DTM代表ゲルハルト・ベルガーインタビュー「スーパーGTとの絆は今後も継続され、将来を見据える」

 11月6〜8日、ホッケンハイムで現行規定での最後のレースが行われたDTMドイツ・ツーリングカー選手権。そのレースウイークに先立ち、2021年からGT3規定を採用するほか、2023年の導入を目指し、完全電動のレーシングカーのデモカー『Eカー』をお披露目した。そんなホッケンハイムのレースウイークで、DTMを運営するITR e.V代表のゲルハルト・ベルガーに、急遽インタビューが実現した。クラス1規定こそドイツでは終焉を迎えてしまったが、2021年のDTMに向けて、そしてともに規定を作り上げた日本のスーパーGTについて聞いた。

* * *

──今回のGT3へのスイッチにより、残念ながらDTMではクラス1規定は終了することになりました。ともに規定を作ってきたスーパーGT関係者への思いを教えていただけますか?
ゲルハルト・ベルガー(以下GB):
いまいちどGTアソシエイション坂東正明代表や関係者、スーパーGTに関わるメーカーやチーム関係者、そしてファンの皆さんに心から感謝を申し上げたい。クラス1規定について話し合う場だけではなく、日本人の心からのおもてなしと心遣いがあって、これまでの関係を築いてこられたのだと思っている。

 2019年にホッケンハイム、富士で交流戦が開催できたことも、日独双方の信頼関係が築けたうえでの開催だったと思う。ただ皆さんもご存知のとおり、せっかく我々が長年協力しあって作り上げた世界最高峰ともいえる高水準のレギュレーションも、アウディが今季限りで突如DTMから撤退することを発表し、今までの努力が水の泡となってしまったし、来季以降に予定していたこともすべてあきらめざるを得なくなってしまった。坂東代表とともに、私個人としてもこの件に関しては心を痛め、大きな失望を味わった。

 日独で作り上げたクラス1規定は、F1に次ぐ世界最高峰のレギュレーションとマシンだということは自信をもっていたからね。だからドイツ側がこれ以上クラス1を続けられる可能性がなくなったいま、スーパーGTとホンダ、ニッサン、トヨタの3メーカーが、この先できるだけ長く世界最高峰のカテゴリーとして活躍してくれることを願い、そして応援している。

──クラス1規定を作ってきた“戦友”ともいえるGTA坂東代表に対しては。
GB:
モータースポーツの“スポーツ”の部分を非常に理解し、プロモーターという立場からも経営やマネージメント能力に優れた人物だと思う。また、技術的な面でもどのようにそれを“スポーツ”に活かすべきなのか、深い知識を持ち合わせている。私がITR代表に就任して、坂東代表と深く関わるようになったが、彼から学ぶことも数多くあった。

富士スピードウェイで開催されたスーパーGT×DTM特別交流戦。異なる歩みを続けて来た日独のシリーズに参戦するマシンが相まみえる歴史的レースとなった。
富士スピードウェイで開催されたスーパーGT×DTM特別交流戦。異なる歩みを続けて来た日独のシリーズに参戦するマシンが相まみえる歴史的レースとなった。

■せっかく築いた日独関係をこれで解消するつもりはない

──DTMでのクラス1規定が終了すると同時に、GTAとITRの関係も解消となるのか?
GB:
2019年の富士での交流戦まで、ともに奮闘したプロジェクトは良い方向へと向かっていたし、成果も出せていたと思う。坂東代表との関係はこれで終わりではないよ。今すぐというわけにはいかないけれど、今後違う形になったとしても、ともに歩める道を模索していくつもりでいる。私の前任である(ハンス・ベルナー)アウフレヒトから続いたクラス1プロジェクトでせっかく築いた日独の関係をこれで解消するつもりはない。

 我々の絆は、日独、そしてアジアとヨーロッパをモータースポーツで繋ぎ、さらに盛り上げる役割となることだろう。だから今後も私と坂東代表は今までと同様に、定期的に連絡を取り合い、互いの状況を交換し、その状況に対して分析しようということになっている。確実に言えることは、日独の絆は今後ともしっかりと継続され、将来を見据えているということだ。私は将来に希望を持っている。坂東代表からも、新DTMへの心暖かい応援メッセージを頂いている。

──新型コロナウイルスによる経済への打撃もアウディのDTM撤退に繋がったと言われていますが、その裏であったあなたや坂東代表の葛藤はどんなものだったのでしょうか?
GB:
特に昨年は坂東代表と、日本のメーカーがDTMに参戦し、その逆にアウディとBMWがスーパーGT GT500クラスに参戦するという今後の構想について数多くの話し合いをもってきたが、残念ながら実現しなかった。アウディとBMWは各1チームずつスーパーGTに送り出すという準備は整っていたのだが、日本側からは2メーカーからゴーサインが出なかった。その後アウディはDTMから完全撤退すると言い出し、我々は大きな混乱に巻き込まれたし、誰もがそのアウディの表明に対して理解に苦しんだ。本当の意味での『日独交流』の幕開け直前での崩壊に、誰もが大いに失望した。今となってはもうすべてが“過去”となり、後戻りはできないことだけれどね。

