっくりでしたし、自分のアタックもうまくいって、クルマも本当によくなっていたので、出せるものは出せたのかなと思います」(伊沢)と、満足の予選結果となった。64号車とダンロップのパッケージではこれまで鈴鹿が得意というイメージはあったが、富士はむしろ、苦手なサーキットのひとつという印象がある。

「僕らも富士が得意というイメージはなかったですし、本当にQ1を通れるとは思っていなかったです。ノーウエイトのこのタイミングでNSX陣営のなかで一番になれたのは、僕らとしてはハッピーですけど、他のホンダ勢はいろいろな意味で今日はお通夜状態だろうなと思います」と、ホンダ陣営を気遣う伊沢。

 日曜の決勝では、前のGRスープラ勢に挑む急先鋒の役割を担うことになるが、伊沢の見立ては冷静だ。

「前はスープラ勢ですがスープラはストレートが速いので、レースでも絶対的に優位だと思います。個人的には1年の締めくくりで、チームとしてもまだまだ宿題は多いので、来年につながるようなレースをしたいと思います」と、伊沢はマイペースを強調した。

2020年スーパーGT第8戦富士予選日
ホンダ陣営でトップとなる予選5番手を獲得したModulo NSX-GT

 その64号車の背後に続くのが、6番手23号車MOTUL AUTECH GT-R、7番手100号車RAYBRIG NSX-GTだ。ニッサン、ホンダを代表するチームであり、チャンピオン候補の資格を持つ2台だったが、無事に予選Q1を突破しながらもQ2ではGRスープラに完全に敗北してしまった。

 予選6番手の23号車でQ1を担当した松田次生が振り返る。

「Q1は絶対に通らなければいけない状況だったので、ちょっとセクター3で前に車両がいて気にはなってしまったんですけど、まあ、Q1突破できると聞いて、あれがQ2だったら怒っていますけど、Q1突破できたのでよかったかなと思います」と、まずはホッとした表情を見せる次生。

 午前の練習走行では、コカ・コーラコーナーでスピンを喫し、なんとかタイヤバリア手前でストップしてクラッシュを免れた。

「午前中の練習走行のときは、ちょっとマシンがオーバーステアが強くて、自分のなかではいけると思ったらグリップが何もなくなって回ってしまいました。ちょっと危なかったですね。スピンしながらも壁に当たらないでくれ! スローモーションに見えていましたね。とコントロールして何とか直前で止めました(苦笑)」

「もちろん、あのスピンがなければ練習走行の順位も良かったと思いますが、それでも今日は厳しかったですね。予選Q1はギリギリまで攻めたので、なんとかあの順位まで行けましたけど、現状を考えるとあのポジションまで行けるとは思っていませんでした。ロニー(クインタレッリ)選手も6番手でしたけど、これが今のクルマとドライバーの限界だと思います」と、GRスープラへの敗北を認める次生。

「決勝はトヨタ陣営の包囲網ができてしまったので(苦笑)厳しい面もありますが、今の実力なので仕方ないですね。ストレートがもう少し速ければもうちょっと戦えますけど、コーナーでの強みを活かしてなんとかしたい。レースは何が起きるかわかりませんので、最後まで頑張ります」と決勝に向けての抱負を語った。

2020年スーパーGT第8戦富士予選日
予選6番手を獲得したMOTUL AUTECH GT-R。予選Q1担当の松田次生もひとまず安堵

■ランキング4位で予選7番手のRAYBRIG山本尚貴「このまま黙って引き下がるわけにはいきません」

 GRスープラ勢、そして64号車に破れはしたものの、NSXのブリヂストン陣営ではトップの7番手でレースを迎えることになった100号車RAYBRIG。Q2を担当した山本尚貴が予選を振り返る。

「アタックは100パーセント、自分としてはミスはなかったですし、現状でのベストの走りはできたつもりなんですけど……7番手と言っても前との差が大きい7番なので、順番以上に悔しい思いがあります。選んだタイヤも予選、決勝を考えて平均点の高いタイヤを選んでいますので自信はあります。それにしても、トヨタ勢と差を開けられたというのは悔しいですね。予選でコンマ9秒差、ここまで離されるとは思いませんでした」と、驚きを隠せない山本。

 100号車としては走り出しからトップタイムをマークするなど、今シーズンで一番順調に土曜日のメニューをこなせたと言っても過言ではないはずなのに、GRスープラに大きく水をあけられる形になってしまった。

「今日は朝から持ち込みのセットアップがよかったと思いますし、ここに向けての準備は間違っていなかったと思います。ただ、相手が今日の途中から上回ってきて、最後に逆転されただけではなくて、その逆転されるステップがかなり大きかった。1分26秒前半のタイムを出せるクルマを作ってきたのであれば(100号車は1分27秒2)、それはもう完敗ですし、すごいのひと言です」と、素直にGRスープラ陣営を讃える山本。それでももちろん、決勝レースとチャンピオンを諦めたわけではない。

「予選のクルマが決勝でも本当にそのまま速いのかというと、そうでもないのかなとも思います。自分たちは予選ではちょっと追い込みが足りなかったのかなというのと、決勝に対しては逆に分があるのかなと思っています」

「7番手から勝ってのチャンピオンは楽ではないですし、トヨタ勢はストレートが速くて、自分たちは富士で戦いやすいクルマではないですけど、コーナリングのフィーリングは悪くない。GT300の処理の仕方とタイミングが合えば順位は上げていけるのかなと思います。上位がトヨタ勢で固められて楽ではないですけど、なんとしてでもその牙城を崩したい。このまま黙って引き下がるわけにはいきません」と山本。

 23号車、そして100号車ともにGRスープラに予選では力負けしてしまったが、当然、このまますんなりとタイトルを渡すつもりは毛頭ない。ニッサン、そしてホンダのエースたちはGRスープラ4台にどのように挑むのか、しっかりと目に焼き付けたい。

2020年スーパーGT第8戦富士予選日
タイトル候補のホンダ陣営で予選トップとなったRAYBRIGだが山本尚貴が7番手で悔しさを見せる