──ドイツメーカーが抜けるかたちになったクラス1ですが、スーパーGTに望むことは?
GB:
トップドライバーとトップクラスのマシンによる世界最高峰のハコ車のレースだと自信をもって言えるカテゴリーだ。今後も可能な限りクラス1を継続し、クラス1のスーパーGTの素晴らしさと魅力を世界へ発信し続けて欲しい。

──ドイツ2メーカーのクラス1マシンは、各メーカーがミュージアムの展示用やデモカーとして数台を保管すると言われていますが、その他はアウディ、BMWともに車両を売りに出す予定をしています。例えば、日本のプライベーターがそれを購入してスーパーGTに参戦することは可能でしょうか?
GB:
もちろん可能だ。日本独自のレギュレーションに多少変更しなければならない部分もあるが、それ以外はアウディやBMWでGT500に参戦することは十分に可能だ。

ホッケンハイムで幕を閉じたクラス1規定のDTMドイツ・ツーリングカー選手権
ホッケンハイムで幕を閉じたクラス1規定のDTMドイツ・ツーリングカー選手権

■2021年、2022年はモータースポーツにとって試練の時に

──来年からの新生DTMについて教えてください。
GB:
ITRでは、来季はGT3カーと、そのレギュレーションを下にレースを開催するという選択をすることになった。クラス1に残ったメーカーはBMWのみとなり、実質的に1メーカーでは開催が不可能となったが、GT3カーにスイッチすることで、さまざまなメーカーのマシンが参戦することが期待でき、多くのブランドで賑わいアクションを繰り広げる白熱したモータースポーツでファンを熱狂させられるのではないかと思っている。その一方で、私はクラス1をまったくシャットアウトするのではなく、継続してその動向を継続してチェックするつもりだ。3メーカーが協力し合い運営できている日本のスーパーGTをとてもうらやましく思っている。

──GT3カーでの新生DTMとなりますが、GT3といえばジェンソン・バトンが自身のチームを率いてブリティッシュGTにマクラーレン720Sの二台体制でデビューしましたね。昨年のホッケンハイムの交流戦時には、彼にDTM参戦を熱心に勧めていたようですが、GT3でのDTMにバトンのチームの参戦も勧誘されたのでしょうか?
GB:
彼がGT3レースにチーム代表、ドライバーとして参戦することは本人から聞いていたし、DTMにも参戦してくれることを期待したけどね。彼の場合は、レースよりも女のコを追いかけるというテーマの方がまだまだ重要なんじゃないかな(笑)。彼と話すと、今でもレースのことよりも女性の話題ばかりだ。彼が今後どうなるかって? 女性への興味が薄れるまではなかなか難しいんじゃないかな(笑)。

──ITR代表として、現在置かれているモータースポーツ界の世界の実情を教えてください。
GB:
世界中を襲った新型コロナウイルスによりモータースポーツ界は多大な影響を受け、どのメーカーもモータースポーツへ割くバジェットを大幅に削り、来年も非常に厳しい状況下に置かれている。坂東代表率いるGTA、私とともに歩むITR、他のプロモーター、各チーム、誰にとっても2021年、2022年はさらにモータースポーツにとって試練の時になってしまうだろうね。

 世界のモータースポーツがふたたび活性化するには、根底にある自動車産業の経済基盤が復旧し、安定しないことには始まらない。新型コロナウイルスの経済的なダメージだけでなく、電動化戦略等、自動車業界にとっても今は大きな岐路に立たされている。

──最後に、DTMを応援していた多くの日本のファンへのメッセージをお願いします。
GB:
スーパーGTと同様に、多くの日本人のファンがDTMを応援してくれていたことは非常に心強く、嬉しく思っている。私自身がレーシングドライバーだったこともあり、サーキットに足を運び、応援してくれるファンの力はなによりも大切でかけがえのないもので、ドライバーやチームにとって大きな支えとなっている。日本からわざわざドイツのサーキットへ足を運んでくれたファンがいたことも私は知っているよ。これからの新生DTM、そして皆さんの大きな誇りであるスーパーGTを、今後も皆さんの熱意と応援で盛り上げ続けてくれることを心から願っている。

2021年のDTMドイツ・ツーリングカー選手権に向けデモランを行ったGT3カー
2021年のDTMドイツ・ツーリングカー選手権に向けデモランを行ったGT3カー
2020年のチャンピオンとなったレネ・ラストにトロフィーを渡すゲルハルト・ベルガー
2020年のチャンピオンとなったレネ・ラストにトロフィーを渡すゲルハルト・ベルガー